ページ内のショートカット(この場所に戻ります)

  1. このページの本文
  2. サイトメニュー
  3. サイト内検索/文字サイズ変更
  4. このサイトについての情報

NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

サイトマップ
サイト内検索

文字サイズを変更できます

NHK厚生文化事業団


ボランティアネット アーカイブ


  • 記事一覧へ

企業ボランティア事例紹介

アフターフェイズ有限会社

東日本大震災が発生してから3か月が経過しました。いまだに元の日常生活に戻れない被災者が多く、依然として支援物資を必要とする状況が続いています。

しかし、災害時のニーズは刻々と変化するため、個人からの物資の支援はさまざまな問題を抱えています。
個人による少量の物資がそのまま被災地に送られると、被災地のニーズをまかないきれないばかりでなく、届いた物資を被災地で仕分けることが大きな負担となります。そのため必要なものが必要な場所に行き届かないという結果になってしまいます。

またメディアなどで、例えば『おむつが足りない』といった情報が流れると、全国からたくさんのおむつが被災地に送られ、押し寄せた物資があふれてしまうといったことが起こります。
こうしたことが過去の災害で幾度となく起きたため「押し寄せる救援物資は二次災害」とまで言われることもあります。

今回の震災での物資の支援は、ネットワークを通じた被災地と支援者のマッチングが行われています。

このような物資提供のための情報面を支援するために立ち上げられたサイトのひとつ“アゲマス”を開発し、運営しているのがアフターフェイズ有限会社(東京都江東区)です。

物資のマッチング

写真
サイトのトップページ
必要な情報が簡潔に凝縮されている
支援物資のマッチングサイトとは、被災した人は欲しいものを、支援したい人は提供できるものをそれぞれ登録し、サイト上でそれらの引き合わせを行うというものです。
被災地のニーズを登録することで、必要とされている物資をピンポイントで、無駄なく送り届けることができます。

逆に支援したい人は、使ってもらえそうな衣類、被災地で必要とされそうな生活用品、使っていない家電製品などを登録することで、受け取り手をさがすことができます。
物資のやり取りが終わったら登録を消すことで、物資があふれずに的確な支援が行える仕組みになっています。

支援する人は提供できる品物を登録、被災者は欲しい品物を申し込むことができます。受付物資は「生活をスタートするために必要なものは、どんな小さなものでも構いません」としています。支援者から登録された物資は、細かくカテゴリー別にわけて表示できるようになっていて、被災者が欲しいものを探しやすくしています。そして、避難所生活などでネットワークが使えない状況を考えて、携帯電話からもサイトを利用できるようにしたり、ツイッターやフェイスブックとも連動させて広く情報を公開できるように工夫しています。

このアゲマスを運営しているアフターフェイズ有限会社は、橋口英幸さんと青木裕児さんの2人が立ち上げ、中古車検索サイトやゴルフクラブ専門のショッピングサイトなどネットサービスの開発・運営を行っている会社です。

写真 震災の発生後、仙台で支援活動をしている親友を手伝っていた青木さんが、自分たちの会社でも何かできないかと考えたのがそもそものきっかけでした。
その当時企画を進めていた、不用品リサイクルのためのマッチングサイトを急きょ被災者用に変更し、“アゲマス”として運営することを決めました。

写真 橋口さんは、
「本業がサイト運営で、欲しい人と欲しいものをネットでつなぐ役割を果たしている会社なので、支援物資もマッチングできたほうがいいのではないかと考えたんです」と言います。

写真
提供できる物資を写真で掲載
アゲマスでは身の回りの生活必需品を中心とした物資のやり取りが行われ、立ち上げてから2か月で合計約3000件に及びました。
ニーズとして多いのは、洗濯機や掃除機など家電製品からノートパソコンなどの情報機器。そのほかに幼稚園・小学生用のリコーダー、ピアニカなど楽器類、マンガやゲームなど遊び道具、復旧作業用の砂・砂利や石灰などもあります。

そしてちょっと意外なものに、漁師の“大漁旗”というのもありました。要望している人は、沿岸部を慰問する際に“漁業・漁師さんの誇りの証”である大漁旗をなびかせ、それを直接手渡ししたいと記しています。

物資を送る際の送料は基本的には支援者が負担しますが、品物や送付場所によって臨機応変に対応できるように、支援者と被災者がサイト上で相談できるようになっています。

写真 橋口さんは
「まだ避難所生活をしている被災者もいるので、これから日常生活に戻った後にもっとニーズが細分化してくると思います」と話します。

物資のマッチング

——利用者からどんな声がありましたか?
写真
集まった物資の情報やニーズは
ツィッターへも配信される

「個人の利用者に対して、団体からいくつでもどうぞと提供がある場合、ためらわれるということがあるようです。今後は個人と団体からの大口を区分けしたほうがいいのではないかとも考えています。あと利用者からの問い合わせがあるのは、欲しいという人がいても、それが被災者かどうかはっきりしないということです。その場合の確認をどうするかというのは課題です」

——そういった悪質な利用者に対して何か対策を考えていますか?
「実際に被災者になりすまして利用している人がいるという情報があって、その際はサイトにアクセスできないようにして対処しました。悪質な利用者がいたときに、サイトに通報するようなシステムなども考えてはいますが、現段階では、そこまでの必要はないと考えています。それに、私としてはそこまでしたくないという気持ちもあります。状況が状況ですから、ます情報をオープンにすることが大事だと考えていますし、利用する人も常識と互いに助け合う気持ちや善意を持って、アゲマスを利用してほしいです」

——今後は?
写真
さまざまな生活の知恵を集めた“チエッター”
これもツイッターに配信される

「震災によって非常事態に対する意識も高まってきているようなので、緊急時のお湯の沸かし方や泥水のろ過の仕方といった知恵や災害に関する情報などを出しあってデータ化して、それをみんなで共有できるようなサイトを考えています。情報をみんなで共有する手段としては、ネットが一番いいと思っています。“アゲマス”を物資のやり取りをする手段としてだけではなく、いろいろな情報を収集するサイトとして利用してもらえるようにできればと考えています」

と意気込みを見せる橋口さんですが、5月20日からツイッターで、生活を楽しく向上させるためのちょっとしたアイデアや得する情報を共有するサイト“チエッター”を立ち上げ、利用者に非常時のアイデアや日常の小さな便利術など募集して、みんなで共有しようと呼びかけています。

「ウェブサイトだと情報が更新されるたびにその都度サイトを見ないといけませんが、その点ツイッターは瞬時に情報が共有できるので、利用者からも使い勝手がいいという声が出ています」
と橋口さんは話します。

橋口さんたちの取り組みは、さまざまな媒体でも取り上げられ注目をされているのですが、特にPR活動などは行っておらず、ツイッターから広まったのだそうです。ここでもツイッターの特性が生かされています。

本業のノウハウをうまく支援活動に生かしているアフターフェイズ。アゲマスの今後に引き続き注目していきたいと思います。

2010年6月14日掲載  取材:眞鍋

  • 記事一覧へ

Copyright 2006 NHK Public Welfare Organization. All rights reserved.
許可なく転載することを禁じます。