引き出せ、お父さんの子育てパワー
埼玉県新座市に「お父さん盛り上げ隊」なる活動があります。子育て中の父親たちが、父親ならではの子育てを考え実践しているこの活動。4月12日(日曜日)に新座市総合運動公園で開催された「すぐそこ新座春祭り」に出動するということで、現地を訪ねました。
会場の公園に到着すると、いました、戦隊ヒーローの衣装に身をまとったなにやらあやしげな一団が。彼らこそが、「お父さん盛り上げ隊」なのです。この日出動していた隊員は8人。その活躍ぶりを拝見すると…
いっしょにものづくり、はずむ会話
「お父さん、これくらいの大きさでいい?」
「大きすぎるよ。こっちのほうがいい形だね」
「ちょっと休んでもいい?」
「がんばったから少し休んでいいよ」
野菜ジュースやココアで色づけされた色とりどりの白玉団子を作りながら、父親と子どもたちの会話がはずみます。できた団子に子どもたちがあんこやチョコレートでトッピング。完成したそばから飛ぶように売れていきます。
こちらでは、雨の日に店舗などの入口に置かれているカサ袋で作るロケットを作る姿。父親が子どもたちに作り方を教え、ときには難しそうにしている子をちょっとだけ手伝ったりもしています。空気を入れてふくらませたカサ袋に画用紙で飾りを付けて完成。ロケットを飛ばしている子に感想を聞くと、「ちょっと難しかった。でも思ったより飛んですごかった。またやってみたい」「紙を切るのが楽しい」と大好評でした。
楽しめることをやる、が基本
「お父さん盛り上げ隊」は、新座市内で子育て支援センターや子育てサロンを運営しているNPO法人「新座子育てネットワーク」が展開している「お父さん応援プロジェクト」の活動から生まれました。
2007年6月にプロジェクトの一環として開かれた子育て講座に参加した父親たちから、「1回きりの出会いだけで終わってしまうのはもったいない。何かやりたい」という声があがりました。父親たちの声を聞いたプロジェクトの担当者が、父親に活躍してもらうおうと、流しそうめん大会を企画。そうめんを流す台作りから始めるという企画を聞いた塚原 一弘さんは「なかなかそんな機会もないですし、楽しそうだなと思った」と参加の動機を話します。
企画は大成功。このイベントに参加した父親たちが、「お父さん盛り上げ隊」と名付けられました。その後はメンバーから次々とアイデアが出てきて、2か月に1回程度もちつき大会や焼きいも大会などの様々なイベントを開催するようになりました。
いつも子どもたちが楽しめることを中心に考える企画は、母親からも、「母親とは違った視点のおもしろい企画ばかり。子どもはとても楽しめるし、母親にとっても参考になる」と好評。
活動が始まっておよそ2年がたち、今では18人ほどの父親が参加しています。
打ち合わせはもっぱらインターネットで
日ごろは仕事で忙しい父親たち。顔を合わせて話しあえる時間がなかなか作れません。そのためイベントのアイデアをねったり打ち合わせをするには、もっぱらインターネットのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を使っています。都合の良いときに見て書き込めるので、もってこいの方法なのだそうです。
SNSを使ったコミュニケーションには、別のメリットも。
メンバーに聞くと、「ママが病気になったり、外出しているときに子どもをどう見ればいいのか悩んで書き込んだら、他のメンバーも同じような悩みがあることがわかった。悩みを共有できて良かった」とのこと。同じ世代の父親たちが同じような悩みをもっているとわかるだけでも気持ちが楽になるのだそうです。
リーダー不在が長続きのひけつ?
「お父さん盛り上げ隊」には“リーダー”がいません。リーダーがいないからこそ続けていけると言う塚原さんに、その理由を尋ねてみると、「たとえば、町内会長とかの役職がつくと負担に感じることってあると思うんです。決まったリーダーはいないけれど、イベントごとに何となくみんなの中で心のリーダーになる人はいるんですよ。その人がやってくれると、次は自分が頑張ろうと思える。強制感がない。だから続けていられるんだと思います。まあ、リーダーをやりたい人がいないだけなんですけどね」と笑いながら教えてくれました。
子どもにも親にも変化が
父親が盛り上げ隊に参加することになって、子どもにも変化があらわれたそうです。塚原さんの妻・江理香さんは、「夫は朝早く夜遅いので子どもと接する時間がなく、あまり子どもがなついていなかったんです。でも活動に参加するようになって、お父さんはかっこいいんだって思うようになったみたい。これまで母にべったりだったのが、いまでは父にべったり」とにこやか。
塚原さんは「子ども好きになりましたよ。前は子どもがじゃれてきても怒っちゃったりしていた。盛り上げ隊に参加するようになって、ほかのお父さんたちが自分の子を見てくれたり、逆に他の子を自分が見たりして、いろんな接し方がわかってきました」と打ち明けてくれました。
話をうかがっている最中にも、グリーンの衣装を着た塚原さんに握手を求めて子どもが集まってきました。塚原さんはしゃがんで子どもの目線で話しかけ握手をしていました。
理想は「遊び」 盛り上げ隊がめざす子育て
新座子育てネットワークが開催する講座やお父さん盛り上げ隊の活動を通して、父親たちは「遊ぶ」ことが自分たちのできる子育てだと実感しているようです。
メンバーの一人は、「子育てって妻と同じようなことをしなくちゃいけないのかなって意識があったんですけど、妻が期待していることって、少しは子どもを気にかけて欲しいとか、そういうことで十分みたい。父親は父親の目線で接すればいいと教えてもらって、少し気が楽になりました」と話します。はじめのうちはあまり積極的に活動に参加していなくても、回を重ねるごとに子どもがニコニコしながらついてくる、なんてこともあるのだそうです。
「子どもはまだ小さいので覚えてないだろうと思っていたのですが、『あのときあそこでこんなことしておもしろかったよね』と話すんです。一緒に楽しめることをやれば、子どもの記憶に残ってるんですよね。それだけでもいいんだと実感しました」。メンバーがしみじみと話してくれたことばが印象に残りました。 (高)
(2009年4月12日 記)
「お父さん盛り上げ隊」誕生のきっかけとなった「お父さん応援プロジェクト」については、NPO法人新座子育てネットワークのホームページをご覧ください。
その他、父親の子育てを支援している団体や活動をいくつか紹介します。
・NPO法人ファザーリング・ジャパン
父親の育児について考えるセミナーや情報提供をしています。父親の子育て力を測る「子育てパパ力検定」も実施しています。
・「父親のワーク・ライフ・バランス~応援します!仕事と子育て両立パパ」
厚生労働省が作成したハンドブック。PDFでダウンロードできます。
NHKでも、“子育てパパ”を応援する番組を放送しています。
「パパサウルス」 総合テレビ 毎週土曜日 午後9時50分~10時
番組ホームページはこちらです
