NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

NHK厚生文化事業団


現在位置:ホーム > インタビュー > このページ


インタビュー

2008年1月 8日

近影:藤田さん 〈女優〉
藤田 弓子(ふじた ゆみこ)さん


ふるさとを分けていただいたお礼に、少しでも役に立てることを

20年前から静岡県・伊豆の韮山(にらやま)で暮らしている藤田弓子さん。10年前、夫で放送作家の河野洋さんとともに、劇団「いず夢(む)」を立ち上げました。劇団員は、学生、主婦、小学校の教師、保育士、介護士、整体師、トリマー、社長、理髪師、 歯科医など職業も年齢も様々。座長として、演出家として、劇団を引っ張る藤田さんにお話を伺いました。


Q.藤田さんが伊豆で劇団を立ち上げたきっかけは?

藤田:12年くらい前に、町の文化センター(韮山時代劇場)ができたんですね。そのこけら落としに町民オペラをやったんです。町の人たちみんなで考えて、作って、出演して。そのときに、飲み屋さんで偶然知り合った人に誘われて、私と夫も参加することになったんです。で、こけら落としが終わったんですけど、「何か続けて、町のためにやってください」って言われて、お芝居ならできるので、劇団やりましょうということになって、立ち上げたという訳です。
立ち上げにあたって、お芝居作り一緒にしましょうって伊豆の人たちに声をかけたら、60人くらい来てくださったんです。そして、スタートしたのが10年前です。

写真:劇団いずむの団員。公演を終え、全員で記念撮影

Q.そうして集まったのが高校生から70代までの様々な人たちなんですね。そういった方々と作る劇団、どういうところにやりがいがありますか?

藤田:お芝居を通してみんな成長していくんですよ。はじめはぜんぜん声も出なかったような人が、誰よりも大きな声になったり、高校生だった子が大人になって、劇団には欠かせない役者になったり。するとみんな自信がついてきて、キラキラしてくるんですね。さらに私生活でも自信がでてきて、職場で重要な役割を担ったり、後ろに引っ込んでいたのが、前に出ることが怖くなくなったって言ってくれたり。ほんと、うれしいですよ。

Q.劇団の公演が、2月23日と24日、韮山時代劇場で予定されていますね。

藤田:「ゴーストギャング」という作品で、ゴーストが銀行強盗やろうって話なんです。でもゴースト自身は体が使えないから、銀行員の一人を脅かして、何とかこの人に強盗させようとするんです。いまのお金が一番みたいな世の中を風刺した作品です。私がいま考えてるのは、イリュージョン(錯覚)なんか使って、観に来てくれた人をびっくりさせたいって思ってます。

Q.劇団活動の一方で、2月からは、映画「ふるさとをください」も公開されますね。統合失調症などで、地域生活に困難を抱えている障害のある人たちを支援するため、和歌山に設立された「麦の郷」をモデルにした映画です。藤田さんは施設の所長役として出演。役を演じて感じたことは?

映画「ふるさとをください」より。所長と町医者を仲人にして、当事者同士の結婚式が行われる 藤田:統合失調症の人たちが病院から出てきたとき、これから地域で生きてくための力をつけなきゃいけない。お金も稼いでいかなくちゃいかない。でも、受け入れられない家庭、受け入れてくれない地域とかあるわけですね。そんな中、施設を作ることに猛反対している人に言うせりふがあるんです。「この人たちには帰るふるさとがないんです。お願いですから、あなたたちが大事にしている、そのふるさとを少し分けてください」って。
 「麦の郷」をつくった伊藤静美さんは、そうやって障害のある人たちにいろんな仕事場を作って、ふるさとを分けていただいたお礼に、地域の人たちにクリーニングやパンなどでお返しをしているんです。その気持ち、すごくよく分かる。東京生まれの私が20年前から伊豆に住みはじめたのは、ふるさとをつくるために行ったんですね。だから、ふるさとを分けてくださいっていう気持ちがすごくわかるんです。私は分けていただいたお礼に、地域のみなさんにお芝居を見てもらって、楽しい思いしてもらいたいなぁって。だから劇団をやっているというのもあるんです。

Q.映画を見た人に、どんなことを感じたり、考えたりしてほしいですか?

藤田:施設にいる人がバスに乗ったり、買い物したりして、社会に出る練習をする場面があるんです。そうすると、「あんたに売るもんなんかない」とか「バカ」とか、そういう言葉で傷つける人がいるんです。
それを自分自身に置き換えたとき、そんな嫌な言葉を言っている自分が好きですかって問いたい。嫌なこと言ってるときの自分の顔、見てご覧なさい。とっても嫌な顔をしてると思う。そんな自分のこと好きじゃないでしょ。やっぱり自分のことがちゃんと好きでいられる人じゃないと、人のことも好きになれない。だから、みんな自分をもっと大事にしてほしい。ちゃんと自分を大事にできる人が、人のことを大事に思えるんだってことが伝わるといいな。

「ふるさとをください」は、障害のある人たちの作業所やグループホームなどを支援している全国組織きょうされんの設立30周年を記念して制作された映画です。2月下旬より、全国の自治体を縦断しながら公開する予定です。詳しくは、きょうされん事務局(電話03-5385-2223)までお問い合わせください。

劇団いず夢についての詳しいことは、ホームぺージをご覧ください。別ウインドウが開きます。