今回ご紹介するのは、福祉事業所「のぞみの家」(東京・東久留米市)の皆さんの作品です。
キュレーターは、福祉実験ユニット・ヘラルボニーの松田 文登さんです。

キュレーターより 《松田 文登さん》

それぞれの異彩、それぞれの四季。
「のぞみの家」の作家たち

これらの作品は、東京都内の「のぞみの家」に在籍する西村 円さん、松本 真由美さん、鈴木 広大さん、杉村 幸さん、宮澤 祥子さんのものだ。彼ら・彼女らが描く抽象的な作品には、四季折々の景色が描かれている。のぞみの家では、季節にちなんだ共通の「テーマ」をもとに「指先」という共通の画材を使って、それぞれの心の中にある「景色」を描いていくのだという。ゆえに、作品の題名が同じでも、描く作家の感性によって色彩や飛沫の風合いが異なり、鑑賞者は十人十色の、一つとして同じではない四季の風景を堪能することができる。舞い散る桜。夜空に飛散する花火の閃光・・・。その永遠に繰り返される一瞬のきらめきが四季の美しさなのだと、のぞみの家の作家たちは教えてくれる。うつろい行く瞬間を捉えるように、作家自らの指先を使って放たれる色の飛沫がはかない。すべての人に四季を感じる心があるのだ。

山々が色づく秋は、そんな季節の移り変わりを強く感じる時季である。
ぜひ、西村さんの「大人な秋」を皮切りに、それぞれの異彩による、それぞれの情景に感じ入ってもらいたい。

「のぞみの家」各作家のプロフィール

西村 円(にしむら まどか)
車椅子から降りて、広々とした空間で自由にめいっぱい描く。手のひらに乗せた絵の具を、全身を使ってキャンバスの上から下まで、いっぱいに使って表現する。出来上がった絵は、力強くダイナミックでもあり、深みのある仕上がりに。完成した絵を誇らしげに発表する時はとても素敵な表情。

鈴木 広大(すずき ひろお)
始まりは、両手に絵の具をたくさん付けること。そしてキャンパスに向かって大きく指を広げて叩くように描いていく。音楽が大好きでリズム良く音楽が聞こえてくると、全身でのりながら描いている様子はまるでドラマーの様。出来上がった絵からは沢山の音が聞こえてきそうだ。

松本 真由美(まつもと まゆみ)
歩くことが大好きで車椅子に座っていても気分が良くなると両足がぴょんぴょんと跳ねる。絵画の時間も歩きながら鈴の音がする筆を持って、叩くように時に撫でるように楽しみながら絵を描いている。踊るように描いている様が松本さんの楽しさを連想させ、弾けるタッチで楽しかった思い出が蘇るよう。

杉村 幸(すぎむら ゆき)
身体を動かすこと、楽しいことが大好き。テーマに沿った景色や音楽を身体で感じてイメージしながら楽しく描いている。絵の具を付けた両手を大きく動かして、力強くキャンバスに叩くように描くが、優しく暖かいタッチの仕上がりになる。出来上がった自分の絵を見てニッコリ微笑む表情がとても印象的。

宮澤 祥子(みやざわ さちこ)
「指絵の具」を両手にたくさんつけてキャンパスを抱えるように描く。突然の音や賑やかな雰囲気を好む宮澤。躍動感がありながらも優しさのあるタッチの中には、入り交じる感情が多くの色彩で表現されている。時間をかけて幾重にも色を重ねて描くことで、絶妙な色の混ざりが生まれる。


プロフィール

松田 文登(まつだ・ふみと)

株式会社ヘラルボニー代表取締役副社長。チーフ・オペレーティング・オフィサー。大手ゼネコンで被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共に、へラルボニー設立。自社事業の実行計画及び営業を統括するヘラルボニーのマネージメント担当。岩手在住。双子の兄。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。日本オープンイノベーション大賞「環境大臣賞」受賞。

 


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