キャンパスの子育て広場 奮闘中
東京都小平市にある白梅学園大学・短期大学では、地域に住む子どもや子育て中の人たちと、学生や近隣住民の交流をつくるために、「白梅子育て広場」を展開しています。保育者育成に力を入れる学園の特性をいかし、学園を拠点に地域で子育てを応援しようと、2004年度から始めたこの活動。4月末、活動のひとつ、「あそぼうかい」が開かれたキャンパスを訪ねました。
身近にあるものを使って遊ぼう!
「あそぼうかい」は、乳児から小学生までの子どもを対象に、遊び道具や簡単にできる工作などを楽しむ場を提供するもので、年に4回開催しています。この日のテーマは「身近なもので作って遊ぼう」。
ふだん学生たちが声楽やダンスなどの授業に使う部屋には、学生たちがこの日のために新聞紙や竹で手づくりした遊び道具がいっぱい。
新聞紙のコーナーに用意されたのは、ちぎった新聞紙を敷き詰めた「新聞紙プール」や、新聞紙をまるめて作った玉を入れる「新聞玉入れ」など。竹で遊ぶコーナーでは、竹ぽっくりや竹製のおはじきに子どもたちは夢中です。0歳と4歳の二人の子どもと参加した父親は「最近は手作りのものに触れて遊べる機会が減ってきていると思う。こういう機会はいいですね」と話していました。
また会場には、乳幼児も遊べるおもちゃを用意したり、授乳室を設けるなど、乳幼児のいる保護者にも来てもらえるための配慮もおこたりません。
乳児の中には遊んでいる間に寝てしまう子もいますが、何度か参加している母親は学生にすべておまかせ。学生の腕の中ですやすやと寝ている子の姿もありました。
この日はあいにくの雨の中、15組ほどの親子が参加。帰りにはおみやげの竹ぽっくりをもらって子どもたちはとてもうれしそう。何度も参加しているという5歳と3歳の子の母親は、「この世代の人たちとふれあえる機会ってないんですよね。親や幼稚園の先生とは違うし、大人というよりどちらかといえば子どもに近い存在だけに、子どもたちにとって親しみやすい。子どももとても甘えられるみたいで意義のあること」と話します。母親にとってはどうですかと尋ねると、「子どもたちがいつも楽しそうに参加している。その様子を見ているだけでこちらもすごく幸せになれるんです」と生き生きとした表情で話してくれました。
学生が中心になって運営する多彩な子育て支援活動
「白梅子育て広場」には、「あそぼうかい」のほかにも、障害のある子どもや保護者の支援についての学習会や講演会を開く「気になる子の広場」、学園の教員や学生が保護者の育児相談に応じたり、保護者同士の交流の場となっている「紅茶の会」、高齢者と子育て中の親子が参加し、子育ての大先輩の知恵を聞く「世代間交流広場」など、さまざまな活動があります。
これらの活動の中心になっているのが、20人ほどの学生で組織する学生委員会。企画立案や運営、学生への連絡などを行います。
「あそぼうかい」の現在の責任者で短期大学保育科2年生の三浦 知也さんは、子どもに関わる仕事がしたいと活動に参加しました。子どもたちがメンバーの学生たちと遊んでいる間も、楽しんでくれているか、学生たちの接し方はどうか、危険なところはないか、と常に気を配ります。準備段階では意見が衝突したり、学生だけで運営する難しさを感じたという三浦さん。すべてが無事終了し、子どもたちを見送った後は、「みなさんに楽しんでいただけたことが一番」と安どの表情を浮かべていました。
在学生の2割が活動に参加
「子育て広場」を立ち上げるきっかけとなったのは、教員と地域とのつながりでした。数人の教員が地域の母親講座や高齢者クラブなどとのつながりをゼミの活動に取り入れていたのを、学園の取り組みとして採用したのです。2006年度には、地域に働きかける取り組みが評価されて、文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム」に採択され、財政支援も受けられるようになりました。大学・短大では「子育て広場特論」という授業も開講されるまでになり、今では大学・短大あわせておよそ2割にあたる200人ほどの学生が広場の活動に関わっています。
参加している学生からは、「実際に子どもたちと接して体験することで、授業で学ぶことがすんなり入ってくる。先生が言ったことは実はこういうことなんだって。授業と広場は強い関係があると感じます」、「保育の実習では保護者と直接話すことがないのですが、広場だと保護者とも話せる。お母さんたちと自然と話せるようになりました」という声が聞かれるなど、「子育て広場」は学生たちの学びの場ともなっています。
学生たちをバックアップしてきた社会人「指導員」
「子育て広場」で欠かせないのが、地域の人たちとの接点を作るための活動です。そのひとつがチラシ配り。「子育て広場」を開催するときには学生たちがキャンパスの外に出かけ、見かけた親子に参加を呼びかけます。以前は市役所や公民館などに郵送する程度でしたが、自分たちで直接働きかける大切さに気づいて始めたといいます。
こうした学生たちの活動を裏で支えてきたのが、文部科学省の「支援プログラム」に採択された後に置かれた「指導員」です。保育士や会社員だった人たちが、学生だけでは気付きづらいことや子どもとの接し方などをアドバイスします。今年3月まで指導員をしていた柿沼 幸雄さんは、「地域のために行っていることだという意識付けをすることが一番の役割。最初は戸惑う学生もいますが、参加するうちに、子どもたちのために、地域の人のために必要だからやるんだというように意識が変わっていきます」と言います。
キャンパスの「子育て広場」は、これからが勝負
学生たちを支えてきた指導員ですが、文部科学省のプログラムの採択期間が今年3月いっぱいで終了、財政面の支援がなくなり、5人いた指導員も置けなくなってしまいました。発足当初から広場を担当している短期大学保育科の小松 歩准教授は、「学生たちに的確なアドバイスをしてくれる指導員の役割を、学生委員会の上級生などにうまく引き継いでいきたいですね。地域のためにも、これからが正念場です」と話します。
「親にとっても子どもにとっても、ほっとしてもらえる場所であり続けたい」。そう願いながら奮闘する学生たちの活動をどうすれば継続していけるか。地域とのつながりの中でつちかった力が今こそ試される、そう感じました。(高)
(2009年4月25日 記)
「白梅子育て広場」の活動については、ホームページをご覧ください。
