2023年1月23日に、香川県高松市立木太(きた)小学校で「交流教室パラリンピアンがやってきた!」を開催しました。競技は、視覚障害のある人たちがプレーする「ブラインドサッカー」。ゲストには、元日本代表の 葭原 滋男(よしはら・しげお)選手をお招きしました。葭原さんのチームメイトで、視覚障害のない晴眼者(せいがんしゃ)の田中 茂樹選手と吉村 幸恵選手もサポートに来てくれました。

ブラインドサッカーは、転がると音が出る特殊なボールを使って、アイマスクをした選手たちが、サッカーと同じようにプレーするスポーツ。葭原選手は、「ボールの音」や「仲間が出す声」を頼りに、パスやドリブル、シュートを決めていきます。

葭原選手は、2002年にブラインドサッカーに出会うまで、陸上や自転車競技でパラリンピックに出場し、金メダルをはじめ4つのメダルを獲得しました。普段は、白杖(はくじょう)を使って歩いたり、晴眼者に移動をサポートしてもらったりしています。

葭原選手は、子どもたちにこう問いかけました。
「よっしーは、病気でだんだん目が見えなくなってきたときに、ぼくは障害者になるんだなと思いました。みんなは、そんなよっしーのことどう思う?」。子どもたちは、「かわいそうだと思う…」と答えました。
そこで葭原選手は、ある映像を見てもらうことにしました。走り高跳びで181センチメートルの日本新記録を出し、喜ぶ葭原選手。パラリンピックの自転車競技の決勝で、大差をつけられたライバルを必死に追いかけ、ゴール寸前で大逆転!金メダルを獲得した葭原選手。その姿を見た子どもたちからは、歓声と拍手が沸き起こりました。

葭原選手が「どう?かわいそうだと思った?」と尋ねると、子どもたちは「かっこよかった!」「とっても楽しそうだった!」と目を輝かせました。
「よっしーは、『障害者はかわいそう』というイメージを壊したいなと思って、障害者スポーツの世界に飛び込みました。見えないけど、サーフィンもやるし、スキーもやります。面白そうだなと思ったらチャレンジ!やってみてダメだったら、次はどうしたらできるかな?と考えます。すると、失敗するのがだんだん楽しくなってきます。だから、みんなにはいっぱい失敗してほしいです。どうしたらできるかな?と考えることを楽しんでほしいなと思います」
冬の体育館での開催でしたが、葭原選手のわくわくするお話に、こころがポカポカと温まるようなひと時になりました。

続いて、子どもたちのブラインドサッカー体験が始まりました。
ブラインドサッカーは、視覚障害のある人だけではなく、実は晴眼者も選手として参加します。コートの外から、選手にボールやゴールの位置などを「声」で伝える役割があるのです。「コミュニケーションの力」がとても重要なスポーツです。

早速、アイマスクをつけて体験スタート!見えない状態で歩いたり、シュートをしたりします。ゴールの先にいる仲間が、進む方向やボールの位置を教えてくれるのですが…。見えなくなると一気に不安になり、位置や方向がわからなくなります。声をかけるほうも、自分にとっての「右」は、相手にとっての「左」になったりと、指示に戸惑います。

葭原(よしはら)選手はこうアドバイスしました。
「不安をなくす方法は、『声かけ』です。例えば、声をかけずシーン…としていたら、選手はどう感じるかな?『このままでいいの?』と不安になるよね。例えば『いいよ~そのまんま~』と声をかけてもらったら、安心するし嬉しいよね。一番大事なことは、『相手の気持ちになって伝えること』です。そして、アイマスクをしている人は、自分から『こっちで大丈夫?』って聞いてもいいんだよ。ブラインドサッカーで何より大切なのは、仲間の声を聞いて、信頼し、協力することです」

最後は、班対抗でシュートを決めた本数を競うゲーム!「どんな声をかけたらいいか?」作戦会議をしてからスタートです。「ストップ!一歩左にいって」と声をかけたり、「ゴールはこっち」とカラーコーンや手をたたいて知らせたりするなど、伝え方がぐんぐん上手になっていきました。班対抗戦は大盛り上がり。7本のシュートを決めたチームが優勝しました。

葭原選手は、最後にこう締めくくりました。
「今日は『相手の立場になって声をかける』ということを体験しました。これを、ぜひ生活の中でも生かしてほしいなと思います。白杖をもって歩いている人は、交差点の信号が見えない人も多くいます。見かけた時はぜひ声をかけてあげてください。それに、困っている友達がいた時も同じことです。『なんて声をかけてあげたらいいかな…?』と相手の気持ちになって考えて、声をかけてほしい。よっしーも、練習がつらくてやめたいと思った時に、仲間から『一緒にがんばろう』と声をかけてもらって、背中を押されてきました。みんなも、お互いにそういう声がかけあえる人になってほしいと思います」

ブラインドサッカーを通じて、相手のことを深く考える体験ができた子どもたち。いろいろな人と出会っていく将来が楽しみです。ボランティアでお手伝いいただいた保護者のみなさまも、本当にありがとうございました!

NHK HEARTSが主催する「交流教室 パラリンピアンがやってきた!」は、3月頃に、来年度(2023年度)の実施小学校の募集を開始する予定です。みなさんのお近くの小学校にもお邪魔するかもしれません。お楽しみに!

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