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今回ご紹介するのは、アトリエ言の葉(神奈川・川崎市)の藤田 将行(ふじた・まさゆき)さんの作品です。
キュレーターは中津川 浩章さん(画家、美術家、アートディレクター)です。

作者紹介……藤田 将行さん

「自分の描いた作品をたくさんの方に観ていただける機会を持ちたい」という思いを抱き、約1年半前からアトリエに通い始める。彼のスタイルはアクリル絵の具をペインティングナイフやウェットティッシュ、手指などでキャンバスに描くスタイルで、集中するとペインティングナイフが画面に勢いよく擦れる音がアトリエ中に響き渡る。完成した作品を観ると、画面から迫ってくる迫力に毎回圧倒される。作品の意図を本人に聞こうとしても、彼はあまり多くの事を語らない。私たちは自分なりに解釈し、ありのまま感じるしかない。昨年は「アーツ千代田3331」で開催された「ポコラート展」で入賞するなど活躍の幅を広げている。

キュレーターより 《中津川 浩章さん》

藤田 将行 《MCXMC》

横浜市神奈川区民文化センター「かなっくホール」が主催する、神奈川県内の障害があるアーティストたちを取り上げた展覧会がある。その出展作品のリサーチのため、川崎市にある「アトリエ言の葉」を訪れた。そこで見たのが藤田将行の作品だった。

中くらいのサイズのキャンバスにアクリル絵の具。ペインティングナイフの細かい手の動き。なんども塗り重ねられて厚く盛り上がった絵の具の物質感。イメージを表現するというよりも、抵抗感のあるこのマチエールを作りたかったのではないかと思うほど、それくらいこの物質感が強く見る側に迫ってくる。なにが描いてあるのかはっきりとはわからない。けれどもなぜか惹かれるものがあった。

《MCXMC》は“MCバーサスMC”という意味で、二人のラッパーのバトルを表現しているらしい。画面の上と下にはラップのコトバが刻まれているようだが読めそうで読めない。中央部分の密度ある色彩の矩形から聞こえてくるのは無数のノイズか歓声か。格闘するパワフルなエネルギーそのものを感じる。

藤田が絵を描き始めたのは8年前。最初は画用紙にボールペンやサインペンで、3年目に水彩を、そして4年目にアクリル絵画を始める。その後、抽象的なスタイルに移行していく。キャンバスを支持体にして、まず薄い絵の具で色面を作り、その上からペインティングナイフでガツガツと塗り付けていく。描いている時はとにかくしんどく苦しいのだが気分は解放される。指やウェットティッシュで擦ったりするうちに絵の具は混じり合ってどんどん変化し、文字もそこに刻まれて響き合い渾然一体となっていく。イメージらしきものが生まれては、消え、また生まれる。伝えるという意味ではわかりやすいイメージに着地することも大事なことだが、それだけではない。イメージを破壊する運動もまた、時にもっと重要な意味を持つ。「あらゆる創造活動はまずなによりも破壊活動である」というピカソの言葉を思い出す。硬い岩盤を一心に掘り進めていくような行為のなかで、自分が生きていることを確認する。生きることのリアリティが絵の中に詰まっている。

精神疾患の障害があり乗り物が苦手な藤田は、アトリエに通うこと自体がなかなかむずかしい。ふだんはひとり自宅で作業せざるをえない。だがそれでも作品が完成すると、彼はそれを持ってアトリエにやってくる。スタッフや他のメンバーの感想を聞くのがなによりも楽しみであり、喜びであり、制作の励みになるのだという。


プロフィール

中津川 浩章(なかつがわ・ひろあき)

記憶・痕跡・欠損をテーマに自ら多くの作品を制作し国内外で個展やライブペインティングを行う一方、アートディレクターとして障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会の企画・プロデュース、キュレ―ション、ワークショップを手がける。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもから大人まであらゆる人を対象にアートワークショップや講演活動を全国で行っている。


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