NHK厚生文化事業団 平成22年度事業報告書

目次

はじめに

平成22年度はNHK厚生文化事業団にとって、創立50周年という大きなくぎりの一年でした。障害のある人もない人もともにステージに立ち素晴らしいオーケストラ演奏を披露した「こころコンサート・コバケンとその仲間たちスペシャル2010」をスタートにし、事業団50年の歩みを綴った記念誌の発行、障害福祉賞45年の入選作品選集「雨のち曇り、そして晴れ」の出版、これまで事業団を支えて下さった方々をお招きした「感謝のつどい」の開催など、50周年を記念した数々の事業を実施しました。この半世紀の歴史を振り返り、改めてその原点と使命を確認し、さらに新しい一歩を力強く踏み出す良い契機となりました。
今日、社会福祉へのニーズはますます膨らみ、変化し、多様化しています。22年度、事業団では発達障害の支援や認知症の啓発に加えて、新しい課題に取り組みました。「高次脳機能障害のリハビリテーション」と「がん患者のための体と心の緩和ケア」です。大きく動き出した医療現場の最新情報を提供し、現代の切実なニーズに応えました。
一方で、チャリティー事業については、「NHK福祉大相撲」が実施直前で開催中止になり、大幅減収につながる厳しい事態に直面しましたが、福祉団体への車両の贈呈を予定通り行うなど、信頼を裏切ることなく丁寧に対処することができました。
3月11日に発生した「東日本大震災」に際しては、義援金の取り次ぎだけではなく、事業団が災害救護の特別会計として積み立ててきた1000万円を拠出し、また、「NHKボランティアネット」を通じて被災地支援情報の提供に全力を挙げています。これからの復旧、復興支援については、事業団に何ができるのかを見極めながら、23年度も引き続きしっかり向き合っていく所存です。

NHK厚生文化事業団50周年を記念した事業の実施

障害のある演奏家が参加したオーケストラによる、50周年記念コンサートの実施、事業団50年の福祉の歩みを綴った記念誌、45年に及ぶ障害福祉賞の選集の出版などを、NHKの放送と連携しながら展開し、事業団の果たす役割をアピールしました。

今日的課題の最新情報を提供

「高次脳機能障害」についてのDVDを作成し、脳損傷からの回復をめざすリハビリのフォーラムを行いました。また、がん患者の「緩和ケア」について解説した冊子を制作し全国に配布するなど、様々な福祉課題の最新情報を提供することに努めました。

発達障害や精神疾患などのニーズにこたえる障害福祉支援

「特別支援教育」が本格的に実施される中、発達障害に関するフォーラムを全国11か所で実施し、4,000人近い参加者がありました。また、精神疾患についても力を入れ、統合失調症や、思春期の心の病のフォーラムを各地で行い、その切実なニーズにこたえました。

認知症に関する啓発事業

大きな社会問題である認知症については、全国17か所でフォーラムを実施し、1万人を上回る参加者がありました。NHKの地域放送でその内容を放送したほか、認知症についての冊子を希望者に配布するなど、多角的な情報提供につとめました。

地域福祉活動への支援

障害者や高齢者の施設・団体に福祉車両や福祉機器を贈るとともに、「わかば基金」では、支援金のほか、NHKグループの協力により「リサイクルパソコン」を贈呈しました。

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1.障害者福祉事業

(1)こどもの発達相談会および療育キャンプ

大阪、名古屋、福岡において、ことばや発達の遅れた子どもとその親のための定例相談会を開くとともに、大阪ではLD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)など発達障害児を対象にした相談会を行った。また名古屋では、親と子の療育キャンプ「やまびこキャンプ」を実施した。

定例相談会

大阪、名古屋、福岡で12回実施した。知的や言語の発達のおくれ、自閉症、重複障害などの子どもの相談が多かった。

LD教育相談会

大阪では、平成12年度からLD、ADHD、高機能自閉症児などを対象にした「LD教育相談会」を行っている。

親と子の療育キャンプ

第27回「やまびこキャンプ」を愛知県旭高原で実施した。愛知教育大学とそのOBの人たちの協力により、発達障害のある子どもたち17人が、自然の中で集団生活を体験した。家族やボランティアなども82人参加した。

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(2)肢体不自由児・者の療育活動

肢体不自由児・者の療育キャンプを、支援団体との共催・協力により、各地で実施した。夏季、冬季の野外活動を通じて、参加者の自立と社会参加を促進し、あわせて交流の輪を広げた。

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(3)NHKハートフォーラム(発達障害)

自閉症やLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)などについてNHKの地域放送局や「親の会」などと共催で、NHKハートフォーラムを11回開催した。

発達障害フォーラム

発達障害児・者の教育支援や、就労の問題をとりあげたフォーラムを11回開催した。保護者だけでなく、「特別支援教育」を推進する教員など教育関係者も多数参加した。

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(4)精神疾患に関するNHKハートフォーラム

思春期の人から大人まで多くの世代にとって身近な病気となっている、さまざまな精神疾患について最新情報を提供し、支援のあり方を考えるフォーラムを全国で行った。

NHKハートフォーラム「統合失調症を知る」

「リカバリー」(回復)という医療やケアでの新しい考え方をもとに、統合失調症の人を取材したビデオの上映や、当事者が壇上で発言する機会を設けて行った。統合失調症については、大がかりで無料の催しはほとんど無いため、各会場とも当事者や家族などが多数参加した。
なお、3月13日、横浜でも開催する予定であったが、東日本大震災の影響で会場が使用できず中止した。

NHKハートフォーラム「思春期の“こころ”と“病”を知る」

思春期特有の一般的な悩みと精神疾患との見分け方や、対応の仕方などを知るフォーラムを実施した。思春期の子どもを持つ親や、教師、養護教諭が数多く参加した。

NHKハートフォーラム「うつ病・躁うつ病を知る」など

うつ病、躁うつ病は15人に1人が発症する身近な病気。二つの病気の違いや、早期受診の大切さ、薬とのつきあい方など最新医療情報を伝え、社会支援プログラムについて話し合った。
このフォーラムは23年度も継続し各地で実施していく。また大阪でも「うつ病」についての正しい知識を紹介するフォーラムを行った。

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(5)そのほかのNHKハートフォーラム(障害者福祉)

NHKハートフォーラム「リハビリ最前線・脳損傷からの回復を目指す」

事業団が作成した「高次脳機能障害」についての福祉ビデオの素材を使いながら、事故や病気で脳損傷を負った人の入院中の訓練や退院後のリハビリなどを紹介し、後遺症があっても豊かな人生を送るにはどうすれば良いのかを考えた。

NHKハートフォーラム(新しい福祉)

このほか、NHK各地域放送局とさまざまな福祉課題を考えるハートフォーラムを実施した。

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(6)福祉の仕事に興味を持つ若い人に向けたフォーラム

名古屋で、福祉の仕事に興味を持っている学生たちを対象に、愛知県社会福祉協議会、NHK名古屋放送局、中日新聞社との共催でフォーラムを開催した。

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(7)障害者スポーツイベントの開催

知的障害者のスポーツ大会を東京で実施したほか、全国3か所で障害のある人もない人も一緒になって障害者スポーツを楽しむイベント「ハートスポーツフェスタ」を実施した。

第44回スポーツの集い

重度の障害者が参加できる全国でも数少ないスポーツ大会として、東京都障害者スポーツ協会と協力して開催した。参加者は100メートル走、大玉ころがし、綱引きなどを楽しんだ。

NHKハートスポーツフェスタ

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(8)そのほかの福祉イベントの開催

第5回NHK福岡ハートパーク

福岡の大濠公園で開催した「NHK福岡ハートパーク」では、障害のある人が描いた絵69枚をフラッグにし、街路灯に飾って展示した。

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(9)第45回NHK障害福祉賞

障害のある人の体験記録や、福祉関係者、家族などの記録を広く社会に伝える「障害福祉賞」には、第1部門を中心に409編の応募があった。選考の結果、次の実践記録が入選した。

第1部門 障害のある本人の部門
第2部門 障害のある人とともに歩んでいる人の部門

応募数 409編(第1部門:309編、第2部門:100編)

入選作

入選作品は「第45回障害福祉賞入選作品集」として刷成し、広く頒布したほか、朗読による音声版(テープ、デジタル録音)、点字版の入選集を作成し、全国の点字図書館や視覚障害の応募者などに提供した。贈呈式は12月7日にNHK放送センターで行った。
また、入選作品が「ハートをつなごう」(12月13日〜14日教育テレビ)などで紹介されたほか、最優秀の鶴丸 富子さんが 12月19日の「ともに生きる」(ラジオ第2)に出演した。

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(10)NHKハート展

平成6年度以来、15回目を迎えた「NHKハート展」には、障害のある人が綴った詩6,128編が寄せられ、その中から選ばれた50編の詩と、その詩をもとに各界の著名人が制作したアート作品を組み合わせて展示した。
それぞれの想いが融合した50対の作品は、平成22年3月3日から8日まで開かれた日本橋三越での東京展をはじめ、大阪市、福岡市、金沢市など14か所の巡回展で紹介された。入場者は75,963人に上った。
また、23年度に巡回展を行う第16回NHKハート展には、5,459編の詩が寄せられた。巡回展は、平成23年3月2日から7日までの日本橋三越での東京展をはじめとして、年度内に全国10会場で開催する予定。

第15回NHKハート展入場者数(14会場)

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2.高齢者福祉事業

(1)NHK福祉ネットワーク「公開 すこやか長寿」

NHK教育テレビ「福祉ネットワーク 公開すこやか長寿」の番組収録(毎月第3木曜放送)を兼ねて、ゲストによる高齢者の健康や生き方に役立つ講演を内容としたイベントを、全国10か所で開催した。ゲストは、ヨネスケさん、山田邦子さん。

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(2)認知症フォーラム、NHKハートフォーラム(認知症)

NHKの放送と連動させながら、認知症フォーラムやNHKハートフォーラムを全国17会場で開催した。のべ1万人を超す人々が参加した。認知症の人の家族だけでなく、介護施設の職員をはじめ、医療・介護従事者の参加も多く、半数前後を占めた。
会場でのアンケートには、「不安でいっぱいでしたが、心にゆとりが持てました」「明日から心に寄り添うケアに励みたい」との言葉が、多数つづられている。

認知症フォーラム「あきらめない--最新医療と社会の支え--」

患者数205万人と言われる認知症は、ここ数年治療や介護の面で目覚しい進歩がある。事業団とNHK、読売新聞が主催したフォーラムでは、認知症になっても安心して暮らすための最新情報を紹介した。また、地域放送や紙面、ウェブサイトなどとも連動したクロスメディア展開で啓発につとめた。

NHKでの放送展開

フォーラム認知症新時代「いきいきと暮らすために--医療・介護・地域の支え合い--」

医療・介護の最新情報とともに、認知症の人と家族を支援する地域の取り組みを紹介した。フォーラムを開催した地元での先進的な事例を取り上げることで、さらに地域支援の輪が広がるように後押しした。NHKとの共催で、全国6か所で行った。

NHKでの放送展開

NHKハートフォーラム(認知症)

フォーラムを開催する地元での身近な取り組みなどを例にして、医療・介護の望ましいあり方や、地域での支援体制の課題について話し合った。

認知症に関する小冊子の配布

認知症に対する正しい知識を持ってもらうために、小冊子「もの忘れが気になるあなたへ」 (19年度作成)を3万部増刷して、フォーラムの参加者や希望者に配布した。発行部数は合計18万部となった。
また家族向けの小冊子「家族が認知症と診断されたあなたへ--おすすめ介護術」(20年度作成)を3万分増刷し、発行部数は合計13万部となった。

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(3)NHKハートフォーラム(高齢者福祉)、慰問活動

成年後見制度の利用の仕方を分かりやすく伝え、そのあり方を考えるフォーラムや、高齢者が安心して暮らせる地域づくりをテーマにしたフォーラムを開催した。

施設への慰問活動

東海地方の病院や高齢者福祉施設8か所で、津軽三味線と民謡による慰問演奏会を行った。参加者は合計558人。

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(4)ラジオ公開生放送「鎌田 實 いのちの対話」の実施

地域医療の第一人者である長野県諏訪中央病院の鎌田 實医師をホスト役に、毎回ゲストを迎えて、「いのち」について参加者とともに考える公開生放送(ラジオ第1)のイベント。22年度は4回実施し、多くの聴取者が参加した。

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(5)NHK銀の雫文芸賞2010

高齢社会をどう生きるかをテーマにした小説を一般から募集した。「雫石とみ文芸賞基金」によって20年間実施してきた「銀の雫文芸賞」の成果を継承するために、NHKの共催を得て、20年度から行っている。
作品の審査には、作家の出久根 達郎さん、脚本家の竹山 洋さん、そしてNHKドラマ番組部長、文化福祉番組部長があたった。912編の応募があり、次の3編が入選した。
入選作品は、「NHK銀の雫文芸賞2010作品集」として刷成し、広く頒布した。

最優秀の伊藤 幸子さんの作品「花の独身」はラジオドラマ化され、10月30日「FMシアター」で放送された。

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(6)NHK介護百人一首

日々の介護の様子や思いなどを詠んだ短歌を募集し、珠玉の作品を「介護百人一首」として選出し、作品集にまとめた。5回目の平成22年度は、過去最高となる8,332首の短歌が集まった。
入選作品は23年2月14、15日に教育テレビ「福祉ネットワーク」で紹介されたほか、パネルにして23年度中に各地の放送局など13か所で展示される。

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3.ボランティア活動促進事業

NHKからの受託事業である「NHKボランティアネット」は、ボランティア情報を求める人たちと、ボランティアに取り組むNPOなどの関係者の双方から、インターネット上の信頼できる媒体として活用されている。
また、22年度は、紙面を一新して独自取材記事の掲載に力を入れた。23年3月11日には東日本大震災が発生し、関連情報を掲載することで注目をあつめた。
また、ボランティア活動の魅力と課題を紹介するために、NHKの地域放送局や関係団体などと共催してNHKハートフォーラムを開催した。

(1)NHKボランティアネットの運用

「NHKボランティアネット」は、阪神・淡路大震災によりボランティアの機運が高まった平成7年に発足し、以来15年間にわたってボランティアの啓発と関係団体の支援に取り組んできている。

22年度は、新しい企画として「ボラ仲間の活動リポート」、「一歩前へ!会社と社員の社会貢献」、「投稿・私たちからのメッセージ」の3つのコーナーを新設した。最初の2つは、ボランティアに関する最新の情報を独自取材したリポートであり、約30本の記事を掲載した。また「投稿・私たちからのメッセージ」は、ボランティアネットの「あなたの街のボランティア情報」コーナーにボランティア募集の情報を寄せてきた全国の団体などの活動報告で、最近寄稿・掲載希望が急増している。

常設コーナーの「各地のボランティア情報」では、ボランティアを募る全国各地の団体からの依頼に応えて、常時200件/月を超える募集情報や活動案内などを掲載した。

災害関連情報としては、23年1月に噴火をした新燃岳の情報、同2月のニュージーランド地震などについて、情報の迅速な提供に努めた。

23年3月11日に東北・関東地方を襲った東日本大震災は、地震と津波による大きな被害を東北・関東の広い範囲にもたらした。また福島第一原発の事故による、住民の大規模避難も発生している。死者・行方不明者の合計は2万4000人近くにのぼり、自宅を離れ避難をした被災者は14万人以上。阪神・淡路大震災の規模を超える大災害となった。
「NHKボランティアネット」では震災発生後直ちに「大震災関連情報」コーナーを立ち上げ、震災関連のニュース、支援・義援金の情報、ボランティアの募集情報、ボランティア希望者へのアドバイス記事、被災地の現場リポートなどを掲載した。
震災発生以降、1か月の間に掲載した震災リポートは12本、関連情報は170件を超えた。

「NHKボランティアネット」への年間アクセス数は402万ページビュー、前年比86万ページビュー増であった。
昨年度より導入した新しい簡易入力システムを用いることにより、掲載内容の速やかな更新を図ることができるようになった。今後も、引き続き東日本大震災関連の記事の充実を図りつつ、より魅力的で、役に立つボランティア情報の発信に努めていく。

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(2)NHKハートフォーラム(ボランティア)の開催

NHK地域放送局と共催して、ボランティア活動を啓発するフォーラムを1回実施した。

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4.福祉情報の提供事業

(1)福祉ライブラリー活動

「福祉ライブラリー(テープとビデオ)」は、NHKの福祉番組を複製して貸し出すもので、事業団創立以来の基幹事業の一つである。新番組や反響の大きかった番組をいち早くライブラリーに加えるなど、ラインナップも多様で、教育や福祉の現場でも活用されている。
また、聴覚障害者向けに字幕付きのビデオを作成し、全国の聴覚障害者関係施設で貸し出しを行っている。

テープライブラリー

視覚障害者向けのテープライブラリーは、文芸作品や古典の名作を朗読したNHKの番組を複製して、全国47か所の委託施設で貸し出しを行っている。各地の点字図書館では、デジタル図書での利用が多くなっているため、平成20年度からソフト作成をテープからデジタル録音のDAISYに切り替えている。
22年度は、NHKの『ラジオ文芸館』から「杜子春」(芥川 龍之介)、「水仙月の四日」(宮沢 賢治)、「左腕とキャッチボール」(谷村 志穂)など8作品を、『朗読』から小泉 八雲、二葉亭 四迷、福沢 諭吉の作品集、『古典講読』から「宇治拾遺物語」を複製した。
貸し出し利用は、年間7,519本に上っている。

ビデオライブラリー

テレビの福祉番組「福祉ネットワーク」「きらっといきる」「ハートをつなごう」や、「きょうの健康」「ためしてガッテン!」など、視聴者から反響の大きかった番組や、福祉の学習に役立つ番組など54番組を、ライブラリーとしてVHSとDVDに複製した。また、事業団制作の福祉ビデオシリーズもライブラリーに加えた。
4月にはライブラリー目録の冊子を作成した。また新規の番組を随時ライブラリーに加えていくため、追加した作品の目録を年4回発行した。
一昨年からオンライン予約システムを導入し、パソコンを使っていつでも予約ができるようにした。現在オンライン予約登録者は2,590人で、オンラインでの利用も増え全体のおよそ3分の2になっている。
また、貸し出しビデオを新規複製分から、これまでのVHSテープからDVDに切り替えている(過渡期として、平成22年度まではVHSでも複製した)。過去の人気の高い番組についても順次DVD化を図っていく。

年間の貸出利用は4,984本。おもな利用者は、福祉関係の大学・専門学校をはじめ、福祉の現場で働く人、障害児の親や障害者本人、介護に携わっている家族、ボランティア団体のメンバーなどである。年間の利用者数は、1,768人に上っている。

利用が最も多かったのは、事業団制作の福祉ビデオ「統合失調症の人の回復力を高める家族のコミュニケーション」だった(135人)。次に利用が多かったのは「NHKスペシャル・認知症」「福祉ネットワーク・発達障害」「知的障害や自閉症等の障害のある人たちをトラブルから守る」などであった。

聴覚障害者向け字幕ビデオライブラリー

NHKの字幕放送の拡充にあわせ、聴覚障害者向けサービスとして、平成15年度から行っている。22年度は、「福祉ネットワーク」や「ハートをつなごう」など5本の番組を字幕化し(通算52番組)、全国59の聴覚障害者関係施設と事業団で貸し出しを行っている。

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(2)福祉ビデオ「高次脳機能障害のリハビリテーション」の制作

高次脳機能障害の人たちの支援とリハビリについての情報を提供するため、DVD3枚組(テキストつき)を700セット制作した。全国の病院や支援拠点機関に配布するとともに、「福祉ビデオライブラリー」としても貸し出す。

なお、本事業はJKA(旧・日本自転車振興会)の補助金を得て実施した。

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(3)冊子「がん患者のための体と心の緩和ケア」--痛みと悩みをやわらげて自分らしい療養生活を送るために--の制作

がん患者の体の痛みや心の苦しみを和らげる「緩和ケア」について啓発するための冊子を作成した。緩和ケアとはどういうものか、ケアを受けられる全国の病院、相談できる機関などの情報を、イラストを交えてわかりやすく解説した。
全国377か所のがん診療連携拠点病院の相談支援センターなどに送付したほか、NHKの放送によるお知らせで知った個人、NPO、行政の相談窓口などからの手に入れたいという要望にこたえ、1万5000部を送付した。送料は利用者担とした。「『緩和ケア』についてはじめて聞いたが、よくわかった」「家族にがん患者がいるので読んだが大変参考になった」などの反響が寄せられている。また、追加送付を希望する病院などにも、無料で配布した。

なお、本事業は故・伊東 律子副理事長のご遺族からの寄付を基に実施した。

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(4)「認知症」冊子、「思春期のこころの病」冊子の希望者への配布

認知症はどんな病気か、治療法や予防法、相談窓口などをわかりやすくまとめた「もの忘れが気になるあなたへ」(19年度作成 監修:小阪 憲司 横浜ほうゆう病院長)を3万部増刷した。総発行数は18万部。
20年度に作成した「家族が認知症と診断されたあなたへ--おすすめ介護術--」(監修:須貝 佑一 認知症介護研究・研修東京センター副センター長)を3万部増刷した。
認知症の介護のポイントを症状別にわかりやすくまとめたもので、総発行数は13万部。両冊子とも、フォーラムの参加者や希望者に無料で配布した。(送料は利用者負担)

「思春期のこころの病--"悩み"と"病"の見分け方--」は、思春期特有の精神疾患の見分け方と、その対応について啓発するために、21年度に11万部作成した。(監修 青木 省三 川崎医科大学精神科学教室教授)
22年度も引き続き学校や、個人、NPO、行政の相談窓口などからの要望にこたえ、2万部を送付した。送料は利用者担とした。また、NHKハートフォーラム「思春期の心の病を知る」の参加者にも無料で配布した。

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(5)ホームページでの「子どもサポートネット」の情報強化

生きづらさを抱える子どもを応援する福祉現場をリポートする「NHK厚生文化事業団・子どもサポートネット」のコーナーでは、障害者の絵画教室、地域の子どもたちに障害のある人のサポートの仕方を伝えているグループ、雪山で行った療育キャンプのリポートなどを、写真を使って詳しく紹介した。

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(6)NHK福祉キャンペーン「NHKハートプロジェクト」との連携

NHKは「NHKハートプロジェクト」を組織して、「ともに生きる社会」をテーマに、NHKの福祉番組や福祉イベントを年間で計画的にキャンペーン展開している。
事業団では、これまで蓄積してきた福祉事業の経験をもとに、NHKと協力しながら、このキャンペーンを推進している。

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(7)ラジオ番組「ともに生きる・NHK厚生文化事業団だより」

ラジオ番組「ともに生きる」(日曜日午前8時〜8時30分:ラジオ第2、NHK大阪放送局制作)で毎月1回「NHK厚生文化事業団だより」が放送されている。事業団が主催して行ったフォーラムなどの事業について放送を通じて紹介するもので、メディアを変えた事業団の情報発信となっている。
スタジオの解説には、毎回、近畿支局の大野支局長があたっている。「知りたい具体的な情報をわかりやすく伝えてくれる」と好評である。

放送日とテーマ

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5.チャリティー事業

NHKをはじめ多くの関係団体の支援・協力を得て、以下の主催チャリティー事業を実施した。
チャリティーによる純益は、障害者福祉事業などに役立てたほか、福祉機器や障害者スポーツ用具を購入し福祉関係団体・施設へ贈呈した。
また20年度から、NHKチャリティー展の収益の一部を「NHKチャリティー展文庫」として地元の福祉施設にDVDや図書を贈呈している。今年度は、愛知・岐阜・三重の三県3か所の施設に寄贈、あわせて津軽三味線の演奏や民謡で慰問をおこなった。

(「※」印は物品などの贈呈をした催しで、詳細は、6‐(4)に記載)

(1)NHK番組公開チャリティー

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(2)事業団主催チャリティー

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6.その他の支援事業

(1)第22回地域福祉を支援する「わかば基金」

あすの福祉の芽を育てる「わかば基金」は、福祉の分野で地道に活動を続けているグループを励まし、支援するために設けられたもので、今回で22回目を迎えた。
19年度から設けた「リサイクルパソコン部門」は、NHKやNHK関連団体から不要になったパソコンを寄贈してもらい、リサイクルした上で必要としている福祉団体に贈呈するもので、NHKグループの新しい社会貢献活動ともなっている。

22年度の募集では、第1部門「支援金贈呈の部」に318グループ、第2部門「リサイクルパソコンの部」に175グループ(457台)から申し込みがあった。
選考委員会を経て、13グループに総額586.3万円の支援金を、20グループに56台のパソコンを贈った。初回からの贈呈件数は421グループに上る。

<支援先>
【第1部門支援先】*13グループ *支援金総額:586.3万円

【第2部門】*20グループ *リサイクルパソコン贈呈:56台

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(2)NHK歳末たすけあい・NHK海外たすけあい

「平成22年度NHK歳末たすけあい・NHK海外たすけあい」をNHK、中央共同募金会、日本赤十字社と共催で12月1日〜25日の間実施した。
11月21日に秋葉原で行われたイベント「あなたのやさしさを2010」やその放送を通じて、義援金がどのように使われているかを紹介した。
また、全国の各放送局でも、11月から12月にかけて福祉キャンペーン「NHKハートプロジェクト」のイベントや放送を集中的に展開したが、「NHK歳末・海外たすけあい」をその中核事業として位置づけ、様々な方法でPRに努めた。

義援金総額 14億1,542万8,794円(14万3,381件)

<内訳>

「歳末たすけあい」の義援金は、中央共同募金会を通じて全国の障害者の方々や、援助や介護を必要とするひとり暮らしのお年寄り、援助を必要とする子どもたち、長期療養生活をしている人や生活が困難な世帯、災害地などに配分された。
「海外たすけあい」では、日本赤十字社が赤十字国際機関と協力し、紛争や自然災害に苦しむ人たちのために使われる。

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(3)災害義援金受け付けの実施

事業団ではNHK、日本赤十字社、共同募金会とともに、大規模な災害が起こった際には、その都度「災害たすけあい」を実施している。

23年3月11日に発災した「東日本大震災」の義援金については、14日から受付を開始し、9月末まで実施する予定である。5月20日現在、全国のNHKの窓口に寄せられた義援金総額は16億2800万円を超し、当事業団の窓口にも多くの義援金が寄せられている。

また、22年度は、夏に発生した豪雨による地域災害に対し、国内災害たすけあいを実施した。更に、「パキスタン洪水災害」や「チリ大地震」について、海外災害たすけあいを実施した。

1.国内災害

2.海外災害

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(4)物品などの寄贈

厚生文化事業団創立50周年記念「福祉車両」の寄贈

「第44回NHK福祉大相撲」が急遽中止となったことにより、福祉車両「福祉相撲号」を、予定していた施設に贈呈することができなくなった。各施設の切実なニーズにこたえるため、22年度は厚生文化事業団の創立50周年記念事業の一環と位置付け4台を購入し、これに日産自動車(株)からの寄贈1台を合わせて5台を障害のある人たちの療育活動や、お年寄りのデイケアなどの福祉活動を行っている施設・団体に寄贈した。

<寄贈先>

「車いす付き介護浴槽」・「障害者スポーツ用具」の寄贈

春と秋に開催した「歌謡チャリティーコンサート」の純益により、車いす付き介護浴槽と障害者スポーツ用具を購入し、福祉施設・団体へ贈呈した。

「別冊 NHKウイークリーステラ 大相撲特集」を寄贈

NHKサービスセンター寄贈による「別冊 NHKウイークリーステラ 大相撲中継」を全国1,940か所の老人福祉施設(ケアハウス、軽費、養護老人ホーム)に、5回の本場所ごとに各回3,880部を寄贈した。3月場所については開催中止となったため、「ラジオ深夜便」に内容を差し替えて寄贈した。

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(5)催物への招待

事業団の催し物の開催時に、盲学校の生徒など障害のある人、330名を招待した。

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7.広報活動

事業団の活動を広く周知するため、事業内容を紹介する印刷物を催し物会場で配布し、福祉活動への理解と協力を求めることに努めた。また、ホームページでは、催し物の周知や活動報告などを分かりやすく伝え、「NHKボランティアネット」と合わせて、ネット時代にふさわしい広報活動に努めた。

(1)広報物の作成・配布

NHK厚生文化事業団年報「心豊かな福祉社会をめざして」(年1回)を発行して事業団の福祉活動への理解促進を図った。
また、事業団の業務を紹介したパンフレットの「事業団のふくし」を作成し、イベント会場での配布により周知活動を行った。
さらに、NHKの放送、ニュースによる各種事業の紹介のほか、外部に対する記事提供により、新聞・雑誌などでも活動内容が紹介された。

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(2)広報活動の強化にホームページの拡充

ネット時代をむかえ、事業団のホームページを拡充し、利用者に見やすく分かりやすい情報を提供するように努めた。
掲載内容は、事業団の催し物の予定、実施したフォーラムの報告や抄録、「NHK障害福祉賞」や「NHK銀の雫文芸賞」の入選作品、「わかば基金」で支援した団体の活動リポート「わかばなかま」、子どもたちの成長をサポートする福祉現場を取材した「子どもサポートネット」、福祉ビデオライブラリーの目録や予約システムなど多岐にわたる。

さらに、ホームページの利用者からメールで寄せられた、さまざまな問い合わせに即応するよう努めている。

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8.共催、後援、協賛した事業

(1)共催事業

上方落語の会

*NHK大阪放送局と共催

4月16日、5月13日、6月3日、7月8日、9月9日、10月7日、11月11日、12月9日、(平成23年)1月13日、2月10日、3月10日(計11回)
NHK大阪ホール 入場者計 7,115名 

東西浪曲大会

*NHK大阪放送局と共催

8月28日 NHK大阪ホール 入場者 1,100名 

第56回全国里親大会

*厚生労働省、東京都、全国里親会と共催

11月7日 奈良県天理市 参加者 675名 

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(2)後援、協賛したもの

福祉、教育、医療団体などが実施する研修、啓発事業、また美術、スポーツ団体などが福祉目的で開催するチャリティー事業に積極的に協力し、本部・支局合わせて180の事業を後援、協賛した。

福祉関連の催し(130件)

「日本車椅子バスケットボール選手権大会」「発達障害ネットワーク年次大会」 「成年後見法世界会議」「ヘレンケラー記念音楽コンクール」「日本ライトハウス盲導犬育成40周年記念フェスタ」「福祉の就職総合フェアin OSAKA」「みえ生と死を考える会講演会」「愛知県聴覚障害者大会」「福岡県情緒障害教育研究会」などを後援した。

チャリティー関連の催し(50件)

「国展」「春陽展」「二科展」「アザミ革工芸展」「チャーチル会東京チャリティー 油絵展」「KEIRINグランプリ2010」「奈良県大衆音楽祭」「チャリティー全国大陶器市」「手作りフェアin九州」などを後援し、その益金から事業団へ寄付をいただいた。

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9.NHK厚生文化事業団50周年事業

当事業団は平成22年8月創立50周年を迎えた。21年度〜22年度にわたり、事業団の長年の歩みを集大成する事業や、事業団活動を多くの人に知ってもらうための記念事業を次のとおり実施した。

(1)NHK厚生文化事業団50周年記念
「こころコンサート・コバケンとその仲間たちスペシャル2010」の実施

障害のある人とない人がこころをつなぎ、演奏するコンサートを開催した。
視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、知的障害、自閉症など、障害のある演奏家、31人がオーケストラに参加し、小林 研一郎氏の指揮のもと半年間の練習を重ね、22年3月7日にNHKホールで演奏会を開いた。
演奏曲はシベリウスの交響詩「フィンランディア」や、チャイコフスキーの序曲「1812年」など。客席には招待した障害のある人300人を含め、3,010人が集まった。
NHKの番組で、オーケストラが結成されてから本番に至るまでのドキュメンタリーやコンサートの模様が放送されたほか、新聞、福祉情報誌などでも紹介された。

NHKの放送展開

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(2)NHK厚生文化事業団創立50周年記念「感謝のつどい」

50年にわたる支援、協力に感謝し、福祉関係団体、継続寄付者や賛助会員、チャリティー協力団体、NHK関係者などを招いて開催した。
当日は事業推進に貢献のあった個人7人、および4団体に感謝状を贈呈した。また記念出版の福祉賞選集「雨のち曇り、そして晴れ」に作品を収録した障害のある本人など10組も参加した。会場では、「こころコンサート」に出演の障害のある演奏家を中心に、バイオリン、ビオラ、チェロ、フルートで編成された楽団が生演奏を行った。

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(3)NHK厚生文化事業団50年史の発行

昭和35年の創立以来50年の足跡と事業展開を編纂した「NHK厚生文化事業団50年のあゆみ--心豊かな福祉社会をめざして」を発行し、「感謝のつどい」出席者のほか、関係諸機関、福祉団体、賛助会員などを中心に配付した。

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(4)NHK障害福祉賞選集「雨のち曇り、そして晴れ」の出版

当事業団創立50周年と障害福祉賞45周年を記念し、これまでの入選作品からセレクトした13人、16作品を収録した「雨のち曇り、そして晴れ」を出版した。これまでも各年の入選作品を収めた「入選作品集」を発行してきたが、より広い層に障害者福祉への関心をもってもらえるよう、NHK出版の協力を得て、一般図書として発行した。

収録作品のうち第31回(平成8年)最優秀作品「私たち夫婦の普通の家庭」が、この出版をきっかけにドラマ化され、特集ドラマ「風をあつめて」として放送された。

(放送)平成23年2月11日(金曜日・祝日)午前8時20分〜9時19分(総合)

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(5)創立50周年記念・福祉車両の寄贈

NHK厚生文化事業団創立50周年記念事業の一環として、各地の高齢者および障害者福祉施設5か所に、福祉車両5台を寄贈した。2月11日実施予定の「NHK福祉大相撲」が中止になり、「福祉相撲号」を贈るための益金が生まれなかったが、事業団は各施設の切実なニーズにこたえるため車両を購入し、「50周年記念」として寄贈することにした。贈呈先などについてはこちらを参照ください。

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(6)ホームページでの50周年サイト

「50年史」の発行とリンクして、ホームページ上でも「写真に見る50年のあゆみ」「講師や出演者の寄稿」などを部分掲載し、一般の方々や視覚に障害のある方にも「50年史」の内容と、事業団の活動を理解していただけるよう配慮した。(現在も縮小して掲載中)

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10.寄付金

当事業団への寄付金には二種類ある。個人や団体からのご寄付である一般寄付金と、当団が主催、後援、協賛したチャリティー事業からのご寄付であるチャリティー寄付金である。
22年度は、

に上った。

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11.賛助会員・維持会員

賛助会員は、一般法人に広く協力を求め、本年度は、14団体15口の新規入会、および1団体3口の増額があったが、業績不振等により、減額1団体・1口、退会20団体・20口の申し出があり、合わせて168団体から2,280万円の支援を受けた。
また維持会員については、NHKおよびNHK関連団体役職員、NHK旧友会員等6,681名にのぼる方々の協力を得て、その額は1,172万9,100円に達した。

〔特別賛助会員〕 〔賛助会員〕 (平成23年3月31日現在)

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12.役員

(1)役員体制(平成23年3月31日現在)

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(2)理事および監事に支払った報酬等の額

当該事業年度における当事業団の理事および監事に対する報酬等の内容は、以下のとおり。
理事 11名 2,800万円
監事 4名 

(注)1.上記人数には、当期中に退任した非常勤理事1名、非常勤監事2名が含まれる。
2.上記のうち、非常勤の理事9名、監事4名には、報酬は支払っていない。

終わり

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