ページ内のショートカット(この場所に戻ります)

  1. このページの本文
  2. サイトメニュー
  3. サイト内検索/文字サイズ変更
  4. このサイトについての情報

NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

サイトマップ
サイト内検索

文字サイズを変更できます

NHK厚生文化事業団


ボランティアネット アーカイブ


“おもちゃキャラバン”が被災地に笑顔を
 〜おもちゃ図書館の被災地支援〜

“おもちゃ図書館”は、子どもたちに遊ぶ場を提供したり、おもちゃを貸し出したりする活動で、全国の社会福祉協議会・保育所などの公共施設などで行われています。アメリカで始まったこの活動は、日本では1981年に、東京都三鷹市におもちゃ図書館の第1号館が開設されて以降、全国的に広がって、現在では全国に600〜700か所のおもちゃ図書館が作られています。

写真フェルトを利用した手作り絵本扱っているおもちゃは、国内外で市販されている既製品のほかに、手作り絵本や人形、牛乳パックやペットボトルを利用した手作りおもちゃなど。また、折り紙を使ったワークショップやお絵かき教室なども開催しているおもちゃ図書館もあります。もともとは、「障害のある子どもたちの居場所作り」という意味合いがあったこの活動ですが、現在は障害に関係なく誰でも遊べて、地域のお母さん同士が交流できる場になっている所がほとんどです。

こうした活動の取りまとめ役となっているのが、“おもちゃの図書館全国連絡会”です。現在465か所のおもちゃ図書館が連絡会に登録をしています。連絡会では、各地のおもちゃ図書館の情報交換や活動する上での悩み相談を行ったり、ボランティアを集めて研修会を開催しています。また、おもちゃの寄贈や助成を行うなど、様々な面からおもちゃ図書館の活動を支援してきました。
昨年3月に東日本大震災が発生してから、連絡会では “おもちゃキャラバン”という支援活動を始めました。月に1度、被災したおもちゃ図書館の復興支援や、避難所でおもちゃ図書館を開催するなどの取り組みを行っています。
今回は、この“おもちゃキャラバン”の様子と、参加したボランティアが取り組んでいる各地のおもちゃ図書館の活動について取材しました。

被災地で支援活動をする“おもちゃキャラバン”

おもちゃの図書館全国連絡会が4月から始めた、“おもちゃキャラバン”。全国のおもちゃ図書館からボランティアスタッフが集まって、月に1度東日本大震災の被災地で、被災したおもちゃ図書館の復興支援や、避難所でおもちゃ図書館を開催するなどの活動を行っています。これまでには遠く愛知県、福岡県や台湾のおもちゃ図書館協会からの参加もありました。

11月26、27日に、おもちゃキャラバンは、東京の荒川区、埼玉県、神奈川県からおもちゃ図書館のスタッフなど計18人のボランティアが集まり、宮城県南三陸町で支援活動を行いました。今回の震災で、南三陸町にある“志津川町おもちゃの図書館いそひよ”は、利用していたふれあいセンターの建物が全て津波に流され、運営スタッフも被災して厳しい避難所生活を送っていました。連絡会では、“いそひよ”のスタッフと面会し、全国から寄せられたおもちゃを寄贈するなどして復興支援を行ってきました。そして6月から“いそひよ”は南三陸町の別の公民館に場所を移して活動を再開することができました。

写真志津川町おもちゃの図書館いそひよ11月26日は、月に1度の開館日で、おもちゃキャラバンのボランティアは“いそひよ”に訪れた子どもたちの遊び相手や保護者の話し相手をして開館を手伝いました。これまで“いそひよ”に通っていた利用者の人たちは、それぞれ離れた場所に避難してしまったので、月に1度“いそひよ”に集まって、お互いの元気な顔を見たり情報交換したりできて、交流の場になると喜んでいたそうです。

復興を願うイベントにも参加

写真翌27日、おもちゃキャラバンは、南三陸町で行われている“福興市”に参加しました。
福興市は、南三陸町と地元の商店街が行うイベントで、地元企業やNPOなども参加し、毎月1回、最終日曜日に復興を願って開催されています。演芸などの催し物が行われたり、模擬店も多数出店されます。
「おもちゃ図書館」のテントでは、楽しく遊ぶ子どもたちの姿が見られました。鉄道・自動車の模型やアニメキャラクターのおもちゃが人気で、時には取り合いになるほどでした。

写真「手作りおもちゃのワークショップ」のテントでは、ひもで動く紙人形と松ぼっくりを使ったクリスマスツリーを作成しました。たくさんの子どもたちと大人も参加し、持参した材料があっという間になくなってしまうほど好評でした。
おもちゃキャラバンは、この福興市に7月から参加していて、毎回地元の方からも楽しみにされているということです。

被災地での活動を終えて

今回、ボランティアとして“おもちゃキャラバン”に参加した、連絡会の増田ゆきさんに伺いました。

写真──おもちゃキャラバンに参加した理由は?

「おもちゃ図書館の仲間が被災したということでショックが大きかったです。最初は、がれき撤去でもなんでもいいから何かできることはないかと考えていましたが、被災地が復興していく上で子どもたちが元気に育っていくことも大事だと思いました。連絡会のスタッフとして活動している私ができることは、子どもたちが楽しく遊べる場を作ったり、一緒に遊んだりすることなので、おもちゃ図書館としてできる支援活動に参加すべきだと思いました」

──被災地の皆さんの様子はどうでしたか?

「大人も子どもも、おもちゃで遊んだりワークショップに参加しているときは、楽しんでくださっていたと思います。ただ、子どもたちがおもちゃを倒しながら、津波ごっこをして遊んでいたことには少しショックを受けました。震災が子どもたちの心に、どう残っているのかがわからなくて、どう接していいか悩みました」

写真──一緒におもちゃキャラバンに参加した人たちの反応は?

「少しずつお店やコインランドリーなどができて、毎月被災地に行く度に変化しているように思えますが、まだまだがれきだらけで人が住める状況ではありません。そういった光景を実際に見ると、多くの参加者がまだまだ継続して支援していくことが必要だと感じていますね」

参加したボランティアのそれぞれの思い

増田さんは、子どものころ、お母さんと一緒に荒川区のおもちゃ図書館を利用していたそうです。現在は、社会福祉士の資格を取るために日本福祉大学の通信教育を受けながら、おもちゃ図書館の活動に参加しています。

──増田さんにとっておもちゃ図書館とは?

「おもちゃ図書館がいろいろな人たちとの出会いの場であってほしいと思っています。私自身、子どものころに障害のある子や複雑な家庭環境、経済状況の子と知り合ったことで、さまざまな境遇の人たちを受け入れられるようになれたと感じているし、その後の私の人生を変えることにもつながったと思っています」

息子の障害がきっかけで「おもちゃ図書館」の活動を

写真もう一人、“おもちゃキャラバン”に当初から参加している、埼玉県川口市のおもちゃ図書館“すてっぷおもちゃライブラリー”代表の隅田ひとみさんにもお話を伺いました。
“すてっぷおもちゃライブラリー”は、隅田さんが、3年前に立ち上げたおもちゃ図書館です。隅田さんがおもちゃ図書館のことを初めて知ったのは、15年ほど前。息子の洋平くんが知的障害を伴う自閉症だったことがきっかけでした。
そのときは、3歳の洋平くんを連れて遊びに行くことはできなかったのですが、障害のある子が遊べる場所があるということが、安心感や心の支えになったのだそうです。
隅田さん「自閉症の子は、みんなで一緒に遊んだり、おもちゃを友達と交代で使うといったことが難しいので、なかなか遊ぶ場所がありません。遊べる場所があったとしても、子どもが泣いたり騒いだりすると、周りの目が気になって楽しめないんです。だからお母さんも子どもも障害のことを気にせずに、集まれる場所があったらいいと思って開設しました」
すてっぷおもちゃライブラリーは、月4回開館しています。誰でも自由に利用できるのですが、隅田さん自身の経験から、第4土曜日だけは障害のある子どもたち限定の日にしています。そうすることで、大勢の中で遊ぶことに少し不安がある子どもやお母さんでも安心して遊べるようにしているのです。

隅田さんは今回、東日本大震災で被災した地域でも、障害のある子どもたちやその保護者は、安心して過ごせる場所が無くなったのではないかということが気になったと言います。
隅田さん「障害のある子がいるために、避難所や仮設住宅に入ることができない被災者がいるとも聞いています。こういったケースをなくしていくためにも、どうすれば地域の人たちに、障害のある子を受け入れてもらえるようになるかを、普段から考えていかなくてはならないと感じました」
隅田さんは、今後は福島県の保育所でのおもちゃ図書館の開館にも参加していく予定で、これからも引き続き、被災地で子どもたちの居場所作りをしていきたいと話しています。

これからのおもちゃ図書館

写真連絡会の大貫輝子さんは、おもちゃ図書館は、子どもと一緒に遊ぶことから始まるボランティアなので、これからボランティアを始めたいという人が、初めの一歩を踏み出せる活動ではないかと考えています。この活動に参加しているボランティアには、ろうの方もいて、子どもはおもちゃがあれば、言葉がなくても誰とでも通じ合えるのだと言います。

──連絡会として今後の課題は何ですか?

「おもちゃ図書館は、30年近く活動しているのですが、まだまだ知名度が低いです。もっと多くの人にこの活動を知ってもらって、参加してもらうことが一番の課題です。そのための心構えとして、連絡会ではおもちゃ図書館を開設してほしいという要望があれば、何が何でも実施します。運営していく上で、ボランティアを集めることが一番大変なのですが、人材をかき集めて必ず開設してきました。これまでに一度も断念したことはありません」
おもちゃの図書館全国連絡会では、通常の業務と平行して、今後も被災したおもちゃ図書館の復興支援と福興市への出店を続けていくほか、福島県の幼稚園でおもちゃ図書館を開館する計画もあるとしています。「会員登録のあるなしに関係なく、要望があるところには応援をしていきたい」というおもちゃの図書館全国連絡会は、ホームページで震災支援の寄付の呼びかけも行っています。

さまざまな運営形態のおもちゃ図書館

おもちゃ図書館は、すてっぷおもちゃライブラリーのようにボランティアが運営している形態のほかに、社会福祉協議会の事業として行われていたり、保育園、子育て支援センターの職員が運営しているところ、地域の親たちが集まって開館しているところがあります。このほかに、施設や病院に出向く出張型、出かけることが困難な子どものための訪問型などの常設していないタイプもあります。また、おもちゃ病院のドクターと協力して、おもちゃの修理を請け負っているところもあり、活動内容はおもちゃ図書館によってさまざまです。また開館日も、各おもちゃ図書館によって違っていて、月1、2回という場合が多く、数は少ないですが、常設しているところもあります。

2012年3月23日掲載  取材:眞鍋


Copyright 2006 NHK Public Welfare Organization. All rights reserved.
許可なく転載することを禁じます。