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活動リポート

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2008年10月24日

認知症フォーラム「あきらめない---最新医療と社会の支え---」を開催しました(岡山)

NHK認知症キャンペーンの一環として、認知症フォーラム「あきらめない ---最新医療と社会の支え---」を、10月24日、岡山県の岡山コンベンションセンター コンベンションホールで開催しました。657人の来場者が認知症への理解を深めました。

写真:舞台講師3人と司会者

フォーラムに出演されたのは、佐々木 健さん(きのこエスポアール病院 院長)、津田 由起子さん(小規模多機能ホームぶどうの家代表)、妻井 令三さん(社団法人認知症の人と家族の会 岡山県支部代表)、司会は教育テレビの番組「福祉ネットワーク」などでおなじみの町永 俊雄アナウンサーが務めました。出演者のプロフィールは、こちらをご覧ください

第一部 認知症の最新医療

写真:佐々木先生の顔

医師の佐々木さんは、まず、認知症の治療薬について話しました。アルツハイマー病(認知症の原因疾患のひとつ)の中核症状の進行を抑える薬については、「日本で唯一認められているのはアリセプトという飲み薬のみです。認知機能は時間の経過とともに低下していくが、この薬を飲むことによって、効果のある方は、2〜3年進行を遅らせることができ、早く服用するほど効果が期待できます」と話しました。
また、新薬の情報について、「数年後には、アリセプトと同じ効果がある薬が3つ認可される見込みです。また、進行を遅らせる薬だけでなく、根治薬の開発も世界中で進められています」と説明しました。

さらに、認知症の進行を抑制し、予防にもつながる生活習慣を紹介しました。

  • 野菜や果物を十分とる
  • 魚介類をよく摂る
  • お酒を適度にいただく
  • 運動の習慣をもつ
  • ダンス、楽器、囲碁などを楽しむ
  • 会話、社会活動を楽しむ
  • 20分程度の昼寝をする

「生活習慣病を予防するのと同じような習慣の改善が大切です」と話しました。

第ニ部 認知症の介護と地域の支え

写真:津田さんの顔

小規模多機能ホーム「ぶどうの家」で、日頃から認知症の方と接している津田さんは、これまでの経験を通して、認知症ケアの大切なポイントについて説明しました。

  • 本人の好きなこと、得意なことを知る
  • いつ、どんな状況で、何をしたいか、何をして欲しいかを観察して推測する
  • できないことより、できることをやってもらう

と話しました。

また、「在宅介護に自信がないが、施設に預けるのも不安」という、自宅で介護している家族に多い悩みに答えました。「とにかく一人で背負おうと抱え込まないこと。とりあえず、施設に申し込んでみるのも一つの方法。施設に入れるまでにある程度の待ち時間があるので、在宅介護に悩んでも、施設に申し込んでいることでホッとでき、心に余裕が生まれます。また、ご本人がどんな風に過ごしたいのかを、これまでの人生を振り返って考えてみることも大切です」と話しました。

写真:妻井さんの顔

妻井さんは、在職中に認知症になった母親を自宅に引き取って介護していました。介護する家族の心得として、「認知症の周辺症状(妄想、徘徊など)と向き合うことが大切だ」と話しました。「かつては、“問題行動”“迷惑症状”などと介護側の論理で呼ばれていたが、本人の辛い気持ちの現れでもある」と言います。「介護する側が認知症のことを理解していないと、周辺症状を責めてしまう。認知症をよく理解し、心得て介護することが大切」と話しました。
また、「本人に受診を勧めるにはどうしたらよいか」という質問には、「まずは本人のプライドを傷つけないようにすることが大切。“健康診断に行きましょう”と気軽に誘ってみるのも一つの方法です」と話しました。


主催・後援・協賛

主催:NHK岡山放送局、NHK厚生文化事業団、読売新聞社
後援:厚生労働省、社団法人 認知症の人と家族の会
協賛:株式会社ツムラ


出演者プロフィール

写真:佐々木氏

佐々木 健
〔きのこエスポアール病院 院長〕
1984年、民間では日本初の認知症高齢者専門病院を開設。「認知症の人の心や生活スタイ ルを大切にしたケア」をモットーに、薬に頼りすぎないケアをめざしてきた。また、病院 を核に、隣接の居宅介護支援事業所や老人保健施設、周辺の診療所、グループホームなど と一体となって、退院後の認知症高齢者の生活を支援している。

写真:津田氏

津田 由起子
〔小規模多機能ホームぶどうの家 代表〕
7年間老人病院のソーシャルワーカーとして勤務。その後、同僚たちとの勉強会の中で、地域や在宅で頑張っている人たちと一緒にやっていきたいという思いが強くなり、1996年倉敷市内に民家を借りてミニ介護ホーム「ぶどうの家」を立ち上げる。

写真:妻井氏

妻井 令三
〔社団法人 認知症の人と家族の会 岡山県支部代表〕
在職中に、実家で一人暮らしをしていた母が認知症になり、自宅に引き取って介護した。認知症の知識がなかったため介護は混乱を極めた。その苦い経験から1998年、定年退職を機に「認知症の人と家族の会」岡山県支部の結成に参加。事務局長を経て2001年から県支部代表。岡山県介護保険推進委員会委員、川崎医療福祉大学非常勤講師。

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