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今回ご紹介するのは、「NPO法人灯心会 スカイハート灯」(岡山・真庭市)の藤原 正一さんの作品です。
キュレーターは中津川 浩章さん(画家、美術家、アートディレクター)です。

作者紹介……藤原 正一(ふじわら・しょういち)さん(1951年~2020年)

藤原正一さんは2007年より「スカイハート灯」に通所され、作業の傍ら創作活動に取り組まれておりました。もともと絵を描くことに興味があったわけではなく、初めは周りのみんなが描いていたから絵を描いていたくらいの動機だったそうです。ただ、“色鉛筆で描くこと”にこだわりがあり、その他の画材はほとんど使用しませんでした。
ここ数年は、岡山県の公募展に向けて1年間をかけて1作品を描いていくスタイルで制作し続けておりました。作品や創作への思いなどを聞いてもあまり語られることはありませんでしたが、少しずつ時間をかけ色を塗り重ねていく様には、強い意志を感じておりました。(支援員・松田圭一)

キュレーターより 《中津川 浩章さん》

藤原正一 「冬の丘」

藤原正一の作品に出会ったのは公募展の審査会場だった。大阪ビッグアイの広い会場には、実物審査のために2000点におよぶ作品が集められ、場内を一周もすると作品たちの放つ強烈なエネルギーにあてられて、なかば酔ったような気分になる。そんなときにふと目に入ってきたのが藤原の絵だった。ひっそりと静かで透明感のあるたたずまい。心地良い澄んだ空気が流れ込んできた。

紙に色鉛筆、単純でシンプルな線。淡く明るいパステルカラーの色調。どちらかと言えば地味でおとなしい部類の絵だ。イエロー、オレンジ、ブラウンといった暖色系の軽やかな色彩のハーモニー、そこにブルーやグリーンの寒色が置かれてリズムを生む。鉛筆のタッチが残らない柔らかいマチエール。タピストリーのような質感。ひとつひとつ形態をつなぎながら広がっていく幾何学模様。パウル・クレーのようにリリカルな抽象性をともなって現れる風景。一見はかなげに見えながらじつは強い絵画である。

高度経済成長期の東京で内装業に就いていた藤原は、精神の病を発症して生まれ故郷に戻り、福祉施設「灯心会」に通うようになる。廃校になった小学校の校舎を活用した空間は、ほど良く雑然としてリラックスした雰囲気。アトリエで創作活動をしているほかのメンバーたちの存在。そして施設のスタッフとのゆるやかな関係性。こうした環境も後押ししたかもしれない。「何か描いてみて」というスタッフの声掛けに促されて「数字」を描き始め、だんだんと色付きの絵になり、「モナリザ」が生まれ、サイズも大きくなっていった。数々の公募展に入賞し新聞の取材も受ける。体験は自信となり、描くことは彼にとって生きる喜びとなっていった。

藤原はとても人当たりがよく、そしてとても頑固だったという。周りのメンバーにからかわれることもあるくらいの「マイペース」。日中は軽作業に従事し、合い間の30分ほどの休み時間に毎日描き続けた。文様、図形、色の組み合わせにこだわり、ていねいにコツコツと自分の世界をかたちにしていく。下書きに3、4か月をかけ、そこから完成までに半年。ほぼ1年に1作品という時間のかけ方だ。全体を描き終わるころには一番初めに描いたところが退色してしまうため、また最初に戻って塗り重ねていく。それが独特のマチエールになっている。みずからの生きた時間をすべて画面の中に、地層のように集積していくような豊かな絵画だ。


プロフィール

中津川 浩章(なかつがわ・ひろあき)

記憶・痕跡・欠損をテーマに自ら多くの作品を制作し国内外で個展やライブペインティングを行う一方、アートディレクターとして障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会の企画・プロデュース、キュレ―ション、ワークショップを手がける。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもから大人まであらゆる人を対象にアートワークショップや講演活動を全国で行っている。


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