9月1日(土曜日)、東京・築地の浜離宮朝日ホールでNHKハートフォーラム「『さみしい』『死にたい』と向き合う~いま求められる支援とは~」を開催しました。
当事業団では数年にわたり精神疾患に関するフォーラムを開催しました。取材を重ねるなかで浮かび上がった課題は、死にたい気持ちを抱える人は、マイナスな気持ちを吐露できる「安心できる居場所」がない、ということ。
今回のフォーラムではあえて病名などでトピックを限定せず、どうすればそんな居場所を確保できるのか、考えました。
当日は居場所を求める当事者や家族、実際に居場所づくりに取り組む福祉関係者などを中心に246人が来場しました。

第一部 なぜ今、安心できる居場所がないのか?

第一部では、精神科医の松本 俊彦さんと、ウェブ検索を活用して相談の事業を行うNPO法人OVAの伊藤 次郎さんが登壇。荻上チキさんの司会で、「なぜ今、心できる居場所がないのか?」考えました。

松本さんはまず、自殺に至るまでの「所属感の減弱」「負担感の知覚」「自殺潜在能力」という3つの要素を紹介。
なかでも大きいのは、「所属感の減弱」と「負担感の知覚」。自分の居場所がないという感覚や、自分がいることが周囲の迷惑になっているという感覚が、死にたい気持ちを増幅させるといいます。
さらに、暴力や自傷などから痛みに対する耐性がつくと、自殺を実行するための「自殺潜在能力」が高まってしまうのだそうです。
死にたい気持ちについて考える前提として、自分がいることが迷惑ではないと思える居場所が必要なのだと話しました。

伊藤さんは、活動をする中で感じている課題を紹介。世間には生活保護や地域活動支援センターなど、居場所や金銭的な支援を提供するしくみは存在するものの、支援を行う側の課題、受ける側の課題、社会的な課題と、それぞれの立場が「障壁」を抱えているといいます。
支援を行う側の課題は本人のニーズを把握しきれないこと、情報を届けきれないこと。受ける側の課題は、それまでの経験から支援を要請する気力がないこと、自分に保障されるべき権利を知らないこと。 
また社会的な課題については、伊藤さんが相談を受けた人の中に「ネットで生活保護を受けるやつがバッシングされていた。生活保護を受けるぐらいなら死ぬ」という人がいるなど、誤った風潮が自分の価値観となり、「安心できる居場所」への障壁となっていると指摘しました。

第二部 自助グループメンバーと考える
安心できる居場所」に必要なこと

第二部では、
〇東京都・四谷周辺で、うつ病当事者や生きづらさを感じる人がミーティングやヨガ教室などを通して交流する「ReOPA」(レオパ)
〇神奈川県横浜周辺で誰もが参加でき、「コンプレックス」「欲望」など誰にも共通する話題を話す「在」
〇栃木県・小山市で「自分の元気を出す道具箱」を一緒に作る「WRAPやっちゃおやま」
以上3グループが参加して、「安心できる居場所に必要なこと」を考えました。
自助グループは「うつ病」「生きづらさを感じる方」など共通の属性を持った人々が集まり、本音を話したり情報交換したりすることを通して、安心できる場をつくる集まりです。
それぞれのグループは、ミーティングの際
「ルールは毎回参加者と一緒に決める」「毎回一定のものを使う」
「参加は無料」「参加費を500円徴収する」など、
安心できる場所であるために、それぞれ工夫をしています。司会の荻上さんは「無料の方が参加ハードルは低いものの、お金を払った方が参加意識が高まったり、負担感が薄れたりする」などメリット・デメリットを考察し、会場に伝えました。

他にもいくつものトピックで豊かなディスカッションが繰り広げられ、
アンケートには「死にたい気持ちを抱える人との話し方が参考になった」「自助グループというものすら知らなかったが居場所として必要だと思った」「自助グループなどの場に参加してみようと思った」といった声が寄せられました。

NHK厚生文化事業団では参加した方がそれまで言語化できていなかった感情に気づけたり、新たなつながりを得るきっかけになるようなフォーラムを企画してまいります。
今回参加できなかった方も、是非今後の情報にご注目ください。