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今回ご紹介するのは、「らいと」(大阪・吹田市)の竹入 みさきさんの作品です。
キュレーターは中津川 浩章さん(画家、美術家、アートディレクター)です。

作者紹介……竹入 みさき(たけいり みさき)

初めに、竹入さんの所属する「らいと」のスタッフ・能見さんからのメッセージをご紹介します。

現在はアート活動を中心にした『アトリエ nire』で制作活動に取り組まれています。
休憩中は窓の外を眺めリラックスして過ごします。
カラスを見て語りかけている姿はスタッフを和ませてくれます。
散歩やおやつ作り、音楽やカラオケが大好きな みさきさん。
制作中は鼻歌交じりで描きます。その姿は彼女の頭や心の中で奏でている音のリズムに合わせて筆を走らせているように感じます。
綺麗な声でリズムをとりながら筆を握っている様子は楽しそうで瞳が輝いています。
これからも自由に楽しみながら、みさきさんらしい表現を継続してもらいたいと思っています。
(らいと 能見)

キュレーターより 《中津川 浩章さん》

竹入 みさき 《かみ》
2026年12月にKITTE大阪で開かれる展覧会「about me 10」。そのキュレーションのため吹田市にある福祉作業所「らいと」を訪ねた。スタジオにいた竹入みさきは、シュレッダーで刻まれた細かい紙くずを集めた上から、手にした豆腐パックに入った絵の具を垂らしては混ぜ黙々と作業していた。

今回紹介するのは《かみ》。重く勢いのある筆から一気に生まれる分厚く力強いかたまりの作品。絵の具が泥のように混濁して現れる美しいグラデーション。ほぼ単色のモノクロームのように見えるが、赤、青、紫、白などいくつもの色が重なることで複雑な黒を生成している。絵の具に塗り込められた異素材が画面に有機的な物質感を生んでいる。《かみ》の製作期間は1週間。ほかに赤、ピンク、ブルーのシリーズもある。

 

一連の作品を見たとき、“内臓の塊”をイメージした。フランスの思想家ジュリア・クリステヴァが唱えたアブジェクションという言葉が真っ先に浮かんだ。生々しさ、不気味さ、何かわからない不定形なものに対する不安感のようなもの。人間の内部にはそういった感覚が根源的に在る。内在するその感覚をより直接的に呼び覚ます表現だと感じた。

竹入は知的障害と自閉症という特性がある。支援学校時代は新しいことが苦手で拒否することが多く、はさみも使えなかったらしい。らいとの生活介護「はるにれ」に来てから、まわりに影響を受けて表現活動を始めた。色鉛筆、マッキーから始まって、コラージュの手法を取り入れ、そして絵の具を使うようになった。色を選ぶときは目の前に並べられた絵の具の中から自分で触ってこれと決める。絵の具のフタはしっかり閉めないと気がすまない。
ビーズや毛糸、織り糸、シュレッダーされた紙、発泡スチロール、梱包材のプチプチなど素材はいろいろ。コラージュして、混ぜ込んで、その上から描く。そうなるとより強度のある支持体がいいだろうということで今はキャンバスを使っている。はじめは作品の下に敷いていた新聞紙だったが、たまたまよれて絡まったのをそのままペイントするようになり、いまでは意図的に画面の中に入れ込んでいる。

 

竹入は混ぜることが好きだ。おやつ作りの時も混ぜることに集中する。障害がある人たちの表現は、好きなこと興味があることが表現の方法に直接つながっていることが多い。絵の具を混ぜる行為も、お菓子の生地を混ぜる行為も、本人にとってはそれほど大きな違いはないのかもしれない。日常とつながりながら表現は生まれていく。

 

【 おしらせ 】

キュレーターの中津川浩章さんが、『表現が生まれる アートと障害の現場から』(中津川浩章 著)の中で、これまで「HEARTS & ARTS」でご紹介いただいた作家の方々について解説されています。
障害者アートに長くかかわり続けてきた美術家として表現を読み解き、エッセイの「表現の革命をめざして」のパートでは、紹介するアーティストを選定する基準やキュレーションにあたっての作家へのアプローチの仕方などについても触れられています。


プロフィール

中津川 浩章(なかつがわ・ひろあき)

記憶・痕跡・欠損をテーマに自ら多くの作品を制作し国内外で個展やライブペインティングを行う一方、アートディレクターとして障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会の企画・プロデュース、キュレ―ション、ワークショップを手がける。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもから大人まであらゆる人を対象にアートワークショップや講演活動を全国で行っている。


これまでのHEARTS & ARTSは、こちらのページでご覧いただけます。

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