今回ご紹介するのは、「アール・ド・ヴィーヴル」(神奈川・小田原市)の鈴木 悠太さんの作品です。
キュレーターは中津川 浩章さん(画家、美術家、アートディレクター)です。

作者紹介……鈴木 悠太(すずき ゆうた)

鈴木悠太さんにアール・ド・ヴィーヴルの支援員の方が質問してくださいました。


Q.どうして合体させようと思った?
A.「カワイイ」と感じたキャラクターを合体したら、もっと可愛くなったので描いています。
Q.今の楽しみは?
A.アール・ド・ヴィーヴルのバス旅行! 6月に美術館へ行く予定です。

キュレーターより 《中津川 浩章さん》

鈴木 悠太《合体絵》
小田原にある施設アール・ド・ヴィーヴルで、いつも同じ席に座って一心不乱に描いているメンバーがいる。のぞいてみると、描いているのは、どれも“合体”キャラクターだ。「サイ+にわとり」「桃+豚」「エビフライ+娘」「妖怪+歯」「ネズミ+カフェオレ」・・・ユニークな組み合わせの合体キャラクターたちが、標本のように一つ一つ命名され、画面を埋め尽くす。まさしく曼荼羅のような世界。それが今回紹介する鈴木悠太の《合体絵》だ。

 

 

鈴木は週5日アール・ド・ヴィーヴルに通い、朝10時から3時まで毎日5時間、合体絵を描く。半切りサイズなら毎日描いて約1か月かかる。画材は自分で決める。鉛筆で下書きをして、色鉛筆で色塗り。輪郭線を黒の油性ペンで塗ることもある。新しい画材には興味を示さない。毎日描いてもまったく飽きないそうだ。

2026年3月に開催された、小田原市三の丸ホール展示室での「響きあうアート」展。その公式コラボ企画として「静かな関与 — Invisible Narratives」の特別展示があった。現代アーティストのタカクラカズキさんのゲーム作品とのコラボレーションが実現し、メインキャラクターに鈴木の合体絵が使われた。タカクラカズキさんは、考え方やコンセプトなど自分と変わらない、自分の発想そのものだ、共感しかないと語っていた。

鈴木悠太は自閉症という特性がある。言葉のコミュニケーションはオウム返しが多いが、こちらの話すことはしっかり理解している。インターネットでさまざまなところから情報を仕入れ、世界を考えていることがわかる。彼の発想、独特の世界観が反映した合体絵には、ありとあらゆるものたちが登場する。どうぶつ、虫、鳥、木、やさい、くだもの、キャラメル、ゲーム機や車。人間、妖怪、ポケモン、初音ミク(ライブに行ったそうだ)。その組み合わせ方が、型破りというか、自由奔放だ。モチーフは正面を向いた構図で、なぜかだいたい女の子は足の裏を見せて座っている。おしり+ねずみ+車の合体名が「ケツネズミカー」、冷蔵庫+ニワトリは「レーコッコ」、かば+カートは「ヒポポタマスカート」。まじめなのかとぼけているのかわからない。どうして合体絵を描くのかと尋ねると、「楽しいから」と答える。いま一番のお気に入りは、牛とナスの合体「モーナス」だ。

動物と人間が合体したハイブリットのイメージは、古代エジプトやパプアニューギニア、アフリカ、そして中南米の仮面など、世界各地に見られる。プリミティブアートにもよく登場する。神話のなかの神様や魔物や超越的なもの、そうしたハイブリットなイメージが、現代ではゲームやアニメのキャラクターとなって、絶大な人気がある。その影響力は大きい。障害がある人たちの表現にも現れている。現代人の想像力を刺激し、まさしく先祖返りのように、ハイブリッドのキャラクターたちが生まれていることは、とても興味深い。

 


プロフィール

中津川 浩章(なかつがわ・ひろあき)

記憶・痕跡・欠損をテーマに自ら多くの作品を制作し国内外で個展やライブペインティングを行う一方、アートディレクターとして障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会の企画・プロデュース、キュレ―ション、ワークショップを手がける。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもから大人まであらゆる人を対象にアートワークショップや講演活動を全国で行っている。


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