NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

NHK厚生文化事業団


現在位置:ホーム > このページ


活動リポート

2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年  

2008年12月 6日

フォーラム「特別ではない特別支援教育---発達障害の児童生徒に何ができるか---」を開催(神戸)

NHK厚生文化事業団近畿支局とNHK神戸放送局は、ハートフォーラム「特別ではない特別支援教育---家庭・学校で発達障害の児童生徒に何ができるか---」を、兵庫県神戸市の神戸市勤労会館で開催しました。来場者は318人。特別支援教育がスタートして2年目の今、発達障害のある子どもたちをめぐって、学校や地域ではどんな取り組みが行われているのか。現場からの実践報告をまじえて、これから目指すべき方向などについても考える機会となりました。

写真:フォーラムの会場全景

当日は、3人の方の講演がおこなわれました。出演されたのは、竹田 契一さん(大阪教育大学名誉教授、大阪医科大学LDセンター顧問)、後野 文雄さん(京都府舞鶴市立白糸中学校校長、京都府特別支援学級設置校長会会長)、鉾山 智子さん(京都府立桃山養護学校総括主事)。出演者のプロフィールは、こちらをご覧ください

講演 2年目の特別支援教育と発達障害への関わり方

写真:講演する竹田契一さん

午前中、まず演壇に立ったのは、竹田 契一さんです。講演のテーマは、「2年目の特別支援教育と発達障害への関わり方」。LD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)、アスペルガー症候群など、いわゆる発達障害についての基礎的な理解に始まり、特別支援教育の考え方にいたるまで、全般にわたってお話をされました。
竹田さんの講演のキーワードの一つが、《特別支援教育はユニバーサルデザインである》。

「クラスの中に発達障害のあるA君という子がいるとき、A君だけに役に立つ教育をめざすのではなく、A君に対して丁寧な教育をすればクラスのすべての子どもたちに対して効果のある教育になる、という方向にもっていく。特別支援教育は、すべての生徒に効果がある《ユニバーサルデザイン》でなければ長続きしない」

今回のフォーラムのタイトル「特別ではない特別支援教育」とは、まさにそういう意味だというお話でした。

講演 ニーズのある生徒への具体的指導--プロジェクトS 白糸中学校の挑戦--

写真:講演する後野文雄さん

竹田さんの基調講演の後、午後は、特別支援教育を実践している現場からの講演が二つ。

後野 文雄さんが校長を務める舞鶴市立白糸中学校は、生徒数540、各学年5クラスと、特別支援学級が3クラスあります。特別支援教育のスタートを機に、障害があろうとなかろうとすべての生徒を支えていくという方針を定め、具体的な取り組みを始めました。支援を必要としている生徒のニーズをどう捉えるか、そのニーズにこたえるためにどんな仕組みを作っていったか。それによって生徒や学校がどう変わっていったかを、さまざまなエピソードを交えながらいきいきとお話されました。

写真:図を使って説明する後野さん

白糸中学校の取り組みの基本にあるのが、《特別な支援の必要な生徒を、特定の場所で特定の人が支えるのではなく、学校全体で集団の中で支える》という考え方だというお話に、会場の半数近くを占めた学校関係者の皆さんも深くうなずいていました。

講演 地域と共にチームで支援--特別支援学校のセンター機能--

写真:講演する鉾山智子さん

最後の講演は、京都府立桃山養護学校総括主事の鉾山 智子さんです。鉾山さんは、白糸中学校の取り組みをさらに一歩広げ、地域で発達障害のある児童生徒を支援する取り組みについて話されました。
特別支援学校では、地域の障害者本人や家族、学校から支援の相談が持ち込まれた場合、特別支援コーディネーター、医師、心理や教育の専門家などからなるチームが巡回指導をおこないます。実際の授業の様子を観察して、どういったサポートがその児童生徒に必要かをアドバイスをします。その際、特別支援学校がこれまでに蓄積してきたノウハウが活用されるのです。

写真:地域で支援するイメージ図 鉾山さんは、幼稚園から高校まで、年間500件以上の相談を受けてきた経験をふまえ、《発達障害のある子どもたちが学校を卒業した後どのような支援を必要とするのか、その見通しをもったうえに地域が一体となって一貫した支援をすることが必要》だと話しました。


主催・協力

主催:NHK厚生文化事業団、NHK神戸放送局
協力:社会福祉法人 大阪府共同募金会


出演者プロフィール

竹田 契一
〔たけだ けいいち〕
略歴:アズベリー大学卒 ピッツバーグ大学大学院言語障害学科修士課程修了 慶應義塾大学医学部大学院医学研究科修了
現在:大阪教育大学名誉教授 大阪医科大学小児科客員教授 特別支援教育士資格認定協会会長 日本LD学会常任理事 大阪医科大学LDセンター顧問

後野 文雄
〔ごの ふみお〕
略歴:大阪教育大学特殊教育特別専攻科修了 舞鶴市内の小学校で「通級指導教室」(ことばの教室)を担当 京都府総合教育センター勤務 舞鶴市立城南中学校校長
現在:舞鶴市立白糸中学校校長 全国特別支援学級設置学校長協会副会長 京都府特別支援学級設置校長会会長 京都府特別支援教育研究協議会会長 舞鶴市中学校長会会長

鉾山 智子
〔ほこやま のりこ〕
略歴:京都府八幡市と宇治市で通常学級と障害児学級を担任 宇治市立南小倉小学校で「ことばの教室」を担当 京都府総合教育センター障害児教育部研究主事兼指導主事 京都府教育庁指導部特別支援教育課指導主事
現在:京都府立桃山養護学校総括主事 特別支援教育士スーパーバイザー 臨床発達心理士

写真:講師のみなさん 左から順に鉾山さん、竹田さん、後野さん  

活動リポート目次