親子の安心を乗せて 「子育てタクシー」走行中
子どもが泣いたり動き回ったりしないか、ベビーカーや荷物の持ち運びが大変そう・・・子連れでの外出には何かと心配ごとがつきまとうもの。
「親子連れや妊婦、子どもにやさしいタクシーがあったら」 - 母親と子育て支援団体の提案から生まれた「子育てタクシー」をご紹介します。
「子育てタクシー」の誕生
「子育てタクシー」は、平成16年に香川県高松市で誕生しました。きっかけは、県内の子育て支援団体「わははネット」の利用者が、「破水して病院へ向かうためにタクシーへ乗ろうとした時に、ドライバーにシートを汚すなと言われた」という経験でした。ほかにも「タクシーを使うのに子どもがいると嫌な顔をされた」「ベビーカーをトランクに入れるのを手伝ってもらえなかった」といった経験をした人も。
子どもがいると荷物も何かと多くなりがちで、タクシーの利点であるドアツードアの送迎はとてもありがたいもの。子育て中の母親や子どもの利用への理解が深まれば、より子育てしやすい街づくりにつながるのではないか。そんな思いで「わははネット」が企画を持ちかけ、賛同した高松市内のタクシー会社で1か月試行したうえで、平成16年9月から本格的に運行開始。利用者はもちろん、タクシー業界や行政などからも高い評価を受け、翌年には県内のタクシー会社に、そして翌々年には他県にも広がっていきました。
「子育てタクシー」は、主に、大人と乳幼児で利用するコース、子どもだけで利用するコース、夜間など緊急時に利用するコースの3つを設定しています。まずは利用者の名前や年齢や連絡先、送迎の場所などをあらかじめタクシー会社に登録しておきます。
高松市は転勤族が多いため、土地勘がない人や車を持っていない人が通院や健診などに利用するケースがあるそうですが、利用が多いのは子どもだけで乗車するケース。急な用事や残業などで親が送迎できないときの、保育園や習い事の送迎などに利用されています。自宅へ送る際には子どもが自宅に入って施錠するところまで確認、外出先へ送り届ける際には到着後に保護者へ報告。子どもが単独行動中に被害にあう事件が多い昨今、安全で確実な送迎が利用者に喜ばれています。
とはいえ、子どもだけでタクシーに乗車するのは、子も親も最初は少し勇気がいるもの。その行程はいったいどんな感じなのでしょう?
今回、夏休みの旅行の帰りに自宅までの送迎を利用したケースに同行してみました。
ドライバーの意識にも変化が
この日のドライバーは、「子育てタクシー」運行開始時から運転している安西さん。「子どもだけを乗せるのには、最初は戸惑いもありましたよ。保育園にお迎えに行ったところ、見慣れないオッサンが来たものだから乗りたくないと子どもに拒否されたこともあったんです」と笑って教えてくれました。
安西さんのような「子育てタクシー」のドライバーになるには、全国子育てタクシー協会が実施する研修の受講が必須。「研修は驚くことが多かったですね。ベビーカーのたたみ方なんかもやったけど、ベビーカーにいろんな種類があるとは知らなかったし、実習として実際に子どもと触れ合ったりもしました」。
「子育てタクシー」の運行は、言葉づかいやブレーキ操作など一般の利用よりは多少気をつかうところもあるけれど、感覚としては介護タクシーや一般の利用と同じだと安西さんは言います。「子育てタクシー」を運転するようになって、利用者にも自分の孫のような親しみを感じるようになったと話していました。
全国どこでも同水準での運行をめざして
「子育てタクシー」が全国に普及し、全国どこでも同じ水準のサービスが提供されるように、と平成18年6月に全国子育てタクシー協会が設立されました。
チャイルドシートの購入やドライバー研修などの経費がかかるうえ、チャイルドシート利用時は着脱のためにわざわざ営業所に戻らなければならず、いわゆる「流し」の運行ができません。直接売上に結びつくとは限らない「子育てタクシー」ですが、地域への貢献や会社PRの一環などとして加盟するタクシー会社が増えています。
走行時の配慮と子どもへのあたたかなまなざし。「子育てタクシー」の広がりとともに、子育てする人への理解が広がっています。(田)
(2009年8月25日 記)
「子育てタクシー」は「全国子育てタクシー協会」の登録商標で、2009年8月1日現在、19都道府県57のタクシー会社が加盟、710人のドライバーが登録しています。
利用料金はメーター料金のみの場合が多いですが、迎車料金や割引サービスを設定している会社もあります。また、利用コースは基本的には本文で紹介した3つのコースがありますが、タクシー会社によってコースが限られる場合があります。
子育てタクシーに関する詳細は、「全国子育てタクシー協会」のホームページをご覧ください。
