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インタビュー

2006年7月 1日

八代亜紀さん近影

〈歌手・画家〉
八代 亜紀(やしろ あき)さん

子どものころの夢や
優しい気持を思い出す
そんな絵を描きたいですね

子どもの頃から歌と絵が好きで、歌手としての仕事が忙しくなってからも合間をぬって絵を描き続けてきた八代亜紀さん。絵筆を取ると時間が経つのも忘れ、気づいたら夜が明けていた…そんなこともしばしばあるそうです。今では、世界最古の伝統をもつパリの「ル・サロン展」に5年連続入選し永久会員になるなど、その才能は世界的に認められています。「私の絵を見て"優しい気持になれた"と言ってくださるのが一番うれしい」という画家・八代さんに、ご自宅1階のギャラリーでお話を伺いました。

Q.八代さんが絵によく描くのは、子猫、子犬、紙風船、麦わら帽子・・・、何となく懐かしい光景ですね。

八代:子どもの頃の夢を伝えたいんです。子どもの頃って純真じゃないですか。私は子どもの頃、「紙風船の中で暮らしてみたい、この中で暮らしたら楽しいだろうな」と思ったことがあるんですよ。楽しいじゃない?いろんなたくさんの色が入ってて。そういう子どもの頃の夢を忘れないでいたいなという意味で、おもちゃを必ず描くようにしてるんですね。大人になると忘れてしまうことがあるでしょ。例えば子どもって、兄弟仲良いじゃない?それなのに、心が変わっていく。財産の話なんかになるとできるだけ自分が多く取りたいとかなるじゃない?人間って浅ましいし、せつないな〜と思うんですよ、すごくわたし。でも子どもの頃はきっと、お兄ちゃんお兄ちゃんって言ってたんだろうな〜って。だから、せめて絵を見ることでね、ちょっとでもそんな気持を思い出してほしいの。

 「風を見つめて」2000年作 ル・サロン展入選作(ミリオンアート提供)

Q.シャボン玉も、よく絵の中を飛んでいます。

八代:絵のシャボン玉は壊れませんから、夢は壊れないよっていうメッセージなんです。それとね、絵の中に人は描いていませんけど、ひょっとしたら、こっち側でお兄ちゃんがふいてくれているかもしれない、お姉ちゃんがふいているかも、弟が今、ふっとふいたかもしれない。お父さんかな、お母さんかな?そういうのを想像してほしくて、シャボン玉を絵の中に飛ばすんですよ。

Q.八代さんは絵を通してチャリティをしていらっしゃいますが、きっかけは何かあったのでしょうか?

八代:今から20年前、ちょうど「雨の慕情」の5年後くらいの時期ね。当時から、絵を描いているっていうことをいろんな所で言っていたので、デパートから「個展を開きませんか」って。アマチュアだから恥ずかしいって言ったんですけど、どうしてもというものだから。でも、「せっかく開くんなら、何か1つ意味のある個展ならいいです」って言ったの。例えばチャリティーとか。その頃、私が出演した映画「トラック野郎」のファンがすごかったものですから、じゃあ、交通事故で親を亡くした子どもたちが学校に行けるような、そういう個展をやらせてくださいっていうことで。書き溜めて何十年も一緒に暮らしてきた作品たちだったので、出すことにさみしさもあったんだけど、子どもたちが学校に行けるためにはと思って。そしたら2時間で50点完売。それで十数人が高校に行けたのかな?もう本当にうれしかったです。

その後は、ペルーに学校(ヤシロアキ工業技術学校)を作ったり、クリスマスに施設にプレゼントをしたりとか。とにかく喜んでくれるのがうれしいの。そう、子どもに役立つものをしたい、本当に。その子たちから手紙くるんですけど、小さい子が一生懸命な字で書いてきてくれたりすると、もう泣いちゃうよね。うれしいよね〜。それですごい元気をもらえるの。

写真:創作中の八代さん(ミリオンアート提供)

Q.私も八代さんの絵を見ながら、子どもの頃の気持を思い出してみます。

八代:絵でなくてもいいのよ。思い出いっぱいあるでしょ?つくしんぼを取りに行ったこととか、タ ンポポとかね〜。時々、つくしんぼとか見つけたら、そこにちょっと座って、何十秒でもいいから「おお、いたのか〜」と話しかけてみる。すると、子どもの頃に「ふっと」戻っちゃいますね。そうすると、すごく幸せになる、「あっ、頑張ろう」っていう気になってすごくハッピーになれますから。もし見かけたら、ぜひ試してみて下さいね。

八代さんのボランティア活動は幅広く、お話に出てきた以外にも、女子刑務所や少年院、高齢者や子どもの施設への慰問などを長年されています。また、当事業団の事業では「NHK歌謡チャリティーコンサート」への出演、「芸能人の多才な美術展」への出品、障害のある人が書いた詩を受け止め絵に表現した詩と絵のコラボレーション「NHKハート展」にもご協力いただいています。