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NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

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雪で遊ぼう!“身体に障害のある子の介助ボランティア”(4)

東日本大震災の影響で、前回から間が空いてしまいましたが「親と子の療育キャンプ」リポートの最終回をお届けします。

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昨年度のキャンプより

身体の不自由な子に雪の中で思いっきり遊んでもらいたい。そんな思いから始まった「雪と遊ぼう;親と子の療育キャンプ」が、1月8日から10日までの3日間、新潟県の八海山麓スキー場で開催されました。
キャンプ期間中、子どもたちの移動・食事・着替えなどの介助を行うのは、募集に応じて集まった様々な年齢や職業のボランティアたちです。

好天に恵まれてソリ遊び

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「うわぁあ〜〜〜」「楽しいぃ〜〜〜〜」まぶしい雪原に子どもたちの明るい声が響きます。キャンプ一日目は幸い好天に恵まれ、子どもたちは存分にソリ遊びを楽しみました。

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身体に障害のある子どもたちの多くは、自分の筋力だけでは座った姿勢をとれないため、ソリには体を固定するプラスチックの腰かけと毛布が置かれ、ボランティアも一緒に乗りこみます。こうした工夫により、子どもたちは安全にスピード感のあるソリ遊びを楽しむことができました。

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これまで雪を見たことはあっても雪遊びをしたことがなかったという子が多く、雪の上をソリで滑る感覚がとても新鮮に感じられたようです。

忙しかった食事介助

雪遊びを楽しんだ後は、宿舎に移動して昼食を食べます。
スキー場と宿舎の間はおよそ20メートル。ボランティアは子どもを抱きかかえて移動します。
ここで以前の記事でお伝えした実技研修の成果が出ました。ボランティアたちは研修で習った通り、二人一組になってチームワーク良く子どもたちを運びます。

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キャンプ初参加の記者は、研修で砂袋や他のボランティアを運ぶ練習をしましたが、実際に子どもを抱きかかえて移動するのは初めて。
子どもたちから「痛い!」と言われたりしないか少し心配でしたが、練習で習ったように、自分と子どもの体をしっかり密着させて運んだので、子どもは安心して身を任せてくれました。

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思う存分ソリ遊びを楽しんだ子どもたち。お腹はペコペコです。
食事の時間中、ボランティアは子どもの横について食事の介助をします。
介助の方法は、子どもたちの障害の程度や麻痺している部位によって変わってきます。

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手に麻痺がある子の場合、ボランティアがスプーンで食べ物を口まで運ぶ必要があります。また、食べ物を口まで運べても噛む力が弱いため、あらかじめ食事をミキサーにかけ、ペースト状にする必要がある子もいます。
ボランティアは子どもを介助しながら自分の食事もすませなければならないので、目の回るような忙しさでした。

地元魚沼市のみなさんが協力

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キャンプの初日には、地元南魚沼市の井口一郎市長が駆けつけ、子どもたちを歓迎しました。このキャンプでは、南魚沼市の協力により子どもたちが安心して遊べるようスキー場のコースを一部借り切ることができた上、子どもたちの送迎用に、新幹線の浦佐駅と宿舎を結ぶスクールバスも用意してくれています。

またキャンプには地元の方々が18人参加してくださいました。中学校の校長先生、福祉を学ぶ高校生、商店の経営されている方など様々な人が東京からやってきたボランティアと一緒にグループに加わり、子どものソリを引いたり雪だるまを作ったりして、雪遊びの活動を支えてくださいました。中には普段からこのスキー場を利用している人もいて、「こっちの方に新雪があるよ!」と秘密の遊び場を教えてくれたことも。東京からやってきた私たちにとって、地元の方々の手助けはとても頼りになりました。

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ドキドキのリフト搭乗

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キャンプ二日目は、リフトに乗って、スキー場のコースを上から下までソリで滑りおりることに挑戦します。
スキー場の好意で、リフトを午前中の30分間借り切ることができました。
リフトには子どもを抱きかかえて乗ります。初心者のボランティアとしては、うっかりバランスを崩して子どもを怪我させてしまわないかと、不安でした。

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でも、スキー場の係員さんが乗降場所でそのつどリフトを止めてくれたので、子どもを抱いたままでも安心して乗り降りすることができました。

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ゲレンデでは、子どもたちがソリに乗るほかにも雪玉を投げたり、ボランティアに抱きかかえられて新雪の中に飛び込んだりと、思い思いの方法で遊んでいます。
その中で「スピード感がある遊びが大好き」という小学6年生の奥俊太君が、バイスキー(いすの下にスキー板を取り付けた乗りもの)に挑戦していました。
バイスキーはスキーを履いた大人と一緒に滑るので、ソリよりもスピードが早く、左右に曲がることもできます。

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俊太君はソリよりもさらにスリリングなバイスキーに大喜び。滑り終わってから、「楽しかった。これ、絶対忘れないよ」と満面の笑みを浮かべていました。

最終日は保護者と一緒に

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最終日は、これまで二日間別々に行動していた保護者と子どもが初めて一緒に活動します。保護者とボランティアが子どもの乗るソリを引いて、クロスカントリースキーのコースをたどるのです。

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子どもたちに雪をかぶった森の木々の美しさを味わってもらうためです。保護者のみなさんは、二日ぶりに会った我が子がボランティアと一緒にはしゃいでいるのをみて一安心。とても喜んでいました。

充実した三日間

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子どもたちとともに過ごした三日間はボランティアにとって大変ハードなものでした。
子どもたちの身の回りの介助に加えて、移動はすべて抱きかかえて行うので、キャンプ後も腰や腕の筋肉痛が残りました。
それでも、帰り道の新幹線で、雪遊びの思い出を楽しそうに話しながら「来年また来るよ!」と話してくれる子を見て、「雪遊びを思いっきり楽しんでもらいたい」というボランティアの気持ちが伝わったことがわかり、なにものにも代えがたい達成感を感じました。
東京駅で解散するとき、ボランティアとの別れを惜しんで泣き出してしまう子があちこちにいたことが忘れられません。

最年長のボランティアにインタビュー

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キャンプに参加したボランティアの中で最年長、60歳の竹内公雄さんにお話を伺いました。
神奈川県中井町の役場に30年勤めてきた竹内さんは、現在も嘱託の職員として働きながら、陶芸・家庭菜園作り・マラソンなど、多彩な趣味を楽しんでいます。
キャンプ初参加となる竹内さんのキャンプネームは「ばーゆ(馬油)」。最初のボランティア研修で竹内さんが「最近、髪が薄くなってきたので頭に馬油を塗っております」と言ったことからつけられた名前です。
記者は最初のうち、年配の方を頭髪にちなんだ名前で呼ぶのはちょっと気が引けていたのですが、竹内さんの気さくな人柄もあり、やがて慣れてしまいました。

身体に障害のある子どもたちの介助は、身体を抱きかかえて階段を上り下りするなど、若い人でもかなりの重労働です。
しかし竹内さんはキャンプ中疲れたそぶりもみせずに、いつもにこやかに子どもたちと接していました。

——キャンプに参加したきっかけは何だったのですか?
「身体が動くうちに、何か人の役に立つことをしてみたいと思ったんです。そんなとき、たまたま新聞を読んだらこのキャンプのボランティア募集の記事が出ていたので応募しました」

——キャンプでは子どもを抱きかかえたり、ソリで雪道を登ったりとかなり大変でしたが“ばーゆ”さんはいつもエネルギッシュでしたね。
「若いころからスキーもしていたし、ホノルルマラソンを完走したこともありますから、体力には自信がありましたよ!」

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——障害のある子どもたちと関わるのは今回のキャンプが初めてだったそうですが、戸惑いを感じることはありませんでしたか?
「あまりありませんでしたね。私には息子が3人、孫が5人いまして、子どもたちの食事や着替えの手伝いはいつもしていましたから。今回一緒に過ごした子どもたちも接し方に変わりありませんよ」

——竹内さんは参加したボランティアの中で最年長でいらっしゃいますが、下の世代のボランティアたちと活動を共にして、どんなことを感じられましたか?
「ボランティアはみんな本当に誠実で立派な人たちばかりでした。僕が若い時は遊んでばっかりだったから、なんだか申し訳なくなったくらい(笑)。それはそれとして、このキャンプには、僕たちの世代がもっとボランティアとして参加したほうがいいとも思いました。子育ての経験を生かせるし、それを次の世代に伝えていく機会にもなりますからね」


竹内さんが明るく余裕を持って子どもと接してこられたのは、これまでの子育てや、現在の孫育ての経験があったからだのとのことでした。

11月始めから計10回の研修。その後ようやく迎えた「雪と遊ぼう!親と子の療育キャンプ」の本番。記者にとっても障害のある子どもたちと寝食をともにする経験は初めてでしたが、時間をかけた研修のおかげで、子どもたちに安心してキャンプを楽しんでもらえたのではないかと思います。
もっとも、子どもたちの移動や食事の介助などはかなりの重労働でした。日々、こうした介助をしている保護者の方々の大変さが少しわかったような気がしました。
今回の雪遊びのように、子どもたちが普段できないようなことをするためには、ボランティアや地元の人たちの協力も不可欠でしょう。家族だけでなく、ボランティアをはじめ社会でこの子たちを支える人がもっとたくさん必要なのだと強く思いました。

2011年5月21日掲載  取材: 松本

今回でキャンプのリポートは終わります。最後までお読みいただきありがとうございました。
次回からも、各地で行われているユニークな活動を紹介していきます。どうぞお楽しみに。


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