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企業ボランティア事例紹介

横浜建設業青年会

“モノづくり”の楽しさと感動を伝えたい‥‥そんな思いから、子どもたちに建設業の体験を提供しています。
横浜建設業青年会は、横浜市で建設業、土木業を営む20歳から40歳までの経営者を中心とする集いです。メンバーは現在45人。将来の建設業を担う人材を育てようと、2004年から「次世代育成事業」を始めました。ボランティアで学生や子どもと一緒にコンクリート製のベンチやミニチュア住宅などをつくって、建設の仕事を身近に感じてもらおうという活動です。2010年にはCSR委員会を発足。年に2〜3回の企画を実施して、地域社会への貢献に取り組んでいます。

横浜建設業青年会CSR活動の目的は、ものづくり体験を通して、将来の職業選択に役立ててもらうことです。中でも2007年、横浜市常盤台小学校での活動は、横浜国立大学も参加して、小学生が“施主”、大学生が“設計者”、青年会が“施工者”という疑似体験をしながら、学校環境の改善に取り組みました。

写真大学生によるプレゼンテーション2007年9月、常盤台小学校5年の生徒136人に「小学校の校庭に何が欲しいか」というアンケート調査を行い、その結果を元に学生が設計プランを立てました。模型や完成予想図を見ながら子どもたちと協議を重ね、校庭の一画にトンボの形をした「トンボ畑」をつくることが決定しました。間伐材の切り株やウッドチップ、カラーコンクリートなど、実際に使う材料を見せると、子どもたちからは「楽しみ」「おもしろそう」という声がでました

写真間伐の様子11月、横浜市の水源かん養林がある山梨県道志村で、「トンボ畑」建設に使う間伐材の調達作業が行われました。青年会のメンバーと学生が間伐材を伐採し、さらに2mの長さに切断していきました。それをメンバーのトラックで小学校へ運びます。この日調達した間伐材は227本。水源かん養林を経営する横浜市から、無料で入手することが出来ました。

写真青年会による準備作業1月末、青年会が整地した場所に、トンボの骨組みをつくっていきました。トンボの胴体や羽にあたる部分は通路にし、その間を畑にする計画です。杭を打ち込み間伐材を固定していくとトンボの形が現れてきました。畑の部分に土を入れ、通路部分には砕石を敷きつめ下地をつくっていきます。

青年会によってトンボ型の骨格が完成すると、子どもたちも作業に参加します。間伐材から切り出した丸太をウッドチップシュレッダーにかけるとウッドチップができます。それをみんなで通路に敷きつめていきました。トンボの目にあたる部分は、片方を水飲み場に、片方を子どもたちが作ったカラーコンクリートを使ってレリーフにしました。畑の部分に花を植えて完成です。
写真花を植える 写真ウッドチップを敷きつめる作業 子どもたちからは、「長い時間かけて取り組んできたことが形になってうれしい」という声も上がり、ものづくりの感動を共有できた瞬間でした。

常盤台小学校5年1組担任だった武藤道子先生

写真完成した「トンボ畑」「子どもたちにとっては、プロの方の手さばきの一つ一つが興味深く「おー!」「さすがー!」と感嘆の声を上げていました。
外部の人と活動する場合、そこに至るまでの準備が学校にとっては負担になることがありますが、青年会の人たちが準備を万全にしてくれたおかげで、一つ一つの取り組みがスムーズにいきました。子どもたち全員喜んでやっていました。」

写真浜崎貴さん青年会メンバーの浜崎貴(はまざきたかし)さんは、参加した子どもたちの様子を次のように話してくれました。
浜崎さん「カラーコンクリートをつくる時に、モルタルを練る作業があるんですが、この時子どもたちはむちゃくちゃになって遊ぶんですよ。やっぱり泥遊びが好きなんですね。それに土を運ぶときなどは、子どもたちの間に競争意識が生まれるんですね。「僕もがんばる」「私もがんばる」って。そういう時の子どもたちの顔がいいんです。子どもたちの様子からいろんなことを感じられるのが、この活動の魅力です。」

写真工藤圭亮さん青年会のメンバー工藤圭亮(くどうけいすけ)さんは、うれしかった体験を話してくれました。
工藤さん「大学生の一人が、建設会社に就職が決まったと報告してくれたんです。もともと設計を志していたので、設計をやるのかって聞いたら、我々と同じ現場をやりたいって。みんなが汗かいてやっている様子がすごく楽しそうだったから、自分も机上の仕事ではなくて現場をやってみたい、と思ったそうです。子どもたちが将来の就職に、建設業を選んでくれればと思って活動してきたけど、本当に施工に就いた学生がいて嬉しかったですね。」

2010年3月には、子どもたちが遊びながらまちづくりを体験するイベント「ミニヨコハマシティー」に参加しました。会場となる総合住宅展示場「ハウススクエア横浜」の一画に、広さ3畳、高さ2メートルのミニチュア住宅を子どもたちが建てるという企画です。日本家屋の伝統的工法「在来軸組み工法」を採用し、実際に家を建てる時と同じ手順で行いました。

事前の準備は、図面の作成と材料の発注です。ミニチュアサイズの材木は、メンバーが普段取引している業者に特注しました。事前に組み立てて問題がないかも確かめました。

会場に来た子どもたちには、まず図面を渡し、材木を番号順に並べてもらいます。二人一組で、順に材木を組み立てていきます。土台、柱、梁、棟までかけると、棟上げが完了。最後に外壁となるベニヤをとりつけ、ミニチュア住宅の完成です。
のこぎりや金づち、電動ドライバーを使った作業は子どもたちに大人気です。でも安全が第一。電動工具を使う時は必ずメンバーが手を添え、高い場所での作業は数人のメンバーが周りで支えました。

家づくりに参加した関将吾くん(小学6年生)に感想を聞きました。

「材木を組み合わせる作業が難しかったです。左右が傾いているとうまくはまらないので、皆で力を合わせなくてはなりません。家づくりって大変だなと思いました。小さい子どもたちが釘を打った後を、再度打ってならしていく作業は、自分がプロになったみたいで楽しかったです。最近は、お父さんの日曜大工を手伝うこともあります。今度、自分用の机をつくりたいです。」

写真安藤竜一さん活動を行っていく上でのポイントについて、横浜建設業青年会会長の安藤竜一(あんどうりゅういち)さんに聞きました。
安藤さん「まず大切なのは、学校とのつながりをつくることです。活動を始めた当初は、私たちと共に活動をしてくれる学校を紹介してくれるよう市に相談したこともありました。でもなかなか話が進みませんでした。そこで、青年会のメンバーの娘や息子のいる学校を中心に活動していくようになりました。小学校には環境学習のカリキュラムがあり、その時間を割いてくれることが多いです。4月から一緒に活動してくれる学校を探していきます。打ち合わせや準備に子どもたちが参加することもあります。そして2月、3月に集大成としての体験活動を行います。一年がかりの取り組みです。

もう一つは安全への配慮です。作業中の子どもたちの安全確保はもちろん、花壇などをつくる時には段差をつくらない。段差のあるものをつくった時は、その段差を解消するための配慮をする、といったことに気をつけています。」

活動にかかる費用については、次のように話しています。
安藤さん「工具や機材、ダンプカーなどは、メンバーが持ち寄ります。ウッドチップシュレッダーなどをレンタルする場合は、日頃からおつき合いのある業者さんに、活動の内容を説明し理解してもらって、無償で貸していただいています。材木などは、イベントなどで使った廃材をリサイクルしたり、間伐材をもらったりして材料費をおさえています。最終的にかかった費用はみんなで負担します。そして、私たちの提供する知恵と労力はもちろんボランティア。仕事の合間をぬって、メンバー同士補い合いながら活動しています。」

最後に、この活動に込める思いを聞きました。
安藤さん「私たちは普段、道路の補修や建物の建設、街の災害時対策やインフラの整備といった公共事業にたずさわっています。市民の暮らしやすい街にすること、それが私たちの仕事なんです。街が暮らしやすくなれば市民や企業が活動しやすくなります。それによって街が豊かになれば地方から移り住んでくる人も増えるでしょう。その中に家を建てようという人がいれば、私たちの仕事にもつながってきます。私たちの仕事は地域とともに発展していくわけです。

私たちは、CSR活動を通して、ものづくりの楽しさとともに、こうした街づくりの意味についても伝えています。それによって100人のうちの一人でもいいので、建設の仕事をしてみたいと思う子どもたちが育ってくれること、そのきっかけをつくることが私たちの一番の目的です。
たとえそれが就職につながらなくても、建設業を身近に感じることで、公共工事というのは、こんな地元の仲間がやっているんだ、ということが伝わればと思っています。我々が家の前の道路を掘って、夜中に水道の工事をやっていたら、御苦労さま、という一言が言えるような人たちになってほしい。建設業への理解者が増えていくことで、自然とこの仕事に就きたいという人も増え、この街を良くしていこうという思いにもつながっていくのではないかと思います。」

子どもたちを通じて、保護者、学校関係者、地域の人との関係も深めていきたい、という横浜建設業青年会。メンバーがそれぞれの知識と技術を使い、ネットワークを駆使しながら、独自の社会貢献活動を行っていました。その根底に、地域の発展と業界の明日にかける若き経営者たちの熱意を感じました。

2010年8月18日掲載  取材:大和田恭子

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