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今回ご紹介するのは、「木馬工房」(東京・八王子市)の阿山 隆之さんの作品です。
キュレーターは中津川 浩章さん(画家、美術家、アートディレクター)です。

作者紹介……阿山 隆之(あやま・たかゆき)さん

阿山さんは、言葉のキャチボールが苦手です。
なかなか自分の気持ちを人に伝えられません。
そんな中、自分を表現する手段として、絵を描くことが好きな気がします。
『◯◯色と◯◯色を合わせると、何色?』と口ずさみながら、まよいなく次の色を手に取ります。
頭の中にほぼ色の構想はできているようです。
阿山さんの描く絵はどこか形がアンバランス。
描く板に合わせて、足が短くなったり、無理矢理詰めこんでしまったり、
『おやおや ここに これが入る?』と私たちが思ってもみない構図や色になったり。
でも、最後にうまくまとめ『どこか へん? でもおもしろい!』 見ていてあきない絵が仕上がります。
阿山さん本人も、絵と同じ。絵に人柄が投影されているようです。(施設長・相良 美恵子)

キュレーターより 《中津川 浩章さん》

阿山隆之「かえる21匹」

阿山隆之は、ウッドバーニングの技法と、色鉛筆などの彩色を組み合わせて制作している。

土台となるのはさまざまなルートで彼のもとにやってきた木材だ。彼は紙やキャンバスではなく木に描く。木を熱で焦がして線をひく。電熱ペンでなぞりながらゆっくりと焼き付けていく線は、普通に紙の上に描かれる線とはちがった独特な表情を見せる。

焦がして描く線は、消すことも描き直すこともできない。木を焼きながら刻印する強い輪郭線。そこに美しい彩色がほどこされる。丹念に簡潔に刻まれる文様、迷いのないフォルム。カエル、ウシ、トラ、いろいろな種類の鳥たち、生き物の姿は的確にユーモラスに表現されプリミティブなパワーを発している。割れたり曲がったりしている木の形や、木目をうまく活かした木そのものの素朴な味わいも作品の魅力だ。

今回紹介するのは「かえる21匹」。まさに画面からはみ出さんばかりの存在感いっぱいのカエルたち。一匹一匹の身体つきが表情豊かで、細部を埋めているドットや縞模様も個性的。それぞれの向いている方向もバラバラ。なのに構成はピタッと決まっている。装飾的な抽象性と具体的な手触り感が絶妙なバランスである。地塗りをしていない生木に直接描いているからだろうか。非常にカラフルでありながら、色彩はしっくりと落ち着いたトーンで調和している。

1972年生まれの阿山は1985年から木馬工房に所属している。おもな作業メニューがクラフトや木工だったこともあって、紙よりも木に描くことのほうが自然な選択肢だったのだろう。それが結局、阿山のユニークな技法を生み出すきっかけとなった。障害がある作家が表現の素材と出合うこと、いつどこで何と出会うか、それがその後の表現の開花を左右することになる。作品を人に見てもらうことが好きな阿山は、個展を開くことをいつも意識しながら制作しているという。描きながら人に見てもらうのも好きで、ときに制作のアドバイスを受けたりすると、一瞬パニックになりながらも、あとでしっかりとそのアドバイスを作品に活かしているのだという。長年彼を見守ってきた施設支援員の存在や、そうした周りとの関係性の在り方に、彼が30年以上にわたって制作し続けてきた理由の一端があるように思う。


プロフィール

中津川 浩章(なかつがわ・ひろあき)

記憶・痕跡・欠損をテーマに自ら多くの作品を制作し国内外で個展やライブペインティングを行う一方、アートディレクターとして障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会の企画・プロデュース、キュレ―ション、ワークショップを手がける。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもから大人まであらゆる人を対象にアートワークショップや講演活動を全国で行っている。


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