今回ご紹介するのは、八重樫季良さん(岩手県)の作品です。

キュレーターは、福祉実験ユニット・ヘラルボニーの松田文登さんです。

作者紹介……八重樫季良さん ARTIST – KIYOSHI YAEGASHI –

 

キュレーターより《松田文登さん》

生涯、ただひとつの手法で。
八重樫季良が生み出す、この世界に存在しない”建築物”たち。

一見抽象的な幾何学パターンを描いたように見える絵だが、それが独自のアレンジによって描かれた建築物だと知ったら多くの人が驚くだろう。 この表現様式を八重樫は子どもの頃、誰に習うことなく独創によって生み出し、以来半世紀余りにわたってこのただ一つのスタイルで創作し続けて来た。 その作品数はおそらく数千点に及ぶと思われる。季良さんは、アトリエの一角のスペースでいつものように作業を進めていた。彼が握るのはフェルトペンと言われる画材、そして机からはみ出る程の大きな画用紙に、扱うのが大変そうな大きな定規…それを巧みに扱う彼の姿からは、何年もの長い年月が感じ取ることができる。

「 四角は窓。丸は便所。」

色鮮やかな作品の中に、目を引く四角や丸の白い空間。この空間を作り上げるために周りを色彩で埋めるのか、またはその逆なのか。なぜかこの白い空間は塗ろうとしない。何年もの間、変わらないスタイルで描かれていく作品。このスタイルが生まれたのは彼の父親が大工であったことが関係しているようだ。「建築図面」が身近にある生活を送っていた彼の中で、このスタイルが生まれたのは必然だったのかもしれない。

自分の作品で彩られたJR花巻駅を見つめる姿は何とも嬉しそうだった。花巻駅という建築物が、彼の”建築物”で覆われた、そんな瞬間。もしかすると、こんな瞬間を彼は長年、夢見てきたのではないだろうか。

 

季良さんの作品で彩られたJR花巻駅とアーティストの八重樫季良さん

 

ART NECKTIE of KIYOSI YAEGASHI

細かく、繊細に引かれたライン。定規を使って引かれる真っ直ぐのラインは、洗練された職人の技によって再現されている。

人生で何十人、何百人、何千人のダウン症のある人に会ってきた。
誰が何と言おうと僕はダウン症のある人たちに勇気と元気と幸せをもらっている。

それは紛れもない事実である。

ダウン症が伝わるのではなく、一人の人間として魅力的なんだよ、というのが伝わることを目指したい。

季良さん自身の存在がこれからも多くの人によって語られて、これからも受け継がれていく気がしてなりません。


プロフィール

松田 文登(まつだ・ふみと)

株式会社ヘラルボニー代表取締役副社長。チーフ・オペレーティング・オフィサー。大手ゼネコンで被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共に、へラルボニー設立。自社事業の実行計画及び営業を統括するヘラルボニーのマネージメント担当。岩手在住。双子の兄。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。日本オープンイノベーション大賞「環境大臣賞」受賞。

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