「認知症とともに生きるまち大賞」では、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりの取り組みを募集していましたが、今年度、全国から47の事例が寄せられました。ご応募いただいたみなさま、ありがとうございました。先日行われた選考委員会の結果、表彰団体が決まりました。表彰式を12月7日(土曜日)、東京・千代田区の国際フォーラム「ホールD7」で開催します。表彰式では各団体の取り組みについて動画を交えて紹介するとともに、選考委員のみなさんと「認知症とともに生きるまち」を考えるフォーラムも行います。表彰団体の関係者だけでなく、どなたでも参加できます!

選考基準は、
(1)共生社会に向けた先駆性、オリジナリティー
(2)認知症当事者が望む活動を本人が共に進めているか
(3)活動が多様な人々と共に進み、地域に広がっているか
(4)他の地域への応用可能性
の4点。
47の応募事例はどれも甲乙つけがたく、選考は難航しましたが、選考委員の合議により下記のとおり7団体を表彰することに決まりました。

本賞

高齢者の災害体験を地域防災に生かす

高齢者・こども110番:地域食堂「きたほっと」(北海道・北見市)

安心して外出できる町づくりを長年続けており、誰でも集える安くておいしい地域食堂「きたほっと」を拠点に、2017年から本人ミーティングを開催。本人が若い頃の水害体験をリアルに語ったことをきっかけに、本人たちと市のハザードマップを仔細に点検。危険地域を再確認し、避難経路や避難場所、認知症の人も移動可能な「緊急避難先」などの見直しにつながった。本人が中学生らに災害体験を語るなど、命の大切さを自分事として考え、災害に備える活動を本人とともに進めており、普段からの支え合いが地域に広がっている。

【選考理由】 「災害弱者」として捉えられがちな認知症の人から、逆に災害体験を聴き学び合い、地域全体が防災という具体的な課題に、認知症の人と共に取り組んでいます。認知症の人の地域参加と役割が明確で、自然災害が多発する時代の極めて切実な防災と共生のまちづくりです。


農業用ビニールハウスは「小さな共生社会」

ボランティア団体 marugo-to まるごーと(新潟市)

2018年から、認知症の人をはじめ、閉じこもりがちなシニア男性、障害のある人、ひきこもりの若者など、様々な人たちが役割・やりがい・生きがいを持って過ごせる居場所を作り、運営している。活動拠点は、地域にある使わなくなった農業用ビニールハウスと畑。食べるのが好きな人、歌うのが好きな人、畑仕事のプロなどの認知症の人が地域の人と談笑し交流の場に育っている。

【選考理由】 特徴的なところは、認知症だけに特化するのではなく、高齢者、障害者など地域のそれぞれが「ともに」集まり活動するまさに「まるごと」の包摂の地域が自然に成り立っています。ビニールハウスという馴染みの場所に着目し、そこでの活動を認知症の人などの当事者の発想から創り出すなど、さりげない風景にこれからの地域を拓くヒントが多く込められています。


ウィッシュカードで認知症の人とサポーターをつなぐ

さがみはら認知症サポーターネットワーク(神奈川・相模原市)

認知症の人の理解者だけでなく、喜びを分かち合える仲間作りを目指し考案したのが「ウィッシュカード」。本人、家族、サポーターそれぞれが「ウィッシュカード」を出せるのが特徴。「野球をまたやりたい」というウィッシュからソフトボールチームが誕生。「気軽にお酒を飲みたい」というウィッシュから新年会やバーベキューがスタート。また、昨年冬には、国体出場経験のある認知症の男性と一緒にスキー・ツアーを行い、本人が滑走のコツを教えるなど、互いのウィッシュがつながりあい、自然体の交流の輪が広がっている。

【選考理由】 「支えあい助け合う」ことの「思い」をカタチにする活動です。本人、そして互いの願いや想いを、「ウィッシュカード」というカタチで気兼ねなく地域に行き来させる発想がユニーク。どの地域でも取り入れ可能で、地域に柔軟な工夫と広がりが期待できる点も優れた取り組みです。

福祉施設が独自ブランド商品を開発

独自ブランド“sitte”プロジェクト(京都市右京区)

認知症になっても、そうでなくても安心して暮らせる町を目指そうと、地域のデイサービスセンターが独自ブランドを開発した。
ブランド名は「sitte」。認知症で介護を受ける立場でも役割を持ってやりたいことが出来ることを形にするために、雑貨屋やプロモーション会社と協働して、「まな板」「カッティングボード」「ドリア皿」などの商品を開発。その他に、食堂、カフェ、子育てサロンなども運営し、デイサービスの利用者と地域のボランティアや子育て中のママなど、地域住民との多様なつながりが広がっている。

【選考理由】 認知症の人の願う「はたらく」ということに、地域の様々な企業や施設が参加することで、認知症の人の生きがいを生産活動につなげています。また、その謝礼を地域の商業活動に循環させるなどし、これまで積み重ねてきた多様な活動と連動させ、「認知症フレンドリー社会」を地域に根付かせようとする取り組みです。

地域の産業復興と名品作りを担う

ゆめ伴プロジェクトin門真(大阪・門真市)

去年、「かつて門真で栽培された綿花を、認知症の人や地域のみんなで再び育て、糸を紡いでみたい」という市民のアイデアが発端となって、認知症グループホーム所有の空き地で栽培を始めた。初収穫の綿花で紡いだ門真糸でタペストリーやコースターが完成。この綿花作りを広くゆるやかにつなげるために、今春、自宅で栽培してもらうために市民500人に種を配布。今後は織物専門家や地元企業の協力を仰ぎ、新たな地域の名品誕生を目指す。

【選考理由】 認知症の人と共に育てた綿花から、糸を紡ぎ、製品化する。やさしい手触りをイメージする地域づくりの取り組みです。その全ての工程が、集いの場であり、語り合いの場、そして生産の場であり、それがまちづくりにつながっています。かつての綿花栽培や名品の門真糸の復活の意味合いもあり、認知症の人とともに新たな地域再発見でもあり、地域の人の夢やワクワク感のある取り組みとしてユニークです。

ニューウェーブ賞(特別賞)

本賞とは別に、時代の先駆けとしての活動のユニークさと、これからの活動の広がりや進化への期待を込めて、ニューウェーブ賞として2団体を表彰します。

認知症にやさしいスローショッピング 

岩手西北医師会認知症支援ネットワーク(岩手・滝沢市)

 「認知症になっても、欲しいものは自分の目で確かめて自分でお金を払って買いたい」という望みをかなえるために、医師会、地域包括支援センター、社会福祉協議会、スーパーマーケット、当事者と家族の会が共同で企画したプロジェクトがこの3月スタート。スーパーに来店した認知症の人は、まず、「くつろぎサロン」で買い物リストを見ながら談笑し、その後パートナーと共にショッピングを楽しみ、レジでゆっくりと会計を済ませる。「くつろぎサロン」は、本人そして家族の交流や医療につなぐ相談の場にもなっている。

【選考理由】 「誰かに買ってきてもらう」のではなく「自分で選んで自分で買う」そのことが認知症の人にとって大きな暮らしの実感であり、活性化の源です。認知症の人でもゆっくりとマイペースで買い物をしたい。その思いの実現に地域が結集し、広範な団体、企業、そして地域の住民が連携し参加しています。今言われている「認知症バリアフリー」の、認知症の人と地域からの同時進行的な提言とも言えるでしょう。

公共トイレハンドブックを作成

日本工業大学建築学部建築学科生活環境デザインコース/横浜市総合リハビリテーションセンター(埼玉・宮代町)

「トイレのカギを開けられなくなった」「水を流そうとして間違って非常ボタンを押してしまった」「トイレを出て行方不明になった」・・・など、外出時の認知症の人の困り事を解決するために、認知症の人や家族へのインタビューをもとに「公共トイレハンドブック」を作成。認知症の人にも使いやすい公共トイレを整備することで、認知症の人が外出しやすいまちづくりの一歩とする取り組みが始まっている。

【選考理由】 認知症の人が外出するとき、思わぬバリアーがトイレかもしれません。
この取り組みは、認知症の人や家族からの広範な聞き取り実地調査や視察などを重ねたアカデミアの分野からの提案で、認知症をめぐる環境整備に、福祉医療行政に加えて、こうした研究者が参加することの期待は大きく、今後さらに本人とともに研究とまちづくりが持続発展していくことが望まれます。

表彰式&フォーラム

表彰団体の方々をお招きし、表彰式を下記のとおり行います。表彰式では、各団体の先駆的な取り組みを映像を交え、選考委員の方々とともに丁寧に紹介するとともに、「認知症とともに生きるまちづくり」について考えるフォーラムも開催します。どなたでもご参加いただけますので、「認知症とともに生きるまちづくり」について一緒に考えてみませんか。

日時:2019年12月7日(土曜日)午後1時~
会場:東京国際フォーラム「ホールD7」

参加:こちらの申し込みフォームからお申し込みください。
選考委員:永田 久美子(認知症介護研究・研修東京センター研究部長)
延命 政之(弁護士)
鈴木 森夫(認知症の人と家族の会 代表理事)
丹野 智文(オレンジドア代表)
町永 俊雄(福祉ジャーナリスト)