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 東京・目黒区の「多言語絵本の会RAINBOW」は、日本の絵本を様々な外国語に翻訳・録音してネットで公開しているグループです。翻訳している言語は、英語や中国語をはじめ、スペイン語やインドネシア語、フィリピンのタガログ語など20にのぼります。第28回「わかば基金」の支援を受けて、ポータブル録音機とデジタル録音図書の制作ソフトを購入しました。グループの皆さんは、「録音と図書制作の効率が上がりました。これからもっとたくさんの多言語絵本を作っていきたい」と意気込んでいます。

ルーツのある国の言葉を大切にしてほしい

hp_ishihara 「多言語絵本の会RAINBOW」は2006年から活動しているグループです。始めたのは現在副代表を務める石原弘子さんです。石原さんは海外から日本に来た人々に、日本語を教えるボランティアをしています。ある日、教室に通うフィリピンから来た女性に、「日本では私の国の言葉は必要ない。子どもに教える必要もない」と言われたそうです。母語を大切にしたいという石原さんはショックだったと言います。
 「日本で暮らす外国にルーツを持つ人たち、特に子どもたちは日本語だけの教育になりがちです。親も母語で話さずに、日本語だけで会話している家庭も多いです。日本にいることで自分にルーツのある国の言語を失ってしまうのは、さみしく悲しいことです」。

DSC_0046 そこで石原さんは、海外にルーツを持つ親たちが母語を子どもに伝える場が必要だと考え、教室に通う人たちの協力を得て、多言語での絵本の読み聞かせを始めました。紙芝居のように音声も付けて動画でWEBに公開もするようにしました。

聞ける・読める—分かりやすいマルチメディアデイジー

 絵本の動画は動画投稿サイトで公開していましたが、石原さんは絵に音声が付くだけのものに物足りなさを感じていました。そのときに知ったのがマルチメディアデイジーと呼ばれる方法でした。マルチメディアデイジーとは、デジタル化した印刷物の文字や画像を見られるだけでなく、音声でも聞くことができます。しかも音声で読まれている部分に色が付くなどして分かりやすくなります。そのため発達障害や視覚障害などで印刷物を読むことが困難な人のための支援ツールとして、注目されていました。誰にでも分かりやすいと感じた石原さんは、マルチメディアデイジーを絵本に取り入れたのです。 hp_デイジー

 マルチメディアデイジーの絵本が知られるようになると、石原さんのもとには、「とても分かりやすくて面白い」、「子どもにも親しみやすい」といった声が届くようになったそうです。また、絵本の翻訳や録音に協力したいと手を挙げてくれる諸外国の人々が増えていったそうです。もっと多くの作品を様々な言語で公開したいと考えていた石原さんにとっても、うれしい反響でした。 しかし、録音の機材や場所が限られていることやマルチメディアデイジーにするための作業が簡単ではなく、1つの作品を作るにも短いものでも数日かかってしまうため、どうしたものかと思い悩んでいました。そんなときに「わかば基金」を知り申請、ポータブル録音機とマルチメディアデイジー制作ソフトなどの支援が決まりました。

たくさんの言語で多文化共生を

 これまで録音作業は図書館の録音専用室でしかできませんでしたが、ポータブル録音機があるために今では防音されている部屋であれば、いつでも録音できるようになりました。また、マルチメディアデイジー制作ソフトで作業することで、これまで数日かかっていたことが1日でできるようになったそうです。
 いま多言語絵本の会RAINBOWのホームページには、20言語17種類の絵本が紹介されています。
 石原さんは力を込めて言います。「多言語絵本のニーズはもっと多くあると考えています。でも、声をあげられない人が多いのが実情です。必要な人に届けるにはもっと私たちにも援助が欲しいのが正直なところですが、作業環境は整い始めています。多文化共生のためにも、もっとたくさんの言語で作品を作って公開することで、声をあげられない人に届けていきたいです」。
(2017 年1月4日記)

 「多言語絵本の会RAINBOW」は、第28回(平成28年度)支援金部門の支援グループです。連絡先や活動内容については、多言語絵本の会RAINBOWのホームページをご覧ください。

 「多言語絵本の会RAINBOW」が制作したマルチメディアデイジー絵本は(公財)日本障害者リハビリテーション協会が提供しているノーマネットからダウンロードできます。