福祉とアート。
その関係性を、キュレーターの視点を通じて見つめる「HEARTS & ARTS」

今回ご紹介するのは、山根 暁 (やまね あきら)さんの作品です。
キュレーターは小林 瑞恵さん(社会福祉法人愛成会 理事長、アートディレクター、キュレーター)です。

キュレーターより 《小林 瑞恵さん》

山根暁  やまね・あきら
1997年生まれ 岡山県在住

山根暁は、3、4歳の頃から創作を始めた。中学生になると、ガンダムをはじめとする漫画やアニメに登場するロボットに関心を持ち、それらを参考にしながら立体作品を作るようになった。二次元に描かれたロボットを、自分の手で三次元のかたちにしてみたいという思いが、創作の原点にある。
ただし、山根の作品は、漫画やアニメのロボットをそのまま再現したものではない。本人は「自分の想像では補えない部分を漫画やアニメを参考にして、ベース、つまりロボットの骨格を作っている」と語る。参考にするイメージを出発点としながらも、独自の発想と工夫を重ね、オリジナルのロボットを生み出している。

 

 

制作を始めた当初は、パーツごとに作って組み合わせていたが、高校を卒業する頃からは骨組みを意識するようになった。作品は次第に、より細かく、より丈夫に、そして自由に動くものへと変化していく。当初は厚紙を使っていたが、現在はプラスチック製のバインダーファイルを切り取り、強度を持たせて制作している。すべての関節が曲がるように作られており、漫画やアニメで見た必殺技のポーズも再現できる。

山根の作品で印象的なのは、その独特な薄さである。正面から見ると力強いロボットに見えるが、横から見ると非常に薄く作られていることがわかる。本人はその理由について、「薄いと持ち運びがしやすい」「使っている素材が薄かった」「薄い方が動きが取りやすい」と話す。素材の特性や扱いやすさから生まれた形が、結果として山根作品の大きな特徴となっている。

 

制作は自宅で行われる。プラスチック製のバインダーに修正液で下地を塗り、その上からマジックで色をのせていく。指の関節にはアルミ帯と黒いビニールテープを用いる。身近な材料から、精巧で可動性の高いロボットたちが生み出されている。
山根はロボット本体だけでなく、剣、ピストル、翼などの装備も制作し、自由にカスタマイズできるようにしている。さらに、ロボットが馬に乗る、バンドを組んで演奏するなど、ロボットとさまざまな要素を組み合わせながら、その世界を広げている。

山根のロボットは、漫画やアニメへの憧れから始まり、素材への工夫、構造への探究、動きへのこだわりによって、独自の表現へと発展してきた。身近な材料から生まれるその姿には、山根ならではの想像力と、理想のロボットを追い求める探究心が息づいている。


プロフィール

小林 瑞恵(こばやし・みずえ)
社会福祉法人愛成会 理事長、アートディレクター、キュレーター。アール・ブリュット関連の展覧会をフランスやイギリス、オランダ等の海外や日本国内にて数多く手がける。2004年に障害の有無、年齢などに関わらず誰でも参加できる創作活動の場 「アトリエpangaea」(東京都)を立ち上げる。近年はアートや音楽、ダンスも入れたインクルーシブなワークショップを企画、開催している。2010年から東京・中野区で毎年開催されている「NAKANO街中まるごと美術館」の立ち上げから、現在も企画・運営等に携わる。


これまでのHEARTS & ARTSは、こちらのページでご覧いただけます。

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