今回ご紹介するのは、アール・ド・ヴィーヴル(神奈川・小田原市)の奥津 大希さんの作品です。
キュレーターは中津川 浩章さん(画家、美術家、アートディレクター)です。

作者紹介……奥津 大希(おくつ・だいき)さん

創作するときには、いつも頭の中にBGMがありまして、そのBGMに合わせるように描きます。
好きなアーティストは、オレンジレンジや木村カエラですが、最近は、マキシマムザホルモンが流れています。

キュレーターより 《中津川 浩章さん》

奥津大希「クリエイティブ魂に火をつける」

「クリエイティブ魂に火をつける」はパッと見た時、まず色数の多さと細かい色面分割に目が眩む。無数の色の断片がモザイクのように組み合わさって、なにが描いてあるのかすぐには判別できない。だがよく目を凝らして見れば、中央をダイナミックに貫く「道」がある。看板のようなものも見えてくる。そこに「街」が描かれていることに気づく。日常世界からクリエイティブの世界に飛び込んだ瞬間、見えている景色が一気に変わる、そんな感覚体験が伝わってくるようだ。

画面に集中する奥津の姿はまさに一心不乱。握った色鉛筆を小刻みに動かし線を重ねていく。すぐに短くなってしまう芯を手動の鉛筆削りでぐるぐる削っては、また描く。線の重なりで出来上がった“面”は、ただ単にニュートラルに塗られた面とはまるでちがう質感をみせる。深い時間の集積に作家の想いも層になって重なっている。

保育園の頃からクレヨンの感触が苦手だった奥津が、好んで絵を描くようになったのは“色鉛筆”を手にしてからのことだ。高機能自閉症の特性で一つのことに集中しすぎてしまったり、人と同じ動きができなくて自分勝手に動いてしまいがちで、小学校時代は友だちができなかった。自分で作ったキャラクターを相手に一人遊びをしていたという。その頃の絵は狭くて小さな画面に小さな小さな丸ばかりを描いたもので、見るからに縮こまっていたそうだ。

今の奥津の制作スタイルは細密な色鉛筆だけではない。「トカゲ」のように形象を的確にとらえ絵具で彩色した作品、ポスカマーカーを使ったグラフィックでシャープな作品、イラストレーション的な作品もある。奥津の手にかかるとアニメやゲームのキャラクターも、もはや原型がわからないくらいにまったく別のイメージに変わってしまう。その時の気分や考えで描き分けているというが、画材も手法もほんとうに多彩で驚かされる。


プロフィール

中津川 浩章(なかつがわ・ひろあき)

記憶・痕跡・欠損をテーマに自ら多くの作品を制作し国内外で個展やライブペインティングを行う一方、アートディレクターとして障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会の企画・プロデュース、キュレ―ション、ワークショップを手がける。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもから大人まであらゆる人を対象にアートワークショップや講演活動を全国で行っている。


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