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NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

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NHK厚生文化事業団


ボランティアネット アーカイブ


雪で遊ぼう!“身体に障害のある子の介助ボランティア”(2)

「身体の不自由な子どもたちに雪の中で思いっきりあそんでもらいたい!」という思いから始まった“雪と遊ぼう;親と子の療育キャンプ”。今回、ボランティアネットの記者がこのキャンプにボランティアとして参加しました。
研修を通じて、身体に障害のある子どもたちへの接し方や、介助の方法を学びます。

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昨年度のキャンプより

二回目の研修は介助方法の実習です。学ぶことがたくさんあるため、日曜日一日をつかって研修が行われました。この日からボランティアたちは4つのグループに分かれます。今後はグループごとに研修を進めながら交流を深め、キャンプ中もこのグループで子どもたちの生活を支えます。1グループに参加するボランティアの数は8〜9人。この人数で5〜7人の子どもを支えます。キャンプ期間中、ボランティアは移動・食事・排泄・入浴など生活全ての面で子どもの介助を行い、特に移動を2人がかりで行うこともあります。そのため、子どもの数よりも多くのボランティアが必要になるのです。

車いすの操作

実技研修は車いすの操作から始まりました。同じグループのボランティアに車いすに乗ってもらい、それを押して最寄りの小竹向原駅まで歩きます。
幅の広い車いすで街を歩くと、場所によっては車道にはみ出てしまうことがあります。すぐ近くを車が通り過ぎ、ヒヤリとさせられることが何回もありました。

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また、普段は気に留めることのない段差の上り下りが、車いすだと一苦労です。
特に段差を下りるときは、座っている人が前方に飛び出してしまわないよう車いすを進行方向と逆向きにし、前輪を持ち上げつつ後ろ向きで下りる必要があります。車いすを操作した経験がない記者がチャレンジしたところ、力の入れ方やタイミングの計り方が難しく、よろけてしまいました。

「体と車いすを密着させて!離れると不安定になるよ!」
ベテランのボランティアのアドバイスを受けながら練習した結果、スムーズに上り下りできるようになりました。

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駅に到着したら、今度は車いすをエスカレーターに乗せる練習です。キャンプ当日の朝、上越新幹線の浦佐駅でエスカレーターを利用する場面があるため、こうした練習は欠かせません。鉄道会社の協力により、小竹向原駅のエスカレーターを利用して練習しました。貴重な機会なので、他の乗客の迷惑にならないように、みんな真剣にとりくみました。

この研修で、記者は車いすに座り介助を受ける立場を体験しました。エスカレーターに乗るとき、段差にあわせて車いすが大きく傾くので、とても怖かったのですが、前後にボランティアがついてしっかり支えてくれたので、安心することができました。
エスカレーター乗降中、車いすに座っている人は自分の意志で動くことができず、ボランティアに身を任せるしかありません。この研修で介助してもらう立場を経験したことで、改めてボランティアの責任の重さを感じました。

移動の訓練は重労働

午後の研修は、トランスファー(子どもを抱きかかえて移動する技術)から始まりました。 子どもに見立てた砂袋を抱きかかえ、階段を昇り降りします。袋の重さは約20kg。女性にとってはかなりの重さです。 写真
抱きかかえる際、前かがみになって持ち上げようとすると腰に大きな負担がかかってしまいます。経験豊富なボランティアからアドバイスを受け、まずひざを折って低い姿勢を作ってから、背筋を伸ばしつつ体を密着させると、楽に持ち上げることができました。

研修中、講師役のボランティアから「声掛けもしっかりやってください」という注意を受けました。無言で子どもを抱きかかえようすると、相手をびっくりさせてしまうことがあるそうです。練習では、本番を想定して「○○君、2階に行くからね。ちょっと持ち上げるよ」「これから階段を登るからね。横向きになるよ」といった、相手を不安にさせないような言葉がけをしました。

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次は2人1組になって、子どもを運ぶ練習です。キャンプに参加する子どもの中には体重が重い子もいます。そのため、ボランティアの1人が子ども役になって練習を行いました。大の大人を抱きかかえるので、2人がかりでも相当な重さです。

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「おもい〜!」「腕が折れそう‥‥」と辛そうな声があちこちから聴こえてきます。ここでは抱きかかえる2人の呼吸が大切です。「イッチニ、イッチニ」の掛け声にあわせて階段を上り下りします。2,3回上り下りすると、みんなヘトヘトになってしまいました。

難しい着替えの練習

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続いては着替えの練習です。寝かせた状態で衣類の着脱を行うのですが、キャンプに参加する子どもの中には、筋肉の緊張があり手足が曲がったり突っ張ったりしたままの子がいます。そこで研修では、子ども役となる人がわざと手足を動かさないようにして、衣類を着脱する練習をしました。

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まず記者が上着を着させてみたのですが、相手の手を無理に引っ張って袖を通そうとしても、うまくいきませんでした。そこでベテランのボランティアから上手な着替えの方法を教えてもらいました。まず相手が着る衣類の袖を自分の腕に裏返しにして通し、次に相手の手を握って自分の腕から相手の腕へと袖を通していくと、スムーズに着替えさせることができました。

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衣類の着脱で一番難しいのは、意外にも手袋なのだそうです。多くの子どもは手を握りしめているため、五本の指すべてを手袋に通すのは大変難しい作業になります。

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研修でも、相手に手を握りしめてもらい、その状態で手袋をはめてみました。指を一本一本解きほぐしながら手袋に入れていくので、はめる側もはめられる側も大変根気がいります。みんな「全然入らないよ・・・」と悪戦苦闘していました。片方の手袋をはめるのに10分以上かかる人もいました。記者も苦戦しましたが、ここでもベテランのボランティアにコツを教えてもらいました。そのコツとは、手袋をはめられる人の手首を下に折り曲げること。こうすると自然と指が伸びるのだそうです。確かに手首を折り曲げてあげると握りしめていた指が自然と伸び、手袋がはめやすくなりました。

中国からの留学生も参加

二日目の実技研修はかなり密度の濃いものになりました。記者にとっては覚えることがたくさんあり大変な一日でした。でも、一緒のグループで研修を受けている中国からの留学生、史 紅雪(し こうせつ)さんにとっては、日本語の壁もあり、記者よりもさらに大変な一日だったようです。

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史さんは今年の4月に日本にやってきたばかり。当然、今回のキャンプも初参加です。今日の研修では、グループで車いすを押しながら街を歩いたとき、まだ史さんのキャンプネームが決まっていないことが話題になりました。他のボランティアからは「どんなスポーツをするの?」「特技はなに?」などと、たくさん質問が出されました。そして「料理は何が好き?」という質問に史さんが「魚料理が好き」と答えたことで、キャンプネームは“タラちゃん”となりました。

「私は将来、ボランティア活動を広める仕事をしたいと思っているので、このキャンプに参加しました。中国では、イベントのお手伝いのボランティアをしたことがありますが、障害のある子どもとかかわるのは初めてです。私はまだ日本語がそれほど上手ではないので、最初の研修でお話がよく理解できず、続けられるかどうか不安になってしまいました。でも今日グループのみんなで車いすを押しながら街を歩いているとき、仲間たちが私にいろんな質問をしてきてくれて、とても嬉しかった。今日はグループの仲間を抱きかかえたりして、かなり疲れましたが、寮に帰ったら留学生の友達を相手にして復習したいと思います。」と話してくれました。

二日目の実技研修は、肉体的にかなりの重労働でした。特にボランティアを抱きかかえて階段を上り下りしたせいで、翌日は筋肉痛に悩まされました。また、記者はこれまで人を抱きかかえたり、寝たままで着替えさせるといった経験をしたことがなかったので、とても戸惑いました。しかし、「抱きかかえる際子どもが不安にならないよう声をかける」「衣類の着脱では無理がないよう相手の手足や体の向きを変えてあげる」といった、ベテランのボランティアからのアドバイスが大変参考になりました。そして、どんなときも常に子どもの側に立って考え、行動することが大切だということを痛感しました。

2011年1月14日掲載  取材: 松本

次回は、キャンプに先立ち、参加者一堂が顔を揃える“全体会”の様子をリポートします。ボランティアたちは、この全体会で初めて子どもたちと出会うことになります。どんな個性を持った子どもたちがやってくるのか、またボランティアは子どもたちをきちんと支えることができるのか。初めて研修の成果が問われる一日でした。お楽しみに。


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