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活動リポート

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2015年1月23日

品川で認知症フォーラムを開催しました

品川区のきゅりあん大ホールで、1月23日、フォーラム「認知症新時代 いきいきと暮らすために」を開催し、850人の聴講者が参加しました。認知症の専門医や地域で活躍する医師、介護施設職員、当事者と支援者が登壇し、「認知症になってもいきいきと暮らすためにはどうすればいいのか」を、実際の生活場面の映像を見ながら、医療情報、介護の重要性、当事者の気持ちなどを語り合いました。

出演者

  • 青山 仁(認知症当事者、NPO町田市つながりの開 DAYS BLG!学童保育・洗車営業担当)
  • 前田 隆行(NPO町田市つながりの開理事長 デイサービス「DAYS BLG!」を運営)
  • 以上、第1部のみ出演
  • 小阪 憲司(横浜市立大学名誉教授、レビー小体型認知症研究会代表世話人)
  • 田久保 秀樹(公益財団法人東京都保健医療公社 荏原病院 神経内科部長)
  • 高瀬 義昌(医療法人社団至高会 たかせクリニック 院長)
  • 大竹 容子(株式会社ケアサークル恵愛 代表取締役・主任介護支援専門員)

第1部:孤立から再び社会とつながる

第1部はご本人の気持ちを中心に、医療側の体制や正しい診断・治療、支援を考えました。
最初に「認知症ご本人を中心に考える」ということで、青山 仁さんと、青山さんが通うデイサービス「DAYS BLG!」を運営する前田 隆行さんに話を聞きました。DAYSでは「社会とのつながり」や「働いてお金をもらえる」ことが大切と考え、働ける会社を探し出しています。
2年前、認知症と診断された青山さんは「しばらくは社会から取り残された気持ちになりましたが、今はDAYSに通い、展示車の洗車の仕事したり、給料もわずかですがいただいて、元気になってきたような気持ちでいます」とステージ上で緊張しながらも笑顔を時折見せて話しました。
前田さんらDAYSは「認知症だから分からない」と決めつけず、仕事や作業を丁寧に説明して理解できるよう、サポートをしています。そして認知症の方が、なるべく普通の人と同じような生活ができるように、「受け身にならず、今日は何をして過ごすか自分で選択する」ということをやっています。

正しい診断と治療 医療連携で暮らしを支える

認知症専門医の小阪憲司さんが認知症の基礎知識を説明した後、VTRで、「認認介護」で不安を抱えていた都内で暮らす夫婦に、仲睦ましい生活が戻ってきた事例を紹介しました。認知症疾患医療センターの田久保秀樹さんから、ふたりが暮らす地域の在宅医の高瀬義昌さんへとうまく連携がとれたことで、正しい診断のもと新たな治療も始まり、病気について家族も勉強して安心した様子などが分かりました。

第2部:本人に寄り添うケア

介護家族にとって、特に負担に思うのは、「幻覚」「妄想」「暴言」「暴力」などの「行動心理症状(BPSD)」です。第2部は、こういった症状に家族はどう向き合えるかを最初に考えました。

地域の医療・介護の事例として、大竹 容子さんが運営するグループホームではどう向き合って改善したのか、映像で紹介しました。
グループホームで暮らし始めた女性は、暴言や他の入居者とのトラブルがありました。介護スタッフで話し合い、孤立感からくる寂しさが原因ではないかと考え、できるかぎりそばにいることにしました。たとえ「あっちへ行って」と言われても、落ち着くまでそばに寄り添い、夜もすぐ対応できるように同じ部屋で寝ました。するとだんだんと穏やかになったそうです。

大竹さんは、「どうしてもその時の姿や、現れた症状だけに目がいってしまい、どうしよう、と介護する側は惑わされがちです。が、そうした対処療法だけでなく、背景や全体をみて、その人を見つめるためにやっていかないと、混乱や不安はぬぐえないと思います。私たちがいるよ、ということを肌で感じもらえるように、時間をかけてやっていくということだと思います」と話しました。

退院支援の取り組み 地域包括ケアシステム

次に、認知症になっても安心して地域で暮らすにはどうすればいいのか、ということを考えました。
認知症疾患医療センタ-に入院したKさんと妻の様子を映像で紹介。Kさんは、4年前にアルツハイマ-型の認知症と診断されました。同センタ-では、医師、看護師、ソーシャルワーカー、家族、Kさんの地域の在宅医療の医師、ケアマネジャーなど、専門の他職種のチームで、情報を共有し、Kさんが退院後も自宅で過ごせるしくみを作っていきました。Kさんの妻は、手厚い退院支援を約束されたことで、再び夫と自宅で過ごせるのはでないかと、希望が芽生えてきました。

最後に小阪さんが「地域包括ケアシステムの実現はまだまだ難しいです。特に都会では連携が進みくいですが、こういった実現に向けての話が今日のような場でみんなできるようになっただけでも大きな進歩だろうと思います。認知症の基本は、ちゃんとした診断をつけて早期に発見し、早期に治療し、早期にみんなでケアの充実ができることが重要だろうと思っています。なんとかうまく行ってほしいので我々も努力していきます」と決意を述べ、2時間半のフォーラムは終了しました。


参加者の感想

  • ご本人が登壇され直接お話しを聞くことができ、1日の過ごし方を選択できることなどは、とても参考になった。全体的に具体的な内容で良かった(看護師)
  • 今回のフォーラムは専門医、訪問医、訪問看護師、患者と家族など多方面からの目線で新鮮でとてもためになりました。(看護師)
  • 若年性認知症の方の映像の事例紹介があり、理解を深められました。また介護スタッフの方々の尽力、患者さんに添い寝までして寄り添う努力などを痛感しました。(無職)
  • 現在94歳の父母は2人で生活しています。父は軽度の認知症です。母は父の言動に振り回されていて、大変困っていると言っています。公的な施設利用も嫌い、ただ二人の生活が続いています。今日のフォーラムで少しでも方向が見いだせればと思っています。(無職)
  • すごく勉強になった。多くの映像があってわかりやすかった。また重苦しいテーマですが、全体として明るい雰囲気であったことも良かった。(会社員)
 

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