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わかばなかま

支援団体の活動リポート

ひまわりのお家「園児と園舎をまもる玄関ができました!」

茨城県水戸市の「ひまわりのお家」は、未就学児の保育や、障害のある子の学童保育、保育付き講座の開催などの子育て支援を行うNPOです。自然にたくさん触れて生きる力を身につけてほしいという保育理念のもと、家庭的な雰囲気の園舎と広い園庭で、障害のある子もない子も一緒にのびのびと過ごしています。
第23回「わかば基金」の支援を受け新しい玄関を設置したことで、障害のある子どもの出入りや雨天時の送迎がしやすくなったと喜ばれています。

画像:「ひまわりのお家」全景

はじまりは、自宅の一室での託児ルームから

画像:「ひまわりのお家」出入口

「ひまわりのお家」のスタートは1997年。理事長の木村 裕子さんが、自身の子育てがひと段落したことを機に、自宅の一室で託児ルームを開きました。子育て仲間の母親たちの協力を得て始めた託児ルームは、木村さんがかつて保育士として障害のある子の療育教室などで働いていたこともあり、自然な流れで障害のある子どもを受け入れるようになりました。徐々に利用人数が増えて自宅の一室だけでは手狭になったため、現在の場所に移転し、2007年にはNPO法人となりました。

画像:園庭の砂場で遊ぶ子どもたち

現在、1日平均20人が「ひまわりのお家」の保育を利用しています。そのうち約2割が肢体不自由や発達障害などがある子どもです。
障害のある子とない子が一緒に育ちあう統合保育と、屋外活動をふんだんに取り入れた保育内容、少人数ならではのアットホームさにひかれて、入園を希望してくる家庭も増えてきたそうです。

「ひまわりのお家」では、保育のほかに、障害のある子どもの学童保育や、障害のある子をもつ保護者の相談事業、専門家による講演会や親子向けプログラムなどの啓発事業にも取り組んでいます。

震災後の園舎の安全を確保したい

2011年3月の東日本大震災で、水戸市は震度6弱を観測しました。
「ひまわりのお家」の園舎は、平屋の戸建てと、プレハブのホールが渡り廊下でつながっています。
毎月避難訓練をしていたこともあって、障害のある子どもも落ち着いて避難できて全員無事でした。ただ、園舎は、戸建て部分の屋根瓦がすべて落ちる被害を受けました。
幸い、プレハブ部分は耐震工事が終わったばかりで無傷だったため、震災当日は園児の家族や近隣住民に避難所として開放し、翌日以降も一日も休むことなく保育を続けました。少しでも早く元の生活ができるようにと、保護者の有志が屋根の修理をかって出てくれて、戸建て部分の屋根も3月中には元通りになりました。
しかし、その後も余震は相次ぎ、原発事故による放射能の影響も心配されるようになりました。
これまで「ひまわりのお家」には玄関がなく、戸建ての掃き出し窓のある縁側から出入りしていました。雨の日は、子どもたちが出入りの際に濡れてしまったり、雨が屋内に吹きこんだりしていたため、子どもたちができるだけ雨にあたらずに出入りできる玄関を設置したいと考えるようになったそうです。

画像:贈呈式で支援金を受けとる理事長の木村さん

玄関の設置と、戸建て部分の耐震補強工事を検討したものの、認可外保育施設には公的な補助がないため、工事費用は自力で調達しなければなりません。補助金や助成金を探していたところに偶然、第23回「わかば基金」の募集を知り、申請したところ支援が決定。念願の園舎の改修工事が実現することになりました。


安心感がゆとりを生みだす

画像:玄関設置の基礎工事から完成まで

工事期間中は、工事用車両の駐車で園庭が使えなくなったり、大きな音がしたりして、障害のある子が過ごしづらくなるのではないかと木村さんたちは心配しましたが、子どもたちは車両を見て喜んだりと、思いのほか影響を受けずに過ごせたそうです。

新しく作られた玄関は、これまで子どもたちが出入りに使っていた縁側の2倍近い奥行きがあります。下駄箱や傘置き場も設置できて、雨にあたらずに身支度をするスペースが確保されました。小さな子どもが下駄箱から自分の靴を出してちょこんと座って靴を履いたり、手足の不自由な子どもが自力で玄関に降りて身支度をしたり。子どもたちが出入りする様子に、玄関ができて安全性が高まっただけでなく、子どもたちが自分のことにじっくりと取り組むゆとりにもつながっているように感じました。

戸建て部分の園舎は、壁の中に鉄骨を入れて補強しました。耐震検査もしてもらい、安全性はお墨付きです。保護者にも保育士にも安心感が広がりました。

木村さんは、「『わかば基金』の支援を受けたことは、保護者や関係先からの信頼にもつながりますし、私たち保育士にとっては、日頃の活動を評価していただいたと、とても励みになっています」と話していました。

画像:玄関で靴をはいて外に出るこどもたち

「ひまわりのお家」が自宅の一室からスタートして15年。認可外の保育施設のため、財政的には不安定でやりくりに四苦八苦の連続だと木村さんは苦笑します。それでも、東日本大震災の時には、九州に実家がある関係者が食材を調達してくれたり、県外に転出した卒園児の親が野菜を送ってくれたりと、さまざまな人からの支援を受けることができ、少人数で一人一人としっかり向き合ってきたことのやりがいをあらためて実感したそうです。

「ひまわりのお家」は、保育施設としては小規模ですが、雰囲気はまるでアットホームな大家族といった感じです。保育や相談を利用する親子に寄り添って、一緒に成長しています。

(2012年6月13日記)

特定非営利活動法人 子育て支援グループ「ひまわりのお家」は、第23回(平成23年度)第1部門の支援グループです。
連絡先や活動内容については、「ひまわりのお家」のホームページをご覧ください。