今回ご紹介するのは、伊藤 大貴さん、青木 正臣さんの作品です。

キュレーターは、福祉実験ユニット・ヘラルボニーの松田 文登さんです。

作者……伊藤 大貴さん、青木 正臣さん

 

キュレーターより《松田 文登さん》

迸る色彩が、鮮烈な自然美を生み出す。

伊藤大貴「月光」・青木正臣「海の中」

真っ白なギャラリーに突如現れる鮮やかで雄大な富士山。活きいきと描かれる魚の数々。
それらの絵を見ていると、私たちの「生きる力」を思い出させてくれる。

岩手県盛岡市に居を構え、障害のある作家の才能を披露するアートギャラリー「HERALBONY GALLERY(ヘラルボニーギャラリー)」。新年最初の原画展は、二人の作家の感性が迸り、呼応し合っている。それぞれ「富士山」と「魚」に拘って描き続けている伊藤 大貴さんと青木 正臣さん(埼玉県川越市「NPO法人あいアイ」)のお二人だ。

互いの表現に触発されながら、鮮やかに描き続ける富士山と魚。
今回は2人の作家の表現の特色や、そのルーツを辿りたい。

「HERALBONY GALLERY」での展示風景

幼い頃から富士山に親しみ続けてきた伊藤さんは、富士山を青い三角と白いギザギザというステレオタイプな姿で描くことはない。むしろ世界を見通すためのテレスコープとして富士山を扱い、季節や気候ごとに変化する姿を捉えている。
冒頭の「月光」という作品は、亡くなられた伊藤さんのお父さんを「月」に、伊藤さん自身を「富士山」として描いている。ハッとするほど鮮烈な色遣いながら、どこか静謐であたたかさを胸に宿してくれる。月光は湖に反射して、上からも下からも富士山を柔らかく照らし続けている。

「好奇心旺盛な青木さんは、魚を五感を活用して観察する。複雑な形態の素早い描写を得意としており、説得力の高い画面作りが特徴。一筆書きで描ききり、一度色を塗りだしたら絵を書き終わるまで夢中になる。鮮やかな色彩は、残酷で美しい生命の輝きを肯定的に示しているようにも思える。
一番最初に書いたのが魚だったという青木さん。冒頭の作品「海の中」は、まさに極彩色の海として、螺鈿のように色彩が輝いている。海中の様子をきちんと説明しつつ、絵具の鮮やかさとテクスチャが極めて美しい。真ん中の大きい魚が小さい魚を睨め付けているのは、獲物として狙い定めているからだろうか。一秒たりとも同じ瞬間のない、激しい水の流れの中で、生命の坩堝が刹那的にきらめいている。

「HERALBONY GALLERY」第6回企画展「伊藤大貴/青木正臣展」は、今月2月13日まで開催している。

背中を押してくれるような縁起の良い作品群で、2022年の旅路をはじめよう。

企画展概要はこちらをご覧ください。 クリックするとこのサイトから離れます。


プロフィール

松田 文登(まつだ・ふみと)

株式会社ヘラルボニー代表取締役副社長。チーフ・オペレーティング・オフィサー。大手ゼネコンで被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共に、へラルボニー設立。自社事業の実行計画及び営業を統括するヘラルボニーのマネージメント担当。岩手在住。双子の兄。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。日本オープンイノベーション大賞「環境大臣賞」受賞。

 


これまでのHEARTS & ARTSは、こちらのページでご覧いただけます。

関連リンク

  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
ページトップへ