「交流教室 パラリンピアンがやってきた!」を神奈川県横浜市で開催しました
公開日:2026年9月7日

横浜市青葉区、“あざみ野の森”に抱かれた私立桐蔭学園小学校で、「交流教室 パラリンピアンがやってきた」を2026年7月21日に開催しました。夏休みが始まったばかりですが、学年の垣根を越えて3年生から6年生の43名の子どもたちが集まってくれました。
この日の交流教室で体験するのは、ブラインドサッカー。アイマスクを着け、ボールの中の鈴の音や仲間の声を頼りにプレーをします。耳を澄まし、声を掛けあい、仲間を信じて動くスポーツです。
ゲストは、乃木坂ナイツに所属する葭原 滋男(よしはら しげお)選手。親しみをこめて“よっしー”と呼ばれています。同じチームで活動する3名の仲間たち、田中 茂樹選手、仲伏 真与選手、磯村 江里選手も一緒に参加してくれました。

よっしーは10歳の頃、目に病気があることがわかりました。その後、少しずつ視力を失い、現在は光を感じることはできても、人の姿を見ることはできません。ふだんは白杖を使い、周囲の音や人の声などを頼りに生活しています。
大人になり視覚障害者と認定されたとき、大きな不安があったといいます。
「これから、かわいそうな人生を送るのかな」
「誰かに助けてもらわないと、生活できないのかな」
それでも、自分の人生をあきらめることはしませんでした。
「工夫すれば、できることはまだまだあるんじゃないか」
そう考え、大好きだったスポーツの世界へ。走り高跳び、自転車競技に挑戦し、パラリンピックの舞台でメダルを獲得。その後、ブラインドサッカーへ転向し、日本代表としても活躍しました。現在も乃木坂ナイツの選手としてボールを追い続けています。
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そんなよっしーが子どもたちに伝えたのは、挑戦すること、あきらめないこと、そして仲間と協力すること。
走り高跳びでは、失敗するたびに
「なぜ跳べなかったんだろう」
「次はどうすればいいかな」と考え、何度も跳び直したといいます。
「だから、みんなも、いっぱい失敗してほしい。‟失敗しないで“ではなく、いっぱい失敗してほしい。できなかったら、考えて、工夫して、もう一度やってみればいい」
よっしー自身が何度も失敗し、挑戦し続けてきた言葉に、子どもたちはじっと耳を傾けていました。
そして、いよいよ子どもたちの体験が始まります。
【怖い…からの第一歩】
アイマスクを着けた瞬間、それまで見えていた体育館が真っ暗になります。
「怖い…」
さっきまで元気いっぱいだった子どもたちの足がピタリと止まりました。たった一歩がなかなか出ない。そんなとき、周りから次々に声が飛んできます。
「大丈夫!」「もう少し右」「半歩左」「ゆっくり」「そのまま、まっすぐ!」その声を頼りに一歩。また一歩。歩いてみる。パートナーのかけ声に合わせて体操をする。鈴の音を追いかけ、ボールを蹴る。
最初は自分が動くことで精一杯だった子どもたちも周りの声に耳を澄ませ、作戦会議では「どう言えば相手に伝わるんだろう」と今度は伝える側になって考えます。
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体験を終えると、こんな声が聞こえてきました。
「最初は暗くて怖かったけど、最後は楽しかった」「一人ではできなかったけど、パートナーが教えてくれたからできた」「みんなで声を掛け合うことが大事だと思った」見えないことを体験したことで、誰かの声が安心につながること。一人では難しいことも誰かと一緒ならできること。子どもたちは、体を動かしながら、感じ取っていきました。
【どういえば伝わる?】
子どもたちがよっしーに体育館の様子を伝えます。
「後ろに舞台があるよ!」「バスケットゴールがあるよ!」でも、「こっち、あっち」だけでは伝わりません。そこで、よっしーに教えてもらったのが「クロックポジション」です。自分の正面を時計の12時に見立て、時計の針で方向を伝えます。
「3時の方向にバスケットゴールがあるよ!」
「先生は10時の方向にいるよ」
子どもたちは体育館の見えているものを、一生懸命伝えていきます。
「なるほど、体育館が見えてきたぞ!」のよっしーの一言に、子どもたちの表情が明るくなりました。
自分には見えているものも、相手には見えていない。でも、相手の立場になって伝え方を工夫すれば、ちゃんと届く。子どもたちは、よっしーとのやり取りの中で、伝えることの難しさとうれしさを知りました。
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【今度は自分から!】
よっしーは、街を白杖を使って歩いていると困ることもあると話します。白杖を持つ人を見かけて、困っているのかなと思っても、「なんて声を掛ければいいんだろう」とためらうことがあるかもしれません。そんなときは、
「大丈夫ですか?」
「何かお手伝いしましょうか?」
その一言だけでも、とても安心するそうです。話を聞いた子どもたちから、「今度、白杖を持っている人を見たら声を掛けたい」「駅で困っている人がいたら、声を掛けられるようになりたい」
という言葉が出てきました。
交流教室の始まりには「見えないのは怖い」と感じていた子どもたち。それが数時間後には「これからは自分から声を掛けたい」へ、体験を通じて、子どもたちの気持ちが動き始めていました。
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【できないを変えてみる!】
桐蔭学園小学校の先生たちがこの交流教室を通して児童に伝えたかったのは「障害がある人はかわいそう」ということではありません。誰にだって、苦手なことやできないことはある。でも、工夫したり、誰かと一緒に考えたりすれば、「できない」が「できる」に変わることもあります。何より、目の前のよっしーが笑って、スポーツを楽しみ、挑戦を続けている。その姿を子どもたちに見てほしかった。人が人を変えることがある。葭原選手との出会いが、子どもたちにとって何かのきっかけになったら、と言います。
よっしーも最後に、これは視覚障害のある人だけの話ではないんだよと子どもたちに伝えました。学校にも、困っている友達がいるかもしれない。いつもより元気のない子がいるかもしれない。
そんなときに「大丈夫?」と声を掛けてみる。それも、今日みんなが体験したことと、どこかでつながっています。
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【“大丈夫のバトン”をいつか誰かへ】
最初は怖くて足が止まっていた子が、最後には笑顔でボールを追いかけていました。
「大丈夫!」と声を掛けてもらっていた子が、今度は他の子に「大丈夫だよ」と声を掛ける。
よっしーに出会い、話を聞き、一緒に体を動かした数時間。そこで感じたことは、一人ひとり違うはずです。
いつか街で白杖を持った人を見かけたとき、
教室で困っている友達に気づいたとき、自分自身が「できない」と立ち止まりそうになったとき、今日の体験を思い出すかもしれません。
「大丈夫?」その一言で、誰かの止まっていた足が前へ動く。今日、自分がそうしてもらったように。
43人の子どもたちの心に芽生えた小さな気づきは、体育館を出たあとも、子どもたちの中でしんと光り日常の中で息づいていきます。
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※ブラインドサッカー®は日本ブラインドサッカー協会の登録商標です。

