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NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

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企業ボランティア事例紹介

有限会社ビーファイントゥモロー

インドネシアにスクールバスを届けよう

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ユニークな絵をペイントしたジーンズや甚平などのデニム商品が、インターネットショップでひそかな人気を集めています。

価格は1万円程度から高いものは2万円以上と決して安くないのですが、20代の若い世代が中心に購入しています。

これらのデニム商品は、衣料や雑貨などの通信販売をしている“有限会社ビーファイントゥモロー”が製作しているオリジナル商品です。

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アーティストがジーンズ一本一本に手書きで絵を描いているため、“一点もの”感覚で着用できることが購入者に喜ばれています。またその収益の10%が、インドネシアのNGOにスクールバスを送る費用に使われます。製品を購入することで、気軽に社会貢献活動に参加できるのが人気の理由の一つになっているようです。

インドネシアの子どもたちとの出会い

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代表 木村一雄さん
代表の木村一雄さんがインドネシアに興味を持つようになったのは、2005年に会社で扱う商材を探すためにジャカルタを訪れたことがきっかけでした。木村さんが現地で目にしたのは、日本と変わらない立派なビルが立ち並ぶ一方で、ボロボロの家や物乞いをする人たちも存在するという現実でした。

「インドネシアには、日本と同じようにファーストフード店も数多くあります。インドネシア人の平均月収からすると決して安い値段ではないはずなのに、学生や若い人たちでにぎわっています。しかし一歩店を出ると、はだしの子どもたちが『お金ちょうだい』と言って僕にまとわりついてくるんです」

木村さんは、インドネシアの激しい経済格差に衝撃を受けました。以前の木村さんは「社会貢献なんてうさんくさい」と思っていたそうですが、2ヶ月に1度インドネシアを訪れるようになって、実情を知れば知るほど、次第に「何か自分にできることはないか」と考えるようになったということです。

本当に必要なものが見えてきた‥‥

何ができるかと模索していたとき、木村さんは“YPAC”というNGOと出会いました。

YPACは1975年から活動をしているインドネシアのNGOで、恵まれない子どもや障害のある子どもの教育を支援しています。バリ島にある施設には寄宿舎なども設け、現在約60人の子どもたちが学んでいます。「インドネシアでは、家庭が貧しかったり学校までの交通手段がないために、まだまだ多くの子どもたちが教育を受けられないのが実情なんです」と木村さんは言います。

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多くの恵まれない子どもたちが学んでいると知った木村さんは、ノートや鉛筆などの文房具類を持参してYPACを訪問しました。しかし子どもたちが本当に必要としていたのは文房具以前に、ハミガキや洗剤などの日用品でした。

「寄宿舎で寝泊りしている子どもたちの日用品が不足していたんですね。それでYPACに日用品を届けることにしました。それが当社の支援活動のスタートでした」

交流を深めていくうちに、木村さんは自分の経営する会社が、YPACと一緒になって何かできることはないかと考えるようになりました。

「ただ日用品を届けるだけでは、子どもたちの環境の根本的な改善にはなりません。彼らの自立を助けることこそ、私たちがやるべきことなのではないかと感じました。そこで先生には“ビーファイントモロー”の商品を包装するためのエコバッグを縫ってもらい、子どもたちには商品に付けるメッセージカードを書いてもらって、それぞれを当社が1つ50円で買い取るということを思いつきました」

もともとYPACでは、Tシャツや土産品を作って、その収益を運営に充てていたので、ミシンなどの道具や縫製の技術を持っていました。木村さんは、それを生かした支援活動を実現したのです。

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子どもたちが書いたメッセージカード
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“デニムバカ・プロジェクト”発進

YPACと共に取り組める支援活動を開始した木村さん。先生たちとの話し合いを重ねるうちに、また新しい目標が見えてきました。

「インドネシアには、交通手段がないために学校に来ることができない子どもたちが大勢います。だからスクールバスがあれば、もっとたくさんの子どもたちが学校に通えると思ったんです」

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ジーンズに絵を描いてくれた少年
ちょうどその頃木村さんは、現地の少年から絵を描いたジーンズをプレゼントされたのがきっかけで、これを商品化できるのではないかとひらめきました。

「最初は、インドネシアの人に描いてもらおうと考えていました。絵の街として知られるバリ島のウブドでジーンズに絵を描いてくれる人を捜したのですが、誰も見つからなかったので、日本のアーティストに声をかけました。しかし、デニムの生地に絵を描くのは技術的になかなか難しく、完成までに半年ぐらいかかりました」

やっとデニム商品の通信販売にこぎ着けた木村さんですが、少しずつ商品が売れ始めた頃、新しい動きが表れました。

「うちの商品を見た人が『あいつに絵を書かせたらおもしろい』と言って、知り合いやアーティストを次々に紹介してくれるようになったんです」

こうして2009年、“デニムバカ・プロジェクト”が起動に乗りました。このプロジェクトでは現在30人ほどのアーティストが集まって、オリジナルのデニム商品をデザインしています。そしてジーンズや甚平の収益の10%、ブレスレットは100%がインドネシアでスクールバスを購入するための寄付に充てられています。

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東日本大震災では被災地の支援も

3月11日、東日本大震災が発生しました。ニュースで被災地の映像を見た木村さんは、「いまは日本のために何かをするべき時だ」と、被災地を支援する活動を始めました。会社のサイトで防災グッズを販売してその売り上げを義援金に充てたり、自らも仲間たちと一緒に気仙沼市へ向かいました。木村さんたちが持って行ったのは、風船、シャボン玉、カードゲーム、落書き帳など子どものおもちゃ、菓子類、たばこ、酒類などです。

「避難所で『にがい水です』と冗談を言いながらビールを配って、避難所の皆さんには喜んでもらえました。たばこや酒類はいろいろな意見があると思いますが、持っていってよかったと僕は思います。行政や大きなNPOが、こういった嗜好品を支援することは難しいと思うし、僕たちみたいな小さな団体だからこそできることかもしれません」

このほかに木村さんは北海道庁とも連携して、福島から一時避難をする子どもたちのサポートも行っています。これまでに約200名の避難を支援しました。今後もこの活動を引き続き行っていきたいと木村さんは話しています。

写真気仙沼の子どもたちと写真

支援活動を広げるNPOを立ち上げる

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第1号スクールバス
デニムバカ・プロジェクト発足から2年、ようやくインドネシアでのバス1台分にあたる50万円の寄付が集まりました。スクールバス第1号の贈呈を10月に予定しています。

「インドネシアにはYPAC以外にもバスが必要な小学校がありますから、まだまだ第一歩というところです。インドネシアの学校支援はうちの会社が社会貢献に取り組んだきっかけですから、最優先と考えています。将来的には他の国にもこうした援助を行っていきたいです」

今年4月、木村さんはNPO“みんな地球の子どもじゃん” を立ち上げました。これはデザイナーやミュージシャンなどが集まってイベントなどを行い、世界の子どもたちに金銭や物資の援助をしてくことを目的とするNPOです。

写真「『収益の10%が世界の子どもたちに寄付される』という商品を、もっとアピールしていきたい。会社とNPOが力を合わせることで、通信販売やアーティストとのイベントなどを通して、こうした社会貢献について発信していきたいです。そうすることで、若い人たちにもっと関心を持ってもらえるのではないかと思っています。きっかけさえあればもっと社会貢献をしたいという人は多いのではないでしょうか。インドネシアに行ったことで、以前は社会貢献にも子どもにも関心がなかった僕自身が一番変わりましたからね」

「いまできる活動をしていこう」という木村さんが率いるビーファイントゥモロー。その夢は世界に大きく広がっていきそうです。

2011年11月02日掲載  取材:眞鍋

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