「子どもの貧困」を取り上げた今回のハートカフェの会場は、渋谷駅直結のヒカリエ。参加者が足を運びやすくなればという初めての試みです。行政関係者や子育て支援団体の方、教員など、さまざまな立場の方が参加しました。

第1回・基礎編(1月26日)
第1部:講演「子どもの貧困とは?その実態と支援」
第2部:報告「各地の現状と取り組み」

第1部講師:幸重 忠孝さん(幸重社会福祉士事務所 代表)
第2部講師:小河 光治さん(子どもの貧困対策センターあすのば 代表理事)

初回の基礎編は、「子どもの貧困」の実態と取り組みについて、2人の講師にお話いただきました。
第1部の講師の幸重 忠孝さんが搭乗していた飛行機の到着が遅れた関係で、急きょ第2部の小河 光治さんに順番を替わっていただいて進行しました。

小河 光治さんが代表をつとめる「子どもの貧困対策センターあすのば」は、子どもの貧困の調査研究や政策提言、各地の支援団体への支援、貧困家庭への直接支援の3つの活動を行っています。直接支援として昨年、「入学・新生活応援給付金」を募集したところ、全国各地から多くの申請がありました。「申請に必要な非課税証明書の発行手数料の600円が払えないので給料日まで待ってほしい」というケースがあるなど、生活保護を受けずに生活する母子世帯の厳しい状況が見えたと小河さんは言います。
貧困とは貧しいだけでなく困りごとも多い状態で、物心両面から支える必要があります。「あすのば」では子どもを対象に合宿やミーティングも行っていますが、そこに参加した子どもたちが自分たちにできることをしようと募金活動をしたり自分の体験を話すなど、子どもたち自身が活動し支え合うようになっています。また、子どもを取り巻く支援を結び付けていく取り組みを全国各地で展開し、地域の声や意見を吸い上げているそうです。
cafe170126-2支援が必要な家庭を選別することは難しく、また、選別することが子どもの選別・差別につながってはならないと小河さんは強調します。子どもの貧困をなくすには、貧困家庭をひっくるめて社会全体で子どもを育むという視点での社会づくりが必要だと話されました。

もうお一人の講師、幸重社会福祉士事務所代表の幸重 忠孝さんは、京都にあるNPO「山科醍醐こどものひろば」の理事長をつとめていた頃から、困りごとを抱える子どもの支援にあたってきました。
現在、子どものおよそ6人に1人が貧困状態(相対的貧困)にあると言われています。どういう状況にある子どもたちなのか、ピラミッド型の階層を使いながら説明してくださいました。知られたらいじめられたりするからと、苦しい状況にも関わらず生活保護を受給せずになんとか生活する家庭があります。そして、親が収入を増やそうと夜間や休日に働くために幼いきょうだいの面倒をみたり、一人で夜を過ごさざるを得ない子どもや、経済的に厳しい家庭を気遣って部活や習い事を諦める子どもがいます。そうした子どもがどのような気持ちでいるのか、幸重さんがこれまで出会った子どもたちのエピソードをもとに子どもの視点で作られた物語が紹介されると、目頭を押さえる参加者の姿も見られました。
cafe170126-1-1cafe170126-1-2幸重さんは現在、少人数の子どもを対象に夜間の生活支援をされています。夕食を食べたりお風呂に入ったり…ごく日常的なことですが、一緒に過ごすことでその子が抱える課題が見えてきたり、ポツリポツリと自分のしんどい気持ちを訴えるようになるのだそうです。子どもたちが求めているのは「ふつうのこと」。ふつうの支援は地域にいる「ふつうの人」がやるのがいちばん、自分にできる支援を見つけて関わってほしいと参加者に語りかけていました。

基礎編に参加した人からは、
「普通に暮らしている中で見えてこない子どもに何ができるのか?考えるきっかけになった」「テレビなどの情報を間違えてとらえている部分がたくさんあった」といった感想が寄せられました。

第2回・実践編(1月29日)
「食の支援が目的ではない
~いま改めて見直す こども食堂・本当の意義~」

講師 近藤博子さん(気まぐれ八百屋だんだん店主)

実践編では、「子どもの貧困」対策として考えられている「こども食堂」について、名付け親といわれる近藤博子さんに、活動の意義や名前に込めた思いをお話いただきました。

HP_0129_top「だんだん」の「こども食堂」は毎週木曜日の午後5時30分から8時まで開かれています。子どもは100円、大人は500円で、その日にある新鮮な野菜や食材で作られた夕食をおなかいっぱい食べられます。訪れる人は小・中学生や高校生だけでなく、保育園帰りの親子や一人暮らしの人、高齢者や仕事帰りのサラリーマンなど様々なのだそうです。

「こども食堂」と聞くと“貧困の子ども”に食事を提供するイメージを抱く人が多いと思いますが、近藤さんは名前に込めた思いをこう語ります。「こどもが一人でも安心して入れて、割烹着を着たおばちゃんが温かく迎えてくれるような食堂であり居場所。もちろん大人でも誰でも入れますという思いなんです」。

HP_だんだん1月予定また、「こども食堂」はスタートラインであり、決してゴールではないとも強調しました。さまざまな人が集まってくることで、子どもや家庭のことだけでなく、地域や社会の問題が見えてくる場所になっていくといいます。

近藤さんは、「そもそも自らを『貧困です』なんて言ってくる子どもはいないんです。安心できる居場所で信頼関係を築いていく中で、本人の口から出てきたり、見えなかった問題が少しずつ見えてくるんです。そのためにも居場所をつくったら長く続けることが大事。そして、いろいろな人が集まるからこそ横のつながり・広がりができ、問題解決の糸口が見つかるんです」と話されました。

最後に近藤さんから困っている人の力になりたいと考えている方々へのアドバイスとして、「例えば「こども食堂」であれば、料理しなくてもいいんです。割り箸やティッシュを寄付するとか、自分でできる関わりをもつことが大事です。大きな一歩より小さな一歩が大切」と話されました。

この日は近藤さんの他に、「だんだん」とつながったことで活路を見いだせた山本優子さん(仮名)にもお話いただきました。山本さんはシングルマザーですが、病気を抱えたために家に引きこもってしまい、仕事ができない状態になってしまったそうです。生活は困窮し、子どもとはけんかが絶えず関係が悪化。そんなときに近藤さんと知り合い、子ども食堂を手伝うようになったそうです。少しずつ外に出られるようになり、子どもとの関係も良好に。今では週2回喫茶店でアルバイトができるまでになったそうです。

山本さんは、「以前はどこに相談すればいいかまったく分からなかった。だんだんとつながって先が見通せるようになりました。まだまだ苦しんでいるシングルマザーはたくさんいます。地域に小さくても誰もが気軽に集える場所がもっともっとたくさんできてほしい」と訴えました。

参加した人からは、「子ども食堂の目的や続けていくための工夫などとても参考になった」、「もっと気軽にいろんな人が集える居場所をつくろうと、今日決めました」といった感想が寄せられました。