雪と遊ぼう;親と子の療育キャンプ(3) 参加する親子それぞれの思い
連続リポートの第三弾です。
このキャンプに参加する小学生は、脳性まひや脳の損傷などのために車いすで生活している子がほとんど。今回は、19組の親子が参加します。親子で参加といっても、親と子は別々の場所で寝泊りし、現地でのプログラムも別。それぞれの親子は、どんな思いでキャンプに参加するのでしょうか? 2組の親子にお話を聞きました。
「子ども同士、楽しんでほしい」
「今なら親と離れ、同じ年代の子どもたちと楽しく過ごしてくれるかもしれない」。
真嶋 由美子(38歳)さんが参加を決めた理由です。息子の翔生(しょうき・8歳)くんと初めてキャンプに参加します。翔生くんにとって初めての雪山体験です。
翔生くんは埼玉県の特別支援学校に通う小学2年生です。生後20日ほどたったときに発熱し入院。翌日には容態が急変し、呼吸が止まってしまうほどの重症、脳炎でした。一命はとりとめましたが、手足のまひなどの後遺症が残りました。
とても人なつっこい翔生くんは、好きな人や友だちに触れてスキンシップをとろうとします。しかし、力加減がうまくいかず、たたくようになってしまうことがあります。また、音に敏感で、特に甲高い声が怖いようで苦手です。大勢の子どもの中にいると、泣いてしまったり、自分自身の頭をたたいたりしてしまいます。学校に通い始めたときにも泣き出したり、自分や友だちをたたいてしまうことが多かったそうです。そのため、友だち同士で遊ぶことがあまりできませんでした。
学校から帰ってくると家で過ごすことが多く、もっぱら由美子さんが遊び相手となり、絵本の読み聞かせをしたり、好きなテレビ番組を見たりして過ごしています。
「親以外の人にもたくさん接してほしい」と考えていた由美子さんはヘルパーを頼みました。今年から1日3時間、週に3日だけ、翔生くんの遊び相手やお風呂の介助をお願いしています。
学校での生活も2年近くたち、甲高い声にも我慢ができるようになってきた翔生くん。親以外の人の介助にも慣れてきました。その成長を感じた由美子さんは、「今こそ親離れを経験させられる時期」と意を決して応募しました。「キャンプを乗り越えられれば、翔生にとってこれからの生活が楽になるはず」と期待を寄せます。
親はゆっくり学ぶ機会
由美子さんは親同士の交流にも意欲的です。「私自身もあまり他の子のママさんたちと関わってこられませんでした。他の子のママさんたちに、子どもが成長とともにどう変わってくるのか、そして、どう関わっていけばいいのか、聞きたいです」。
由美子さんにとっては何年ぶりという雪山。スキーも楽しみにしていますかと尋ねると、「実は、いま腰を痛めていて、スキーはできそうにないです…。親は温泉に行けるみたいなので、私は湯治に専念します」と照れ笑い。
「リフトに、餅つき。楽しいことばかり」
千葉県の小学6年生・原木 風歌(ふうが・12歳)さんは、今回で5回目のキャンプです。小学2年生から毎年参加しています。
きっかけは、キャンプに参加した人から「とっても面白いよ」と紹介されたことでした。話を聞いた風歌さん、そのときは『雪山なんて行ったことはないし、まあいいかな』くらいの軽い気持ちだったそうです。
行ってみると、想像以上のものでした。高く積もった雪。一面真っ白な景色。今まで見たこともない世界でした。そしてリフトに乗った経験。事前に聞いたときは、「高いところ、大丈夫かな」と不安でしたが、いちばん心に残る思い出となりました。他にも屋外での餅つきやそりでの滑走。「楽しいことだらけだった」と目を輝かせます。
父の裕さん(46歳)は「キャンプがなければ、一生ゲレンデで遊ばせてあげることは出来なかったと思います。特にリフトに乗るなんて、絶対にさせられなかった。一生かけてもできないであろう体験を、小学生のうちにやらせてもらえる意義は大きい」と話します。
友だちと話せたことが自信に
キャンプに参加したことで風歌さんに変化がありました。普通学級に通う風歌さんは、参加する前には、クラスの友だちに話しかけるのが苦手でした。そのため、学校で何か困ったことがあっても、「手伝って」と言えなかったそうです。しかし、キャンプで同じグループの友だちやボランティアの人たちと話せたことが自信につながりました。それからは、クラスの友だちにも自分から話しかけられるようになりました。 すると、友だちの反応も変わってきました。手を貸してくれるだけではなく、風歌さんも楽しめるように遊び方を工夫してくれるようにもなりました。
このキャンプは小学生が対象です。6年生の風歌さんは今回が最後です。
裕さんは、初めて参加するとき、全く知らない親御さんたちと団体行動をするのが不安だったそうです。しかし、かまくら作りやスキーなどを通じて、自然となじめ、グループで行動する楽しさに目覚めました。「私たちが楽しんだ経験をつなげていきたい。参加した人が、来年もまた来たいって思えるような、楽しい思い出をつくることが私の最後の役割」。
これまでの経験を伝えたい。風歌さんも同じ気持ちです。
「小学生の最高学年として、みんなを手伝ってあげたい」。優しくも力強いまなざしの風歌さんです。
初めて参加する親子、今回で卒業する親子、それぞれの思いを胸に、キャンプまであと2週間ほど。年が明ければキャンプ本番です。12月25日現在、キャンプ地の八海山麓スキー場の積雪は、1メートル。しんしんと降る雪も子どもたちを待っているようです。(高)
(2009年12月25日記)
雪と遊ぼう;親と子の療育キャンプ リポート
(1) ボランティアの研修が始まりました
(2)参加者が一堂に会しました
(4)キャンプが終了しました!(その1)
(5)キャンプが終了しました!(その2)
(6)キャンプを終えて
八海山麓スキー場の様子をホームページでご覧いただけます。天気や積雪も分かります。
八海山麓スキー場(別ウインドウが開きます)
