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今回ご紹介するのは、重症心身障害児施設「四天王寺和らぎ苑」(大阪・富田林市)の利用者の皆さんをご紹介します。
キュレーターは中津川 浩章さん(画家、美術家、アートディレクター)です。

作者紹介……「四天王寺和らぎ苑」の表現者たち

障がいの有無に関わらず、すべての人に表現活動が必要だと考えています。文字も絵画もすべては1本の線から始まります。線を引かせてあげることができれば、見える形で紙に留めることができれば、その人の思いや考えをに近づくことができるのではないか。その様に考え、これまで18年間重症心身障がい児・者の方々への表現活動を実践してきました。
アート作品を産み出すと言うよりもあらゆる手段を使って、生きている痕跡を残していると言った方が近いかもしれません。描かれたものの前に立ち鑑賞することで、彼らの生きようとする力を全身で感じることができます。
一見、線や点があるだけの様に見えるかもしれません。しかし生み出されたものは彼らが全力で表現したものになります。彼らが表現したものは障がいのない方々が表現したものに比べて劣っていると言えるでしょうか。彼らの表現したものに障がいのない方々が表現したものと同じ価値や意味を見出だすことができれば、彼らを取り巻く世界は大きく変わっていくはずです。彼らの表現活動を身体・環境・活動などの面からサポートすることがリハビリテーションに携わる私達の使命だと思っています。これからも想像もしないような作品に出会えることを楽しみに表現活動を続けていけたらと思います。
(作業療法士・木村 基)

キュレーターより 《中津川 浩章さん》

「四天王寺和らぎ苑」の表現者たち
大阪の富田林市にある「四天王寺和らぎ苑」では、医療ケアが必要な方も含む最重度の障害がある人たちが、ストレッチャーや車いすに乗って絵を描いている。そのうちの一人は水頭症の方で、ベッドに横たわったまま、ベルトで固定した腕を上から小さなクレーンで吊って描く。驚きの光景だ。動いているのが分からないほどゆっくりと筆が動く。40分かけて2cmの線を描くのだ。画面や筆先を見ようとして、ほんのわずかにその方の眼球が動く。それをきっかけに手が動き、療法士の方が「筆先が画面についた!」と伝えると、周りのスタッフからおもわず小さな拍手が起こる。横たわった顔には赤みが差して汗がにじんでいるのが分かる。
たった一本の線であっても、なにかを自分の外に向かって表出しようとすること、それこそが人間が表現することの原点だ。それが人間にとってどれほど大切なことであるかを分かって、それを信じてスタッフは全面的にサポートしている。何がそこで起こっているのか。出来上がった作品だけを見ていては伝わらない、“表現”と“福祉”が交差する現場を目の当たりにしていた。

不随意運動がある方は、自分の意志とは関係なく身体が動いてしまうので、なかなか思い通りに手を動かすことができない。筆を持った手を動かそうとして反対の手も同時に動いてしまう。口元や舌にまでぐっと力が入って、顔が紅潮してくる。描きたい、描こうとしている、それがあきらかに伝わってくる。
またある方は、手に筆がつかめるようにスタッフが手作りした自助道具を装着して、仰向けに寝たまま、顔の上に水平にセッティングされた画面に描いていく。“レベッカ”の曲に合わせて激しく身体を動かすと、その動きがそのまま線になり「痕跡」となる。まさに人が表現することの意味と価値の最前線に立ち合うことになる。表現する人とのあいだに言葉でのやり取りは一切ない。非言語のコミュニケーションが広がっていく特別な時間。“できること”と“できないこと”がぶつかり合いスパークして現れるタッチや線や絵具の重なりは、独特の緊張感をもって見る側に迫ってくる。余白が多いにもかかわらずそこに足りないものがない、付け足すものがないという感覚。なぜだか分からないが重度障害であればあるほどその「痕跡」は奇跡のように美しい。

言葉が無くても、身体が動かなくても、寝ているだけでも、表情が無くても、世界を感じている。生きている。わかっている。たんに言葉のアウトプットができない、表情やジェスチャーで示すことができないだけ。じつは多くのことを理解している。そして誰かがドアを開けてくれるのを待っている。彼や彼女の感じている世界がもっと見えるようになる日がくるよう願っている。

展覧会のお知らせ

「四天王寺和らぎ苑」の表現者たちの作品が出展されます。

展覧会「about me 7 ~“わたし”を知って~非言語のモノローグ」
日時:2023年12月8日(金)~12日(火)10:30~20:30
※最終日のみ16:00まで
会場:LUCUA 1100 4F「sPACE」(大阪市北区梅田3-1-3/JR大阪駅中央口徒歩1分)
入場料:無料


プロフィール

中津川 浩章(なかつがわ・ひろあき)

記憶・痕跡・欠損をテーマに自ら多くの作品を制作し国内外で個展やライブペインティングを行う一方、アートディレクターとして障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会の企画・プロデュース、キュレ―ション、ワークショップを手がける。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもから大人まであらゆる人を対象にアートワークショップや講演活動を全国で行っている。

ただいま、中津川さんがプログラムディレクターを務める「第25回静岡県障害者芸術祭」が開催中です。
障害当事者が創作した文化芸術作品の展示や、交流イベントなどが行われます。開催期日や会場など詳しいことは、「第25回静岡県障害者芸術祭」のホームページ(NHK HEARTSのページを離れます)でご確認ください。

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