現場リポート

雪と遊ぼう;親と子の療育キャンプ(6)キャンプを終えて

この連続リポートもいよいよ最終回です。
キャンプ本番前にお話をうかがった、原木さん親子、真嶋さん親子、ボランティアのプーさんたちは、どんなキャンプを過ごし、何を得たのでしょうか?
キャンプを終えた数日後にお話しを聞きました。

写真:ゲレンデで全員集合

「普段の生活の場所でも障害のある人と関わっていきたい」---ボランティアのプーさん

写真:プーさん

プーさんは、「もっと子どもたちと仲良くなりたい」とキャンプ本番に挑みました。その言葉通り、ゲレンデでは同じグループの真嶋 翔生くんや他の子どもたちとソリの滑走を楽しんでいました。「ソリでゲレンデを滑るなんて初めてで新鮮でした。初めのうちは曇っていた翔生くんの顔がだんだんと明るくなってうれしかった」と話すプーさんです。

写真:ソリに乗った真嶋 しょうきくんのとそのソリを引くプーさん

そんなプーさんですが、実は事前の研修で払拭したはずの不安が、キャンプが近づくにつれて増していったというのです。「全体集会の直後は子どもたちと仲良くできそうだと思ったけど、やっぱり子どもと遊んだことがないし、うまくコミュニケーションが取れないんじゃないか。特に翔生くんとはどう接したらいいのか…」。言葉で気持ちを伝えるのが難しい翔生くんとの接し方に悩んでいたのです。
そんなプーさんの気持ちを和らげたのは、実は翔生くん自身でした。翔生くんは東京駅に集合したときには泣いてしまい、浦佐駅からの送迎バスの中では嘔吐してしまいました。普段は乗り物酔いなどしない翔生くん、よほど緊張していたのでしょう。側にいたプーさんはそのとき、「翔生くんも不安なんだな。自分だけじゃないんだな」と感じました。すると気が楽になり、翔生くんの気持ちを表情やしぐさで何となく察せるようになったそうです。プーさんは「いままで障害のある人と接したことがなかったので、壁みたいなものがあったんだと思います。でも翔生くんや他の子どもたちといて、そういう感覚がなくなりました」と打ち明けてくれました。

写真:食事の時間。にこやかな真嶋 しょうきくんと隣にいるプーさん

そう話すプーさんがキャンプで一番楽しかったのは、食事の時間でした。食事の時にはよく翔生くんの隣に座って手伝っていたプーさん。「食事の時がみんなで一緒に生活しているんだって、一番強く感じたんです。今後はキャンプのような特別な場所だけでなく、普段の生活の場所でも障害のある人と関わりをもちたい」、そう語ってくれました。

プーさんの変化はもうひとつありました。普段は受身なことが多いと話すプーさんは、キャンプを経験して積極性が出てきたとも言います。「事前の研修でいろいろなことを話し合って決めているとき、自分の意見も受け入れてくれたのがうれしかった。違う場所では発言してもあまり聞いてもらえていないと感じることがあって、怖くなってしまうことがあったんです。でも今回の経験が生きて、他の場所でも出来る気がする」とちょっと胸を張るプーさんです。

「親子そろって遊びの幅が広がった」---真嶋 翔生くん・由美子さん親子

写真:ソリで滑走する真嶋 しょうきくんと母親の由美子さん

「あまり遊べないと思っていたけれど、行ってみたら思いっきり遊べた。あれだけ楽しい経験をしたら、次も参加したくなっちゃう」と満面の笑顔で話すのは真嶋 翔生くんの母親の由美子さんです。キャンプ前は初めての母子分離を心配していました。そのためゲレンデで遊ぶ翔生くんの様子が気になっていました。しかし、キャンプの中でだんだんと明るくなっていく翔生くんの表情やプーさんたちボランティアのパワーに安心し、自分自身が雪山を楽しめるようになったのです。バイスキーで滑走したり、かんじきを履いて雪山を散策したりと雪山を満喫した由美子さん。夜には他の子の保護者と、子どもの成長のことや学校のことを話したり、学生のときのように夜な夜な雑魚寝でする会話に胸躍らせていたそうです。

写真:かんじきをはいて散策する前に記念撮影をする真嶋 由美子さん

今回のキャンプで体験したソリでの滑走やリフトの乗り降りは、真嶋さん親子に大きな収穫をもたらしました。「遊びの幅が広がりました。子どもの体が大きくなってきたら出来ないことやあきらめなくてはいけないことが増えてくると思うんです。遊びの幅ってすごく努力しないと狭まってしまうから、本当に今回の経験は貴重でした。雪山で遊べると実感できました」。そう話す由美子さんは、いま、家族での雪山遊びを計画しているそうです。

「互いに助け合いながら、友情を築いていってほしい」---原木 風歌さん・裕さん親子

ソリで滑走する原木 ふうがさんと父親の裕さん

今回が最後の参加となる原木 風歌さんと父親の裕さん親子は、「これまで参加した経験を伝えたい」という思いでした。
「みんなを手伝ってあげたい」と考えていた風歌さんは、率先して食事の準備をお手伝い。ボランティアに手伝ってもらいながら大きいやかんからコップに水を注いで配っていました。
遊ぶことにも積極的。去年もやったスキーですが、今回は頂上からの滑走に挑戦です。脳性まひのために普段は車いすで生活している風歌さんですが、少し歩くこともできます。そのため後ろから支えてもらい頂上から滑ることができたのです。この経験は風歌さんにとって思い出深いものとなりました。 写真:ボランティアに支えられ、スキーに挑戦するふうがさん。

これから参加する子どもたちへのメッセージとして、「自分が出来ることがあれば手伝ったり、自分で出来ないことはボランティアや友だちに手伝ってもらったりして仲良くなってほしい。そしてキャンプで友情を築いて、いつまでも続けていってほしい」そう話す風歌さんです。

「参加した人がまた来たいと思えるような楽しい経験を」と話していた父親の裕さんは、まずはかまくら作りに奮闘。今年はかまくら作りのために事前に走り込みをして体力強化を図ったそうです。出来上がったかまくらの中には十数本のろうそくが灯っていました。「幻想的ですごく良かった」と風歌さんの目は輝いていました。
裕さんは言います。「もっともっといろんな人にキャンプに参加してほしい。知らない人の中に入るのは怖いかもしれないけれど、子どもにとっては親と離れてボランティアと過ごすことで社会性を身に付けられる機会です。親にとっても社会生活で大事なことだと思うんです。それが社会に生きる醍醐味でもあり、楽しさでもあるんじゃないかな。それがこれまで参加してきた私の実感です」。

最後に

写真:雪だるま。キャンプを見守っていました。

3日間のキャンプが終わったとき、参加した子どもたちや親御さん、ボランティアの皆さんも、口をそろえて「また参加したい!!」と言っていました。キャンプ中の子どもたちの笑顔は、親御さんだけでなくボランティアの皆さんにとってもかけがいのないものだったようでした。「子どもたちのために」と集まったボランティアの皆さんですが、子どもたちからたくさんのものをもらえるキャンプだったように感じました。

今回でキャンプのリポートは終わります。(高)

(2010年3月17日記)

雪と遊ぼう;親と子の療育キャンプ リポート

(1)ボランティアの研修が始まりました
(2)参加者が一堂に会しました
(3)参加する親子それぞれの思い
(4)キャンプが終了しました!(その1)
(5)キャンプが終了しました!(その2)