「インクルーシブ防災ワークショップ」を宮崎・日向市で開催しました
公開日:2025年11月16日

災害が起きたとき、逃げることが難しい人々の命を守る方法を話し合う「インクルーシブ防災ワークショップ」を、11月10日、宮崎県日向市の日向市文化交流センターで行いました。
日向市は南海トラフ巨大地震での被害想定が宮崎県内で最大の地域。ワークショップには福祉事業所の職員や利用者、地域の自治会関係者や民生委員など40人が参加しました。
「インクルーシブ防災」とは、年齢や性別、障害の有無、言葉の違いなどにかかわらず、誰一人取り残さずに命を守る防災の考え方です。
この考えに基づいて、地域の皆さんの力で、地域に暮らす皆さんの命をどう守れるのか。日向市のハザードマップを使いながら、地区ごとのグループに分かれて、障害当事者や高齢者などの命を守る方法を考えました。
障害当事者・高齢者は “逃げられない”。でも逃げる想定が多くの命を救う
ワークショップはまず、大きな災害が起きたとき、障害当事者や高齢者などはどのような状況におかれるのか、体験者の話から始まりました。話してくれたのは、2011年の東日本大震災を福島県南相馬市で体験したNPO法人さぽーとセンターぴあ・前代表理事の青田 由幸さんです。
南相馬市は地震で発生した津波の被害だけでなく、福島第一原発事故のために全市民に避難勧告が出されました。しかし、寝たきりだったり、集団の中では過ごせなかったり、視覚障害のために移動が難しかったりした人々は避難できませんでした。青田さんたちは、そうして家に残らざるを得なかった人々の支援に回っていたのです。
青田さんは言います。「避難所や避難先は高齢者や障害当事者にとっては過ごしづらい場所。だから避難したくても避難しないんです。そうして残り、一緒に残った家族や助けに来た人たちも津波の犠牲になってしまうんです」。
しかし、と青田さんは続けます。
「高齢者や障害当事者がいついかなる時でも逃げられる方法を考える。過ごしやすい避難場所のあり方を考える。様々な意見や知見を出し合い、災害時には率先して避難行動を取ることが多くの命を救うことにつながるんです。」と想定することの大切さを訴えました。
ワークショップは、防災を改めて考えるきっかけ
「どこもかしこも真っ赤だ・・・」。参加者の多くが地域のハザードマップを見てもらした言葉です。「真っ赤」というのは、ハザードマップ上で、南海トラフ地震が発生した際、到達する津波の高さが5メートルから10メートルを表しています。ワークショップはこの地図上に、災害がおきたとき、住民だからこそ分かる危険箇所や食べ物やトイレが確保できそうな場所などを落とし込んでいきます。そして、どうすれば地域の皆さんの命を守ることができるのかを話し合いました。
グループの話し合いでは、「病院というとても重要な施設が、実は津波が襲う、とても危険なところにあるんだ。」「これまでの避難訓練では近くの避難場所にいっていたけど、津波が到達する場所。わざわざ危険なところに行ってたなんて。」「山側に逃げなければいけないけれども、狭い山道を高齢者などは上れるのか不安。」など課題が改めて浮き彫りに。
そうした中で、あるグループからは「これまでの避難訓練では避難場所まで最短の道を逃げていたけれども、マップ上では危険だった。高齢者などがもっと安全に避難できる道を考えて、避難経路を考え直す必要が分かった。」という意見も出ました。
防災で大切なことは、まず現状を知り、様々な被害や対策を想定することです。ワークショップを終えた参加者からは、「避難場所、資源、危険な場所、道路の状況を普段より意識して、その事を声に出し皆に伝えていく事が大事だと思った。」「日頃の避難訓練での誘導について見直しをすることができました。早速、次の避難訓練に生かしたいと思います。」といった感想が寄せられました。

体験談を話す青田さん
地域の危険箇所や社会資源などが新たに書き込まれたハザードマップ
ハザードマップを見ながらグループで出た意見を発表
