福祉とアート。
その関係性を、キュレーターの視点を通じて見つめる「HEARTS & ARTS」

今回ご紹介するのは、国府田 良子 (こうだ りょうこ)さんの作品です。
キュレーターは小林 瑞恵さん(社会福祉法人愛成会 理事長、アートディレクター、キュレーター)です。

キュレーターより 《小林 瑞恵さん》

国府田 良子 こうだ・りょうこ

1949–2022年 東京都

 

国府田が描き残した作品は、保管されているものだけでも何百枚にのぼります。その量からも、彼女が「絵を描く」という行為に長く熱中していたことがうかがえます。

作品にはいくつかのパターンがあります。なかでも代表的なのが、平仮名の「お」から点を取ったような独特の文字を、繰り返し書き連ねた作品です。文字は、国府田独自のリズムで並び、一見すると雑然としているようでありながら、紙面全体を見ると不思議なまとまりがあります。繰り返しのなかに、彼女ならではの一貫した配列のルールが感じられます。

 

 

この文字は、幼い頃、家族が国府田に自分の名前や数字を書けるよう教えていたことと関係していると考えられています。名前に「お」は含まれていませんが、長年書き続けるなかで、ある文字が変形したり組み合わさったりして、この形にたどり着いたのかもしれません。「こうだりょうこ」の「よ」が変化したものではないか、という見方もあります。

作品によっては、この文字に色を組み合わせたものや、文字を使わず、色だけを独自の配列で構成したものもあります。

 

 

国府田は幼い頃から耳が不自由で、音をほとんど聞くことができませんでした。30代前半から福祉施設で暮らし、日中活動のなかで絵を描くようになりました。文字や色を繰り返し、並べていくその表現は、長い時間をかけて国府田自身のものとして形づくられていきました。その後、視力の低下に伴い、晩年は絵を描くことから離れていました。


プロフィール

小林 瑞恵(こばやし・みずえ)
社会福祉法人愛成会 理事長、アートディレクター、キュレーター。アール・ブリュット関連の展覧会をフランスやイギリス、オランダ等の海外や日本国内にて数多く手がける。2004年に障害の有無、年齢などに関わらず誰でも参加できる創作活動の場 「アトリエpangaea」(東京都)を立ち上げる。近年はアートや音楽、ダンスも入れたインクルーシブなワークショップを企画、開催している。2010年から東京・中野区で毎年開催されている「NAKANO街中まるごと美術館」の立ち上げから、現在も企画・運営等に携わる。


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