認知症になっても安心して暮らせるまちづくりの取り組みを募集する「認知症とともに生きるまち大賞」。第5回の今年は、コロナ禍の中、30件の応募があり、選考の結果、次の団体を表彰することとなりました。

受賞団体

<本賞>

<オレンジハート賞(特別賞)>

地域の力でよみがえった畑

ヒロさんの畑 認知症があっても我らアクティブシニア(茨城・ひたちなか市)


余命宣告を受けた高齢のヒロさん。ケアマネージャーは畑の管理を闘病生活の励みにしてもらおうと、地域の人たちの力を借りるために声をかける。活動の輪は徐々に広がり、認知症のある人やアクティブシニア、地域の子どもたちなど、多様なつながりが生まれた。ヒロさんは亡くなったが、メンバーの要望で、場所を移して続けることになった。
「ヒロさんの畑」でできた野菜は、子ども食堂への寄付や、販売などで地域に還元されるとともに、そのメンバーによって、地域お助け隊が結成されたり、草鞋づくり教室や料理教室が生まれるなど、地域の活躍の場として今も進化をつづけている。
【受賞理由】
地域がもともと持っている福祉力がよみがえることになった活動である。ひとりの人の遺志を誰もが自分のことと引き受けて、地域福祉の核を協働して作り上げた。誰かにやってもらうことではなく、自分ごととしての地域の再生の姿として手作りの温もりがある。
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高尾山登山が地域の人たちとの交流の場に

彩星の会(東京・新宿区)


会の発足以来、20年続けてきた認知症本人と家族による定例会が、昨年来のコロナ禍により開けなくなった。こうした中、外出の機会を確保するため、一緒に高尾山に登ることを思いついた。
初めての登山は2020年3月。そのときの参加者の笑顔を励みに、毎月2回以上、昨年は合計29回、今年も7月までに10回、高尾山登山を行った。本人、家族だけでなく、地域の人なども加わって登山することもあり、参加者によって毎回登山ルートを決める。高尾山登山は若年性認知症のご本人と地域の人との交流の場となり、登った本人には自信となり、家族にとっては本人の笑顔が明日からの介護の活力となっている。
【受賞理由】
認知症であってもなくても、ただ高尾山に登ることに多くの人々が遠くからも参加するようになり、自然発生的に豊かなつながりを生んでいる。まちづくり、とは名付けていないが、ここには地域福祉のあり方の全てが込められている。
類似の登山活動は全国にあるが、そうした活動のひとつの代表として選考するものである。
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自宅ガレージを開放し、地域活動の新たな拠点に

チーム上京!(京都市上京区)


コロナ禍の中、「今までより、もっと身近な地域の中で人とつながり、安心してでかけられる場所がほしい」という一人の認知症当事者・安達さんの思いを実現するため、地域住民有志と福祉専門職9人が話し合った結果、安達さんの自宅ガレージを地域に開放することにした。こだわりコーヒーを提供するシニア男性の会や、地域の子どもたちの自主的な学び・遊びを支援する団体などがここを拠点に活動を始め、地域の新たな拠点として、新たなつながりが生まれている。
【受賞理由】
コロナ禍で孤立する当事者自らが動いた確かな地域活動といえる。
ひとりの当事者の思いを中心にして語り合うことから始まったまちづくりだが、どこでも誰もが取り組めることから、「うちでもできないか」と各地から関心を寄せられている。
ちなみにこの活動の代表は、認知症当事者の、その安達さんである。
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認知症になっても安心して暮らせる地域をめざして

大分県認知症ピアサポーター事業(大分・豊後大野市)


認知症当事者だからこそできることがある。その一つが「ピアサポーター」。戸上守さんは認知症と診断されて、はじめはほとんど引きこもり状態だったが、若年認知症の人が集うデイサービスと出会い、仕事をしたり、多くの仲間を得たことで前向きになれた。
それをきっかけに戸上さんら当事者たちは、県や施設と連携しながら、認知症のある人へのピアサポート活動を行い、認知症になっても安心して暮らせる地域づくりをめざしている。
【受賞理由】
農作業、本人ミーティング、運送の仕事…。大分県の認知症希望大使になった戸上守さんの活動は、デイサービスや地域の人の様々な取り組みを活性化している。
戸上さんと出会うことで大分県の認知症施策の充実につなげようとしている。
認知症希望大使の取り組みを広く紹介し、地域に大きな変化を促すひとりの認知症当事者の熱い思いを応援したい。
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認知症や障害のある人が協力しながら生活

心のバリアフリーを通じて、里をつむぐ・いのちをつむぐ「半農半介護」(岩手・八幡平市)


「高齢化の進む地域で、認知症や障害のある人が分け隔てなく過ごすことのできる施設をめざし、もともとあった認知症対応型のデイサービスや障害者のグループホームなど運営するNPO法人が別法人をつくり農業にも取り組み始めた。利用者は、畑の苗植え、収穫など、利用者ができる範囲で農作業を手伝い、事業所の利用者同士の行き来もあり、高齢者と障害者がごく普通に接し、お互いに協力しながら生活する姿が日常の風景となっている。
【受賞理由】
制度ありきではなく、地域特性を見つめ直し、そこにある様々な福祉力、介護資源を組み合わせ、認知症、高齢者、障害者のまるごとケアを造り出し全国的にも注目されている。
取り組みは常に更新され、現在は過疎地というハンディを逆手にとって、農業を取り入れた「半農半介護」を提唱したのはユニーク。
複数の施設運営をしながら、地域に根付いていた「結い」の精神を生かした過疎地ならではの取り組みである。
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やりたいことを自由にできる場所

石蔵オレンジ文庫 はっちゃけ道場宿(栃木・宇都宮市)


月2回の認知症カフェで、スタッフとして活動している若年性認知症当事者の「自分たちのやりたいことを自由にできたらいいな」という思いに応えて石蔵オレンジ文庫を開設。「はっちゃけ道場宿」という活動の名称も当事者が考え、認知症の人だけでなく誰もが集える居場所として毎週土曜日に活動している。
活動内容はその日に参加者が話し合って決め、「認知症カフェの庭の整備」や「近くの史跡への散策・外食ツアー」など実施。また、参加対象を限定しないことから小学生が参加することもあり、多世代交流の場にもなっている。
【受賞理由】
この活動は、栃木の家族の会の存在が大きい。
これまでともすれば認知症の人の家族は、本人と介護家族としての互いの思いやりがずれ、双方の自己実現を阻害してきたとも言われてきた。
この取り組みは、家族の会という組織体が地域全体に目を向け、そこから当事者への新たな距離感と協働の形を作り上げることで、大きな地域変革の力となり得ることを示している。
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誰でも安心して外出ができる社会をめざして

~ドラえもんのどこでもドア~未来へ出発(京都発)駅カフェ(京都市左京区)


認知症になっても外出が続けられる社会をめざし、2018年、19年に叡山電車八瀬駅で認知症カフェを開催。2019年のカフェには140人の認知症当事者、家族らが参加。散策に訪れた一般の人もカフェに立ち寄って交流。ライブも行われ、大いに盛り上がった。
2020年、コロナの影響で、中止を余儀なくされた。その中で外出ができない認知症の人々と共にもう一度何ができるかと叡山電車八瀬駅の職員、認知症当事者を交えて語り合い、再出発する。
【受賞理由】
これまで取り組んできた活動を、このコロナの事態で見つめ直しイノベーションを図り、「未来への再出発」という決意を応援したい。
2018年から取り組んできた駅カフェも、認知症の人のためだけでなく、「公共とは何か」が問われる叡山電車という公共交通機関と地域の人のコラボによる意義ある活動である。
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これまでの受賞団体

  • 第4回「認知症とともに生きるまち大賞」 詳細はこちら
  • 第3回「認知症とともに生きるまち大賞」 詳細はこちら
  • 第2回「認知症にやさしいまち大賞」 詳細はこちら
  • 第1回「認知症にやさしいまち大賞」 詳細はこちら

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